第27話 M12:マスター・スライム討伐 Contro Maestro-Slime
周囲は全て湿地帯
水気の多いコケの群生、浅い沼が続く。
空気も生暖かく、湿気が多い。BGMまで変化する。
「これがインスタンス?」
「全く違う状態じゃのう」
「ああ、前に何度かインスタンスに出会ったが、全く別の場所に来たと思った方がいい」
「あ、サブとか言う彼も居る。インスタンスってパーティだけじゃないの?」
近くに居るものを巻き込むことがある……こういうことか。
「これ! サブとやら、拙は ”如月榛名” という。とにかく一緒にインスタンスに巻き込まれたのじゃ、終わるまで協力してもらうぞ」
「分かりましたでございます。はるなさま」
急に下手に出て来た。そーゆー奴なのか
「”はるっち„ と呼ぶのじゃ、分かったの!」
「は、はい、はるっちさま」
はるっち怖い。
とりあえず四人で行動することにする。
サブは魔法職でそれなりに出来るとは言ってたけど、どうだろう?
「ねぇ、どんなインスタンスなんだろ?」
「スライムがたくさん居て、その中にマスターがいるんじゃないか?」
「これはいかん。この環境だと、スライムは多分水属性。水魔法は禁止じゃ」
珍しく、はるっちが困った顔をする。
「移動中は、砂漠のモンスターだけと思って、火と水属性魔法を優先したからのぅ。弱点を突かれたわ」
「突然のインスタンスだから、しようがないけど。自分の鎚鉾もスライムっぽいのは苦手だわ。堅い敵だといいんだけど、柔らかいと打撃が通り難いのよね」
「水に強いのは風じゃ、雷攻撃があればよいのじゃが」
「雷って風属性なの?」
思わず聞いてみた。
「雷は空気の作用で発生するので風属性じゃ。なんだ知らんのか?」
知らんかった。
「ワイは水と火だけや」
「使えんのぅ」
「そんな!」
がっくりと落ち込む。
「とりあえず、自分とことねが前に出よう。ことねは ”切る„ より、”突く„ 方が良いと思う」
「分かった!」
「回復は回復の炎で行こう。サブは使えるのか?」
「それは大丈夫やが、ワイの得意の炎の槍が使えんのは辛いんや」
「風塵剤が少しある」
「それは切札だな。敵がまとまって居る時とマスター用だ」
ディアとわたしが前衛、はるっちとサブを後ろにして湿地帯をゆっくり進む。
急に気温が上がり湿気も多い。上着も脱いで夏仕様にする。
進むに連れて、ぷにぷにの球体が襲って来る。三十センチから一メートルくらいのお約束のスライムだ。
「風の束縛!」
はるっちの魔法で脚止めをしながら、ディアと私の打撃で倒して行く。
大して強くはないが、数が多い。
「面倒じゃのぅ」
湿地帯で足場も悪く戦い難い。
気温と湿気で汗が吹き出し、体力が消耗する。
「どうやれば、これ終了するんだろ?」
「”マスター・スライム討伐” なんだから、マスターが居るんじゃないか?」
「マスターというくらいだから、大きなスライムなのかな?」
「それなら、目立つじゃろうから、直ぐ気が付くはずじゃ」
進むに従って、スライムの数が増えて来る。
「そろそろお出ましかもじゃの」
前方にスライムの集団、迷わず|風塵剤《pozione di vento》を投げ込む。
爆散していくスライムの間から、大物の姿が見える。
「あれだね」
大きさは一メータ五十くらい。
青く透き通る身体を震わせてこちらを威嚇する。
「予想以上に大きいのぅ」
「少しずつ削るしかなさそう。取巻きが邪魔だけど」
「降雨!」
サブの声、えぇっ! ここで水魔法???
水滴が落ちて来て、スライムたちに吸い込まれる。
「馬鹿かお主は!」
あ、はるっちから叩かれている。
「失敗や! 間違えた」
「失敗とか、見るんじゃ! マスターが大きくなってるではないか」
マスター・スライムが見る間に二メートルくらいになる。
取巻きたちも元気マシマシだ。
「これはダメだ。いったん下がろう!」
ディアの声に敵を牽制しながら少しずつ後退する。
「こらサブ! 何とか風魔法できないのか?」
「そうじゃお前の責任じゃから、何とかせんかぃ!」
「風、風、かぜ~~、カゼ?」
サブの叫び声が虚しく響く。
「風・風・かぜ~~~~~~! ワイを助けてくれ~~~~」
「ええぃ、気合入れんかぃ!」
はるっちの和本の角がサブの頭頂部にクリティカル・ヒット!
同時に轟音が響く!
赤い稲妻が次々にスライムを襲い、取巻きたちはひとたまりもなく砕け散る。
「何これ?」
「赤き雷か? 噂に聞く雷系の大技じゃ!」
「そんなんで発動するんかよ~~~~」
スライムどもは綺麗さっぱり居なくなる。
「やった?」
「いや、まだだ。インスタンス・クリアが出ていない!」
「あそこじゃ!」
マスター・スライムは雷で麻痺し転がっている。
「いまだ! 集中攻撃!」
四人いや気絶しているサブを放置して、三人で叩きまくる。
マスター・スライムは赤く色を変えながら破裂し、青い光を放ちながら消えて行く。
生命の腕輪から効果音と共に字が浮かび上がる。
”インスタンス・クリア:マスター・スライム討伐”




