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あとがきという名の吐露ろなべ

 


「黒夢シンドローム~あなたの(ヤミ)は何ですか?~」最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


 タイトルを考えております時に、これは“あの子”の話にしようと決めてずっと筆を執って参りました。


 物語は、最初は佐藤一(さとうはじめ)の視点で進んでいきます。(はじめ)は、小学校の頃より“さとうまじめ”と言われ、揶揄われてきました。


 小学校、中学校という義務教育を経て高校に進学し、大学へ行く。そして社会人に――そんな多くの者達が歩むレールをきっと自分も歩いていくのだろう。小さい頃よりそんな考えのもと、過ごしていた(はじめ)


 集団の中で特別目立つような行動を取るようなことはなく勉強も出来た為、大人達からすれば“優等生”だったのでしょう。「問題を起こさないいい子」として目に映っていたはずです。(はじめ)にとって、学校でやっていくには、それだけで充分だった。他人と馴染むのが苦手でも、ある程度のコミュニケーションを取っていれば、無理に友達を作れと強要されることもありません。(はじめ)はそれを分かっていましたし、必要以上に周りと仲良くすることもありませんでした。


 大人達の中では“いい子”だったかもしれませんが、子ども達の中ではそうではありませんでした。ノリや流れに乗らず、空気を読もうとしない。つまり、忖度をしない(はじめ)は、いじめっ子達からすれば、ある意味羨ましい対象であり嫉妬の対象だったのでしょう。自分に出来ないことをやってのける(はじめ)のことが、はっきりした理由は分からずとも、何だか気に入らなかったのです。


 そんな対象になっているとは気付いていない(はじめ)も自分が“まじめ”であることにコンプレックスを感じておりました。ある程度の“いい子”とされる器に乗る自分。はみ出せない自分。ある意味で馬鹿になりきれない自分。上手く笑えないし、感情を表現するということが苦手。そんな自分にとっての負の感情も全て丸ごと受け入れてくれたのがハルでした。


 ハルは明るくてよく笑うキラキラした女の子。性格も真っ直ぐで自分にとってのスキやキライには割りと忠実に動くタイプ。喋ることも大好きで(はじめ)とユキと一緒にいる時には八割がたハルが喋っていました。星が大スキ。はじめ君が大スキ。ユキが大スキ。でも、大スキな人達を傷付ける人達はキライ。ハルも忖度はしない子でした。(はじめ)と違うのは、感情が表に出やすく、とっても自分の心に従順だったところでしょうか。ハルのピュアで芯の通ったところに(はじめ)も惹かれていたのです。


 可愛い可愛いハルちゃんを溺愛していたのは双子の兄、ユキもでした。その溺愛っぷりは火を見るよりも明らかで、執着心という点で言えば、寧ろ(はじめ)よりも上だったかもしれません。禁断の香りを秘めているんじゃないかとさえ感じさせるほどの妹への溺愛っぷり。その姿に、もしかしたら……なんて考えてしまう人もいるかもしれませんね。


 ハルとそっくりで中性的な顔立ちをしているユキ。性格はと言うと、ハルが太陽ならばユキは月と言えるかもしれません。自分が話したいと思う相手としか基本話さないので、周囲には物静かでクールなイメージが定着しています。しかしその実は、ハルと(はじめ)の言葉を借りて言えばですが、素直じゃなくて、口が悪くて、謎の拘りを持つ変人。作中、「俺が使うのは頭と口だけだから」と本人も言っていたように、ユキは頭もキレるし、口も立ちます。綺麗な顔立ちであることも手伝って、その言葉の威力(キツさ)は余計に際立ちます。心を折られた女子は(女子だけじゃなく男子もですね)果たして何人いるのでしょうか。


 (はじめ)に対しては、終始“気に食わない”と言っておりますが、ポンポン会話をしている辺り……、本当にキライという訳ではないのでしょうね。子どもの頃はハルを挟んでしか(はじめ)と会話をしなかったユキが大人になってからは言い合いをする程に言葉のキャッチボールを繰り広げているのですから、少しは素直になったということでしょうか。


 (はじめ)をいじめる側だったアキラも気付かない内に(はじめ)を傷付けていた麻井先生もそれぞれに闇を抱えていて葛藤しておりました。


 大切な人を守りたい、救いたい。だけど、こんな自分では力不足なんじゃないか。劣等感、嫉妬、コンプレックス、不安……、色んな負の感情に押し潰されそうになりながらも、前に進むしかない。きっと二人はそれぞれの大切な女性(ひと)と支え合ってこれからを生きていくのでしょう。そうあってほしいものです。


 “あの子”の視点から言いますと、彼らがこう思ってくれていたらいい……。そんなところでしょうか。


 彼と兄の関係がこうなってくれていたら嬉しい。どこまでが事実から形成されているもので、どこからが“あの子”の願望なのか、そんな事を考えながら、皆様にこの物語と向き合っていただけたら……。


 勝手ながら、それがワタクシの願望でございます。


 それでは皆様、またどこかで白足袋を履いた猫を見かけましたら、どうぞこっそりとその生態を覗きにいらしてください。


 また会う日まで・・・。アデュー。




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