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第14話 宴。

丸焼きの羊が運ばれてくる。腹がすいていたので、いい匂いだ。


先ほどから、ヨーグルトのような白いほんのり酸っぱい酒が振る舞われている。飲み口は良いがかなりアルコール度数が高そうだ。

他にも見たことのないご馳走がテーブルいっぱいに広げられている。


…大宴会だな。


敵意は無いと判断したので、連れてきた新人兵も隣のテントでご馳走になっている。


「そうでしたか…ランベルト殿がアイナを救ってくれたんですね。」

「まあ、それがきっかけで婚約を?」

「……」


アンナは…切り分けられた羊肉に食らいついているし…俺は先ほどから、長とその妻のディオーナに質問攻めなんだが…。


「美味しいぞ、ランベルト、食べないのか?」

「ん、」

アンナによく焼けた羊肉の塊を口に突っ込まれる。

それを長夫婦に目撃されて、温かい目で見られている。シンプルに塩味だがなかなか美味い。


「私たち、こちらに来てからレオンの兄たちを片づけなければいけなかったので、思ったより時間がかかってしまって…。そうこうしているうちに、アイナが竜の泉に生贄として突き落とされたと聞いて…あの国を滅ぼしたくなりましたわ。まあ、私たちが手を出さなくても、あの国はもう終わりです。」

「…姉上。」

「あいつらの標的は、まずは私でした。遊牧民をそそのかし金を積み、私を誘拐させて殺すつもりでした。情報は早々に入っておりましたので、ね。裏をかいて、屋敷の内通者を処分し、レオンと迎えに来た仲間たちと逃げ延びました。もちろん、誘拐させるための報奨金も身代金も頂戴しました。」


なるほど、アンナが優秀な姉、と評するはずだ。


「…首謀者は?」


「私たちの国の宰相です。宰相が自分の息子をうちの異母妹と結婚させて王になる、という筋書きでした。実母が亡くなってからは父王は傀儡でしたから。ですから…アイナも邪魔だったわけです。私の脱出については内通者が多すぎてアイナにも話せませんでした。アイナにも早々に逃げるように伝えてあったのですが…まさか、そんな何百年も前の言い伝えを持ち出して生贄にするなどと…」


アンナの姉上は、アンナによく似た面影をしていた。銀色の髪は腰のあたりまであるだろうか。ゆるく三つ編みにしているようだ。アンナも…あのくらいの髪だったのか?おかっぱ頭くらいには伸びたアンナの髪と見比べてしまった。

…いや、そしたら女の子に見えるか?今はまるで少年のようだがな。

羊肉が気に入ったのか、アンナはまだ食べている。


勧められて、杯を空ける。


レオンはもともとこの遊牧民の国ウーノ国の王の末子だったらしい。小さいころから利発であったため、王のお気に入りだったらしい。この国には長子が跡を取る、という習慣はなく、才あるものが選ばれる。そこでレオンは数多いる兄たちに忌み嫌われて、狩りに行くと誘われ、身ぐるみ剥いでビアンカ山脈に捨てられたらしい。


「そう、たまたま反対側から狩りに入っていた私が拾ったのよ、ね。8歳だったわ。」


8歳で…相手の本質を見抜くあたり、凄いね。

妃であるディオーナとレオンが見つめ合って笑っている。はいはい。


それ以来、レオンを片時も離さずにこの人は教育を施したわけだな。言葉はもちろん、施政者として必要なすべてを2人で、まあ、アンナもいたらしいから…3人で学んできたわけだ。この子たちの母親はしっかりしていたようなので、教育も厳しかったらしい。均衡が崩れたのは…その母親が急死してから。側室が皇后に上がった。

そのあたりから、だんだんと…


「あの国はおかしくなっていったのよ。母が大切に保存して来た小さな湖沼群の周りの森の木を切って干上がらせたりね…何がしたいのかわからないわ。挙句に、日照りになったからって、アイナを生贄にしようなんて…。」


「雨は…降ったのでしょうか?」


「残念ながら、降らなかったようよ。これで思惑通り雨が降ったら、毎回生贄を出すようになっただろうから、それはそれでいいと思うのよ。」

「まあ、姉上。国政は悪いものでしたが、国民には非がありませんから。むしろ、助けなければいけない王族や貴族が、見て見ぬふりをしてきたのが…」

「まあ、アイナ?まだあの国に未練があるの?」


「いえ…私は一度、死にましたから。」


まあな、自分を殺そうとした国だしな…酔いが回り始めてぼんやりした頭で姉妹の話を聞いていた。


「ねえ、アイナ、ドラッヘン帝国の皇帝陛下にお願いして、ウーノ国に来ない?」

「……」

「婚約者と別れるのがつらい?でも、さすがに軍の副将軍を連れては来れないでしょう?どうかしら?この国で暮らさない?」


うんうんと、レオンもうなずいている。

そうか…その方がいいかもなあ…


「私はドラッヘン帝国の皇帝陛下と、2年で荒野のような土地を豊かにして見せるって誓ったんです。どうするかは、あと一年、待ってもらってもいいですか?」

「アイナ…」

「姉上とレオンが生きていてくれただけで、嬉しい。姉上は昔からレオンが大好きだったものね。幸せになった二人が見れたんだもの、あと一年ぐらい何ともないわ。」



そうか…そうだな。俺と婚約者とか言うのも、便宜上のことだしな。


ウーノ国に行くのか…新しい長で、新しい体制を作るつもりらしいから…こいつの農業の知識も役に立つかもな…


俺は…








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