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金髪ピアス女子を拾ったら殺人鬼だった  作者: 結城 からく


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第1話

 深夜一時、サラリーマンの松田がコンビニを出た際、煙草をくわえた女が話しかけてきた。


「ちょっとちょっと、おにーさん」


「えっ、俺?」


 松田は少し驚いた様子で相手を見る。

 煙草を吸う女は二十代前半くらいで短パンにTシャツ姿だった。

 ボブカットの金髪で、耳と唇にピアスを着けている。

 女は眠たそうな目で松田に問う。


「おにーさん、名前は?」


「……松田」


「松田さんね。あたしはキリコ。よろしくね」


 へらりと笑ったキリコは握手を求める。

 松田は戸惑いつつもどうにか応じた。

 そのまま彼の手をがっしりと掴んだキリコは、甘えるような声で言う。


「突然だけど、松田さんの家に泊めてくれない? 行く場所がなくて困ってるんだけど」


「いやいや、赤の他人を家には入れないよ……」


「もう自己紹介したから友達じゃん。ねえ、ダメ?」


 キリコは上目遣いで押し切ろうとする。

 この時点で松田の理性は危険信号を発していた。


(どう考えてもヤバいんだよなぁ……美人局か?)


 松田は周囲を見回すも他に誰もいない。

 次に彼はキリコを見た。

 豊満な胸の谷間、そして健康的な太腿に視線を移した後、松田はため息を吐く。


(もう、どうなってもいいか)


 下心に屈した松田は、優しくキリコに提案する。


「俺の家でよければ泊まりなよ」


「やったー! ありがとうっ」


 キリコは大喜びして松田の腕に抱き着いた。

 二人はそのままコンビニを後にして、松田の自宅を目指して歩き出す。

 途中、キリコは松田の耳元で囁いた。


「できれば何日か泊めてほしいんだけど……」


「いいよ。好きなだけ使って」


「やったー! 松田さん、天使じゃん!」


「自暴自棄というか、破滅願望があるだけかなぁ……」


 自虐的に述べる松田は、己の行動のリスクを理解しながらも止める気はない。

 ブラック企業での勤務で彼の精神は既に崩壊寸前であり、まともな判断能力を失っていた。

 むしろ、人生が台無しになろうことを望んでいる節すらあった。


 そうして五分後には松田の自宅のマンションに到着する。

 建物を見上げたキリコは感心する。


「わー、いいとこ住んでるねぇ」


「他にお金を使うこともないから贅沢してるだけさ」


 エントランスを抜けた二人はエレベーターで七階に移動する。

 右端の部屋を開けた松田は「どうぞ」と言ってキリコを招いた。

 キリコは嬉しそうに玄関に入る。


「お邪魔しまーす」


「お腹は空いてる? カップ麺とか冷凍食品ならあるけど――」


 リビングの明かりを点けつつ、松田は何気なく振り返る。

 そこには、包丁を掲げたキリコが立っていた。

 迫る刃に対し、松田は大声を上げながら飛び退く。


「うわあああああああぁっ!?」


 振り下ろされた切っ先は、紙一重で松田に当たることなく床に突き刺さった。

 キリコは愉快そうに笑って包丁を引き抜く。


「よく避けたねぇ。初日だし今日はチュートリアルってことで、ここまでにしてあげる」


「な、何の話だ……?」


「あたしは殺人鬼です。一日のうち、一時間だけあなたの命を狙います。一日生き延びるごとに、一時間だけ何でも言うことを聞いてあげる……って感じだけど、どうする? やってみる?」


 狼狽する松田の言葉には応じず、キリコは心底から楽しそうに問いかけた。

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