ティナ
ティナ。
ティナ・アルトマーク。
耳もはっきり聞こえるようになり、私は自分の名前を認識した。
転生したなら元の世界の知識を生かして無双してやろうと思ったが、私の発達速度は大変平均的で、いや、なんなら前世の記憶のせいでかなり緩やかだった。
数学的な知能は別に問題ない。
前の世界と同じだからだ。
多い少ないくらい別に視界が悪くたって見分けられる。
数の認識は当たり前に余裕だ。
問題は言語発達だった。
英語が苦手だったのに突然別の何の知識もない国の言語を永遠に話されてもそりゃなかなか理解できない。
そもそも転生したての頃は全てを認められずシャットアウトしていたのだ。
今更頑張ろうと思っても後の祭り。
ろくに理解できなかった。
生後一年未満なんか喃語くらいしか話せないだろうと悪態をつくも、周りが問題に思っていたのは名前への反応が気薄なことで、でも私の名前は廣井昏なのだから仕方ないだろうと拗ねてみる。
それでも私を示すこの世界の名前はティナ・アルトマークで、誰も昏とは呼ばない。
だから反応もできない、なんて言い訳だろうか。
前世の記憶のせいで赤子の脳の容量を圧迫しているらしくすぐ熱が出るし頭もいたくなる。
医者が診たところで原因などわかるはずもなく。
身体が弱くきっと発達が遅いから名前の認識も出来ないのね、と可哀そうな子認定されていることだけはわかった。
人の表情は、私の元の世界と変わらない。
安心できるようでそれすら不快で、そう過去を思うと熱が出る。
ああ認めたくない。
多少の感情の揺らぎで涙と声まででる体にもはや悔しさすら感じながら、私は見知らぬ女の腕に抱かれて今日も眠った。




