目覚め 1
天井が見える。ここはベッドの上だ。
「目を覚ましたんだね。物音がしたから何かと思って見てみたら、部屋の前ではじめ君が倒れてるんだもの。心配したよ」
良かった、とユキに手を握られる。
「ハルに言われてずっとここにいたんだけど、やっぱり一人は怖くて不安だったの。他の人達は目を覚ましたかな?」
「ああ。アキラの奴、レストランに戻ってればいいけど。麻井先生達もたぶん、今頃目を覚ましているはず……」
ユキの問いに答えながら、ふと疑問に思う。
「ユキ、ずっとって何時からここにいたんだ?」
「えっとねー、建物が揺れた後にハルがホテルの中を調べに行ったでしょ? 私もその後を追いかけて――その時からかな。調べるのは俺に任せてユキは危ないからここに隠れててってハルに言われたの」
何かがおかしくないか……?
目の前にいるユキは嘘を言っている様子はない。ホテルの中を調べに行った後、双子はちゃんとレストランに戻って来たよな……。なのに、ユキはレストランには戻らずにこの部屋にずっといたと言う。
だとしたら、俺が先程まで一緒にいたのは誰なんだ?
――ユキが二人いる?
訳が分からない……。
俺が思考の沼から抜け出せずにいる間にユキは部屋の中を歩き回っていた。
「あ、あなた誰!?」
目の前にいたはずのユキがいなくて声がした方を振り向くと、ガチャンという音と共にユキの姿が消えていた。
「はじめ君、助けて!」
扉の向こう側から聞こえてきた声は、俺に助けを求めていた。何が起こったのかも分からないままに、部屋を飛び出す。
「ユキ!」
廊下には既に誰もいない。彼女の名前を叫びながら俺は走り出していた。
まさか、殺人犯に……。
駄目だ……、ユキに何かあったら俺……。
エントランスに着いた。エレベーターは動いていない。階段に移動し、下へ駆け降りる。
「ユキ、どこだ! 返事してくれ!」
――――上に行ったのか?
彼女を探して駆けずり回るが、何処にもいない。少し走っただけなのに、肩が上下する程に息が上がってしまう。体力が無さすぎるにも程がある。立ち止まって息を整えながら考える。
どうすればいい――――、どうすれば――――――。
――そうだ、レストランだ。
レストランに行けば……。




