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第46話 F18:不死者の調査 Indagine sugli immortali

 その夜、アンデッド(non morti)の調査についてリネカー師匠に聞いてみる。

 師匠の家というか、師匠が済んでいる集合住宅の一室

 ここは合宿できるように、個人の部屋と共通部屋がくっついている造りになっている。

 今は、師匠とボクしかいないけどね。

 いわゆるリビングで向かい合って話す。

「師匠、このお茶美味しいです」

「そーだろう。キミもレベルが上がったら、こういう美味しいものが飲めるんだよ!」

「それでですね。フレに依頼(ricerca)に誘われたんです」

「ほうほぅ、話してみ!」

 話してみる。

「アンデッド? この辺には居ないはず」

「そうなんですよ。いろいろ情報を集めたんですけど、その地区のアンデッドの出現は前例がないと……」

「うーん、何だか変だね。でも、良いんじゃない? 色んな依頼をこなすことは必要よ!」

「今度は少し長くなるかもしれません」

「うんうん、肩に力を入れ過ぎず、頑張ってらっしゃぃ」

 師匠も後押ししてくれる。

 元気に行って来よう。

「で、師匠の幻影(visione)って何ですか?」

「それは言わぬが華よ! アルフィくん」

 

 建国2年祈月(いのり・つき)19日(19/Preghiera/Auc.02)

 第一昼刻の早い時間、小半刻を過ぎた頃

 明日に向かう町南門前、人通りはまだ少ない。

 サヤ、ゲッツ、ボクの三人は集まったんだけど

「コーリがまだか」

「まぁ大丈夫でしょ」

「急ぐ旅でもないしな」

「すみませーん。遅くなりました」

 遠くから声が聞こえ、息を切らして駆けて来る。

ドジっ子(impacciata)属性持ちか?」

「そんなこと言わないで下さい」


 晴れた日が続く。今は乾季らしく、あまり雨が降らない。

 遠出の依頼(ricerca)には好条件だ。

「行く方向は南西だ」

 みんなで南門を出る。

 一応守衛は居るけど冒険者はほとんどがチェックされない。

 町の近くはそれほど危険でもないしね。

「南西か、俺は途中まで行ったことはあるが、それから先のマップはない」

「ボクもこちら方向は初めてだ。生命の腕輪に記録されるマップもグレーのままだ」

「私は全く経験ありません」

「みんなほとんど初めての場所だが、モンスターは東側とあまり変わりがないらしい。初心者殺しのようなものはいないと聞いている。心配することはないとは思うが気が緩んではいけないな」

 サヤの指示で依頼に出発だ。

「了解だ。途中の道で罠の心配はないだろうから、俺が先頭だな」

「フォーメーションは、先頭がゲッツ、私とコーリが続いて、後方警戒にアルフィだな」

「いつもの通りだね。出発しようよ」

「みなさまの脚を引っ張らないように頑張ります。よろしくお願いします」

 ゲッツが悠然と歩き始める。

 先は、赤い土と草原がどこまでも続く。振返ると、コンクリートの城壁と大きな南門が見える。

 少し寒々とした気候だ。防寒対策は必要だね。

(protezione)(da)加護(fuoco)!」 

 コーリの結界(barriera)魔法が役に立つ。

 結界は薄いバリアで、敵の攻撃効果を抑えるのが本来の目的だけど、防寒・耐暑の効果もある。

 レベルが上がると必須のスキルだ。

「結界魔法とは有り難いな。安心感がある!」

「あたしって痛いのが嫌いなので必死になって覚えました」

「お蔭で、ボクたちは楽ができる」

 結界に守られながら、足取りも軽い。

「一日行程の付近に、キャンプ地を少し充実させた拠点らしきものがあると聞いている。まずはそれを見つけるが目標だ」

「この世界は道が一定じゃないから、面倒だよね」

「依頼達成には時間の余裕もある。急ぐこともない。ゆっくりと行こうぜ!」


 最初の遭遇戦は、ヘビトカゲだ。

 長さは一メートルを十分に超える。背中は緑、腹側は白

「こいつ毒持ちだ。一気に倒すぞ!」

 サヤの声に合わせて、ゲッツとボクが前に出る。

(protezione)(da)加護(terra)! (protezione)(da)加護(fuoco)!」

 コーリは結界の二重掛けをする。地属性の敵にはかなり有効だ。

 サヤによる弓の先制攻撃を受けたヘビトカゲが硬直する。

 その瞬間を狙い、ゲッツの槍が敵を貫く!

 怯んだ所に飛び込んで、ダガーで切り裂く。

 トカゲは黄色の光を放ちながら消えて行く。

「おっし楽勝!」

「多少の個体差はあるだろうが、こちらも強くなってるからな」


「みなさん、お強いですね」

「いや、それは違うぞ。コーリ」

「え?」

 コーリが不思議そうにしているので、ボクから説明する。

「えとね。パーティってのは、各人の力を単純に足したものが全体の力じゃない」

「どういうことでしょう?」

「例えばね。コーリが結界掛けた場合、四人に掛かるから、一人の時より四倍の効果になる。遠距離攻撃を受けた敵が硬直した瞬間を前衛が攻撃すると反撃されないし、瞬間のダメージは高くなる。こんな風に他人の力を利用して自分の力の効果を高めるってわけ」

「なるほど~」

「他人の力を理解してれば、それだけ効果的な攻撃ができるね」

 コーリと一緒の初戦闘(battaglia)はまずまずだったかも


 途中では、ベニダケが出て来る。

 白っぽい茎に、傘は黒赤の縞模様、体長は50cmくらい。

 茸のくせに動き回る。

 攻撃を受けたゲッツが毒異常だ。

(disintossi)(cazione)!」

 コーリの魔法で対処

 予想通り毒持ちだった。

「ありがたい。回復役が居ると安心感がある」


 この移動で最も面倒だったのが、タケニグサという植物系モンスター

 竹の姿をしており、高さは3m以上はある。

 葉が鋭く尖っており、これで襲って来る。

 移動しないので火魔法を使って焼き払えばいいんだけど、水属性らしく抵抗力がある。

 しかも、数が多いので厄介だ。

 これに囲まれたら危ないかもしれない。


 予想以上にモンスターが多い。

 第五昼刻が始まっても拠点は見つからない。

「面倒な敵が多かったな。経験値は稼げたかもしれないが、思ったより進めなかった」

「まもなく日没だ。無理して進むこともあるまぃ。この辺で野宿(capeggio)地を探した方が良いと思うぜ」

 夜間は道に迷うかもしれないし、疲労が溜まるのも問題なので、岩陰にテントを張ることにする。

 途中で、群から逸れたオリックスを狩ったので食糧に問題はない。


 野宿の準備中だったんだけど、急に周囲が暗くなる。

 あれ? まさか?

「アルフィ! インスタンスか?」

「飯の前とは運が悪いな」

 二人の声を遠くに聞きながら、暗闇へと落ちて行く。


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