表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金髪ピアス女子を拾ったら殺人鬼だった  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

第3話

 クラクションを連発する車が一直線に突進する。

 松田は叫びながら横っ飛びに避けた。


「うおおおおおおおぉぉぉっ!?」


 松田は間一髪で回避に成功する。

 加速する車は電信柱に激突し、車体の前部がひしゃげてしまった。

 少し遅れて、キリコがドアを蹴り開けて外に出てくる。


「はいはーい! 迎えに来たよ、ダーリン」


 額から出血するキリコだが、負傷を気にする様子はない。

 彼女は包丁を弄びながら松田に近付いていく。


「日付が変わったからね。今から一時間、殺し合いタイムだよー」


「う、嘘だろ……」


「マジマジ、大マジ。ガンガン殺しちゃうから覚悟してね」


 その時、近くの家から男が出てくる。

 男はキリコの傷を心配して彼女に駆け寄った。


「おい、どうした!? 大丈夫か!」


「はーい、元気いっぱいでーす」


 キリコは男の首を切り裂く。

 触れ出す鮮血を手ですくい、男は驚愕に目を見開いた。


「おぅぶっ」


 間もなく男は力尽きて倒れる。

 その様子を窓から見ていた住民達が悲鳴を上げる。

 住宅街が騒然とする中、松田は逃げ出した。


(ヤバい、ヤバいって! なんだよあれ! 昨日の殺してきたのも本気だったんだっ!)


 松田は走行中のタクシーの前に飛び出して急停止させると、後部座席に無理やり乗り込んだ。

 運転手は少し迷惑そうに言う。


「お客さん危ないよー。そんな慌てなくても――」


「とにかく早く出してくれッ! ヤバいんだ!」


 遮るように松田が怒鳴ると、運転手は戸惑いつつもタクシーを発生させた。

 息を切らした松田は後方を振り返る。

 道路に佇むキリコがタクシーを眺めているところだった。


 安堵する松田をよそに運転手が尋ねる。


「それで、どこに行くの?」


「ひとまず遠くまでお願いします。お金はあるんで……」


「高速は使う?」


「じゃあ使ってください」


 タクシーは高速道路に入った。

 ハンドルを握る運転手は暢気に会話をする。


「随分と顔色が悪いね。夜逃げ? 浮気でもバレたの?」


「それだったらどれだけよかったか……」


「はぁ……なんか大変そうだね。ガム食べる?」


「大丈夫です、すみません」


 それきり車内は無言になり、カーラジオの音声だけが流れている。

 松田はしきりにスマートフォンの時間を確認していた。

 焦燥感に煽られる中、彼は祈るように端末を握る。

 時刻は午前一時五十七分だった。


「あと三分……」


 その時、タクシーの後方に大型トラックが現れた。

 運転席にキリコ、助手席には男の死体が乗っている。

 死体は本来の運転手だった。


 トラックに気付いた松田は泣きそうな顔で呻く。


「おいおい、ふざけんなよ……!」


 トラックがタクシーの後部に追突した。

 激しい揺れに運転手が狼狽する。


「ちょっ、ちょちょちょちょ! 何だこれ!? 危ないって!」


「ドアを開けろ! 早く!」


 松田が怒鳴ると、運転手は反射的に後部座席のドアを開けた。

 そこから松田はタクシーの上部へよじ登ってキリコを睨む。


「おい、止めろ!」


「嫌でーす」


「クソがっ!」


 再びトラックが追突する。

 その揺れに耐え切れず、松田はタクシーの側面から転落した。

 彼はアスファルトに激突し、激しく転がって倒れる。

 あまりの激痛に松田は悶絶する。

 しかし幸いにもトラックの進路からはずれており、轢き殺されることだけは免れた。


「痛え……」


 トラックはタクシーを巻き込んでガードレールに突っ込んだ。

 挟まれたタクシーが潰れて爆発炎上する。

 トラックも巻き込まれて爆炎を噴き上げていた。


 黒煙が漂う中、キリコが平然と車外に降りてくる。

 彼女は楽しそうに手を振ってみせた。


「やっほー」


 キリコが包丁を投げる。

 包丁は松田の腕に刺さった。


「ぐっ!?」


「殺しちゃおう、殺しちゃおうー、脳みそ抉って殺しちゃおうーっ」


 楽しそうに歌うキリコは、動けない松田の前までやってくる。

 そして彼の腕から包丁を引き抜くと、それを高々を振りかぶった。

 次の瞬間、ピピピピピという電子音が鳴り、キリコは動きを止める。

 包丁の切っ先は、松田の眼球を貫く寸前で停止していた。


「ありゃ、時間切れかー」


 キッチンタイマーを見たキリコは残念そうに包丁を捨てる。

 彼女は屈み込んで松田に微笑んだ。


「ラッキーじゃん、松田君。とりあえずこれ、ご褒美ね」


 キリコは松田に情熱的なキスをする。

 その甘さを感じ取った松田は、己が不可避の地獄に落ちたことを悟った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ