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第51話 P2M:戦士への挽歌 Elegia per Michaela Armgren
玉桙の 道来る人の 伝言の 我に語らく
射干玉の 夜渡る月に
叢雲の 隠るる如く いや遠に 消え行く如く
茜差す 照らす光に 咲く花も 時にうつろふ
空蝉の 人の運命も かくあれど
磨ぎし光は 真澄鏡 割れ得ぬものと 憶えしが
風無き朝に 立つ霧の 晴れるが如く 置く露の 落ちるが如く
まつろはぬ 敵に振いし 剣太刀 取り佩く姿
朝焼けに 敵を屠りし 夕映えに 髪うち靡く
久方の 天の下にも 樛の木の 重なる梢 変わりせず
永遠に続けと 想いしが その身凛々しき
君声は ここと聞けども 響きなく 先に消え行く
君影は ここと言へども 色もなく 空に溶け行く
夏虫の 淡き光に 寄り集い 彷徨い迷う
言の葉も いまだ尽きねば この嘆き いまだ過ぎぬに
言喧く 騒ぐ道辺に 是非もなく
君の名を呼ぶ 人も無く
十六夜う月の 行方知らずも




