―第103章― 大切なものを失わない為の鈴の「弛緩」
城の外からは罵声が聞こえ、戦の前の騒々しい空気が伝わってくる。
そんな状況なのに、私は安心すら感じていた。
西川さんに手渡された甲冑を理恵と千夏と協力して身に付けていく。
慣れない重みを纏い、動きは少しおぼつかない。
それでも、みんなの笑顔を見つめていると自然と心に希望が湧いてくる。
「開戦だな」
死神のその声には妙な熱が籠っていた。
城の外から法螺貝の寺の重い音が響き、積み重なる足音が近づく。
隼人から手渡された槍を構えて、スーと深呼吸。
「この城は先代の死神も他の国に攻められた時に籠城して、少数兵でも落ちなかったらしいから当分は入られないと思うよ」
微笑む死神に肩を叩かれた。
「それに、あの2人の滾り様が半端ないからこっちの出番はなさそうだしね」
扉の目の前に悠然と立っている飛鷹と隼人を見つめて、千夏も笑う。
戦いは進んでいく。
扉を丸太で叩く音が響き、心拍が揺れ出した。
その音は絶え間なく、なんならその音自体の大きさも増して鼓膜にぶつかってきた。
鋼鉄に覆われた城の中、閉ざされた夜が更けていき、いつの間にか外の音が小さくなっていた。
「あの。今、奇襲してみるのってどうですかね?」
鋭い眼光を放ち、理恵が進言する。
力を抜いていた身体が再び、緊張する。
「確かに、1日目の夜から奇襲してくるとは思わないだろうし、裏をかけそうだな」
死神が小さく頷き、軽くくつろぎ始めていた私達の反応を確かめた。
「こっちは力が有り余っていて、相手は疲弊状態。もともと突飛な策がなければ勝てない戦いだから、丁度いいだろ」
西川さんに手配された地図を見ていた想空も大きく頷く。
「じゃあ、やったるか」
地べたに座り込んでいた隼人が腰を上げながら呟くその声に、咆哮が募った。




