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転移ママの異世界奮闘記  作者: 平館 あや
第5章 『冒険者活動』
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36話 ギルバートとドラゴン

南の森にドラゴンが出た。


すぐに討伐隊が組まれ、討伐に向かうことになった。

ドラゴンはS級の魔物。非常に強く、危険だ。

討伐はA級冒険者に任される。

もちろんS級冒険者のギルバートもだ。

B級の冒険者も実力によって選ばれることがある。

その中でも勇者アルクは必須メンバーらしい。



「アルクがいると、聖剣が使えるからね!アルクさえちゃんとできれば楽に討伐できると思うよ。」

「聖剣、、そんなものがあるの?」


聖剣とは、歴代の勇者に受け継がれている剣だ。

聖の属性があり、魔王はこの剣でないと倒せないとのことだ。

魔力を込めることで斬れ味が増すので、

普通の剣では刃が通らないドラゴンも、聖剣ならば一刀両断できるらしい。

チート武器だ。


「王都付近でドラゴンが出たのは100年ぶりくらいになるのかな?その時は勇者もいなかったし、討伐するのにかなりの犠牲者を出したよ。」


30人以上のA級冒険者で討伐隊を組み、

時間をかけて少しずつドラゴンを消耗させて行ったが、強力すぎるドラゴンのブレス攻撃により、何人もの犠牲を出したそうだ。


「その討伐はギルバートもいたの?」

「ああ。もう100年も前のことだ。あんまり覚えてないんだけどね、、っ!」


「どうしたの?」

「いや、ちょっと一瞬頭痛がしただけ。」

「大丈夫?」

「うん。大丈夫。あー、ドラゴンね。何か大事なことを忘れてる気がするんだけどね、思い出せないや。」

「100年ぶりですものね。」


100年も前の事を覚えている方が逆にすごい。



「ドラゴンは、聖剣を持ってるアルクが中心になって戦うの?」

「ああ。僕とか他の攻撃魔術師がサポートしながらね。」

「攻撃魔術師、、私もそのうち戦うのかしら。」

「ああ。魔術師のサモンドだ。いつか必ず戦う。もちろん何度もね。魔王が復活したらドラゴンなんてゴロゴロ転がってるからね。」

「ゴロゴロ、、、それで世界は大丈夫なの?」

「ああ。多少はブレスで燃やされちゃう街もあるだろうけど、世界が終わる程でもない。」


「街が、、、そんなに簡単に、、、!?」

「魔王が復活してる時期は仕方ないよ。でも先代勇者は、ドラゴンをサクサク斬ってたなー。懐かしいなー。聖剣でズバッと一刀両断。アルクもそろそろ、ちゃんとできるかなー?」

「ドラゴンを一刀両断、、、そんなことできるの?」

「アルクがちゃんと鍛えてればね。うん、実に不安だな。一発で仕留められなかったらブレスが来るからね。ドラゴンのブレスだけは本当に危ないから、何があってもとにかく勇者だけは守らなきゃなんだよ。」


「ねえ、もし勇者に何かあったら?世界はどうなるの?」

「勇者の変わりは誰も務まらない。聖剣が使えないからね。もし死ねば世界が終わる。」

「世界が終わるってどういう事?過去に勇者が死んだことは?」


「あるよ。記録が残っているものだと、2000年前、勇者は魔王に敗れ、殺された。次の勇者が魔王を倒すまでの間、世界は魔王に支配された。地上は魔物に占拠され、生き残った人族はごく僅か。他の種族は、地下シェルターや、森の聖域、結界のあるエルフの里でひっそり暮らして、次のサモンドが揃うのを待ったそうだ。」


なんだか怖い話になってきた。

とにかく、勇者は死んじゃいけないらしい。



「ま、今回のドラゴン討伐はエルフも沢山いるし、大丈夫でしょう!」


ギルバートはパンっと膝を叩いて立ち上がった。



「ギルおばちゃん、あーそーぼ!」

「うん!何して遊ぶ?」


「鬼どっとー!」

「鬼だぞー!食べちゃうぞーー!ガーーーー!!!」


カプカプカプカプ


「違うのー!!ほっぺ食べないで!走ってちゅたまえるのー!」

「あ、そうなの?じゃあ、まてまてーー!」

「キャーー♪」


「捕まえた!」

「キャーー♪どぅるどぅるしてー!」

「そーれ!ぐるぐるーー!!」

「キャーー♪」


ガシャーーーーーン


「「あ、、、、」」

「自分の家の家具でしょ。私は知らないわ。」

「うん!気にしない!ぐるぐるぐるーー!」

「キャーー♪」


パリーーーン


その夜、紗奈が電池切れを起こすまで、

2人は家中を走り回っていた。


ーーーー


翌朝、ギルバートはアルクらとドラゴン討伐に出発した。


「じゃ、行ってくるね。南の森は近いけど、相手はドラゴンだからね、少し時間をかけるかもしれない。

日帰りできなくても、僕が留守の間も鍛錬を怠らないようにね!」

「わかったわ。気を付けて!」

「いってらっちゃーい」



その日はエマと紗奈と薬草採取に行った。


「リサは薬草採取、好きよねー。」

「天気が良い日は薬草採取に限るわ。紗奈も走り回れるし、この辺に出る魔物は弱いし。」

「完全にピクニック感覚ね。」

「はーちゃん、おととであしょぶの好きー!」


紗奈は私が魔術で作ったゴーレムを上手に操りながらお人形遊びをしている。


「サナちゃんの魔力操作も上手くなったわよねー。」

「ほんと、遊びながら学ばせるギルバート流の指導方法は面白いわよ。子供の扱いも上手いし、あの人、幼稚園の先生とかに向いてそうね。」

「本人が遊び心を忘れてないからね。それに、実際先生だったらしいわよ。前世で。」


アルクに前世の事を聞いて怒られた教訓から、

ギルバートの前世について敢えて私から聞いたことはない。

ここにきて初めてギルバートの前世の話が出てきた。


「なんか、教え子を守ろうとして死んじゃったらしいわよ。」


重いやつだ。聞かなくて正解だった。



「ギルさんとアルク、そろそろドラゴンの所に着いた頃かしら?」

「近いって言ってたものね。そんな近くにドラゴンが現れるのも驚きだけど。」

「アルクの奴、上手くやれてるかしら?」

「ギルバートが付いてるから大丈夫よ。」


ーーーー


その日の夜は、ギルバートは帰って来なかった。


「ギルおばちゃん、帰ってほないねー。」

「そうね。ドラゴンだから時間がかかるかもって言ってたし、明日には帰ってくるんじゃないかしら?」

「帰ってきたら、また鬼どっとするんだー!」

「家具、壊さないでね、、、」



この時既に、ギルバートは、

二度と鬼ごっこができない事態になっていたらしい。


ーーーー


ギルバートが帰ってきたのは翌日の夜だった。

アルクに肩を貸りながら。

片手に松葉杖をついて。


「ただいまー!無事帰ってきたよー♪」

「全然無事じゃない。」



ギルバートの左脚、膝より下が無くなっていた。


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