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気にくわない男 3




「鳴瀬さんってなんかぁ――――」


「ホントにぃ――――」


 女子達のハルに対する悪口は尽きることなく次から次へと出てくる。どんだけ、出てくるんだよ。他人の事でよくもそんだけ盛り上がれるよね。俺は観察して分析するのは好きだけど他人の事で盛り上がるとか無理だ。言いたいだけ言った女子達は、最後の締めに――――


「ホント鳴瀬さんって――」


「「「冷たいよねぇ」」」


 うわー、声そろったー。


 あまりにも予想通り過ぎる女子達に、思わず心の中じゃなくて声に出してしまいそうになり、慌てて口に手をやった。


 ――――というか。


 羨ましいだけだよね、君たち。ハルにヤキモチ妬いてるだけだよね、面倒くさい。そもそも妹に妬くこと事態が間違ってるんだよ。ホント、面倒くさい。


 それに他の女子がハルに手紙頼んで何人も断られてるって知ってたんだったら、今回も断られる事ぐらい分からないかな? その子達より面倒くさいこと頼もうとしてるんだから、気付きなよね。


 あー、ハル。いつもこんな面倒くさいこと頼まれてたんだね。断るのも慣れましたってところかな? 俺が嫌だって言ったから、あれ以来断ってくれてたんだね。ホント、ゴメン。


「言いたいことはそれだけかな? 終わったんなら、私教室に戻るね。もう、休み時間終わるし」


 あ、このままじゃハルと鉢合わせして怒られる。


 俺は音を立てないようにその場を離れ、廊下の角を曲がったところに身を隠す。ハルは一人で空き教室から出てきた。


 うん、怪我はしてないみたい。よかった。ハルが怪我してたら俺、あの子達に何するか分かんなかったよ? いや、ホントに。


 俺があの子達に釘を刺しておいてもいいんだけど、俺が動いたことでハルを余計に面倒くさい状況に追い込んじゃうのも嫌だしな。


 幼稚園の時、手紙を渡してきた女の子に俺が色々と言っちゃったことで、ハルに矛先が向いちゃって。


「ユキ君に嫌われちゃったじゃない。ハルちゃんのせいだから」って。


 ハルを恨むのはお門違いなのにさ。


 だから、余計なことはしない方がいい。そう思ってこの時は見逃した。


 なのに……、あの女子達のハルへの風当たりは益々強くなっていって。そもそもあまりよく思っていなかった相手に束でかかったにも関わらず、言い負かされてしまったことが悔しかったのだろう。クラスの中でも強い立場だったらしい(所謂、一軍とかいうやつ)彼女達の嫌がらせは続いた。周りも巻き込まれたくないのか、我関せずを貫き通し、ハルに近づく奴は誰もいない。


 それでも、ハルが怪我をすることはなかったから。


 ハルが俺に知られたくないと思っているのも分かっていたから。


 “俺のせいで”って俺が思うことをハルが嫌がるのも分かっていたから。


 ――だから、知らない振りをしていたのに。




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