祐真くん 5
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先生の話を聞きながら、あの時の車椅子の女性と真理さんが繋がった。――今は車椅子に乗ってはいないけど。あの女性にも見覚えがあったのは、以前に会ったことがあったからだったのか、と一人で納得していた。
そして話を聞く限り、真理さんの連れ去り癖とも言えるこの奇行は一度や二度では治まらなかったらしい。真理さんが何度も他人の子どもを連れて帰って来る度に、先生は何とか上手い理由をつけて親元に返すというのを繰り返していたと言う。妻が警察に捕まらないように。誘拐犯にならないように。
「彼女が他人の子どもを連れ帰って来る度に、僕がしっかりしなきゃ、僕が真理を支えなきゃって。段々ノイローゼみたくなっていって、僕の精神もおかしくなっていったんだ。それで、彼女に強く当たってしまったことがあって。その時彼女はごめんなさい、ごめんなさいって何度も僕に謝って――。そして言ったんだ。ごめんなさい、貴方を父親にしてあげられなくてって。僕は自分が情けなくなったよ。彼女はずっと僕のために――。僕のことを思ってくれていたのに――。なのに、僕は――――」
先生は膝に肘をつき、頭を抱えて俯いてしまう。
「先生……」
俺は何も言えなかった。俺なんかが軽々しく口を挟めるわけがなかった。麻井夫婦にしか分からないものがある。先生と真理さんにしか分からない悲しみや苦しみがあるんだ。
「僕は悲しみの中にいる真理に何もしてあげられない。だからせめて、何があっても僕だけは彼女の味方でいたいと思っているんだ。僕だけでも彼女の隣で笑顔でいようと」
気を遣わせないようになのか、顔を上げて俺に笑って見せる先生。笑っているのに泣いている。俺と違って笑顔を作るのは上手いし、涙も出てはいないけど、隠せてないよ。泣いていることもバレバレだから。本当に、この人も不器用な人だ。
そして、今までの話を聞いていて思った。先生はここが現実の世界じゃないことを知っているんじゃないだろうか。だとしたら、ここは先生じゃなくて、真理さんの夢の中だ。
先生も俺と同じように他人の夢の中に入れる人なのか。若しくは、真理さんの夢だから先生が入り込めた可能性はある。他人の夢の中に入れる人の条件が共感力の高さだと言うのなら、先生は誰よりも真理さんに共感してあげられる人だと思うから。寄り添ってあげられる人だと思うから。
「先生は、もしかして……」
「真理が望むなら何でもしてやりたいと思っていたんだ。ここが真理の望む世界だと言うのなら、ずっとここにいてもいいんじゃないかと」
やっぱり気付いているんだ。それでも、ここから抜け出そうとしないのは真理さんの為……。そして、先生自身も心の何処かでここにいる事を望んでいるのかもしれない。だって、あの子がいるから……。




