祐真くん 1
「木崎君、どこ行くの?」
どこかへ行こうとするアキラをユキが呼び止める。
「話は終わったんだろ。なら、俺はここから出る方法を探す」
「ちょっと、待って。刑務所から脱走した殺人犯がこの辺りで目撃されたってニュースでやってたの。もしかしたら、このホテルに紛れ込んでるかもしれない。一人で行動するのは危ないよ」
「そうだよ。それにまだ目を覚ましていない人もいるし、先ずは一にこの人達の夢の中に入ってもらって」
「そんなこと、俺には関係ねぇよ。勝手にやってろ」
俺達が止めるのも聞かずにアキラはレストランから出て行ってしまった。口は悪いし性格的にも合わないし、普段の俺なら気にせずに放っておくところだが、まぁ悪い奴ではないのは彼奴の夢の中に入ったことで何となく分かってしまった。
いくら大人の男とはいえ、殺人犯に襲われるかもしれない状況で一人でいるのは得策じゃあない。それに、夢の中で見たあの彼女を見つめる彼奴の顔が何故だか頭から離れなかった。彼奴の抱えているコンプレックスはさておき、あの大切なものを見る目だ。
――アキラに何かあったら、あの子が悲しむよな。
放っておけない俺も俺だな、と自分に呆れながらも今は考えるよりも行動することにした。
「ごめん。俺、彼奴のこと連れ戻してくるわ」
目を覚まさない夫婦のことを双子に頼み、懐中電灯をひっ掴んでレストランから飛び出した。既にアキラの姿はない。エレベーターも動いている気配はないので、階段を使ったのか。闇雲に探すよりも上から順番に探した方がいいかもしれない。
とりあえず行ける所まで行こうと四階に上がろうとしたところで、俺は足を止めた。天井が崩れており、それ以上先へは進めなくなっている。ということは、アキラも三階より下の階にいることになる。
先ずは三階からと、エントランスに入った。ライトで辺りを照らしながら進んでみるが、誰かがいる様子はない。念の為と一つ一つの部屋を確認したが、301号室以外の部屋には鍵が掛かっていて中に入ることは出来なかった。なので、唯一入れる301号室の中を確認したのだが、人の気配はなく、この階には誰もいないようだ。他に特別気になることもなかったので、続いて二階に下りた。そして、着いてから感じる違和感。
――何だ?
真っ暗な中に感じる気配は確かに誰かがそこにいることを物語っていた。
――――誰だ?
アキラであれば問題はないのだが、そうではないような気がして声を発することができない。変な汗が背中を伝う。もし、不意打ちとかで後ろから来られても太刀打ちできない。どうしても疑心暗鬼に駆られて、振り返ったりキョロキョロしてしまう。自分の周りとその先の暗闇をライトで照らしながら一歩ずつ一歩ずつ前へと進む。その時、何処の部屋なのかは分からないが、小さな物音が聞こえた気がした。
ビクッとした自分に情けなくなる。
正直言って、暗闇はあまり得意じゃないんだ。でも、物音を聞いてしまったからには確認するしかない。恐る恐る歩を進めながら音のした場所を探す。201号室と書かれた部屋。
先ずはここから、と恐る恐るノブに手を伸ばしたところで、首筋に突然衝撃がきた。何が起こったのかも理解できないまま、俺の意識は飛んでいった。視界の端に誰かを捉えた気がしたが、誰かまでは分からなかった。




