11話 家電魔道具店
「いらっしゃいませ。あ、アルク様!いつもありがとうございます。」
「うっす。」
店に入るとすぐに女性エルフの店員に声をかけられた。
アルクとは昨日同様、顔なじみのようだ。
店内には冷蔵庫のような魔道具、コンロのような魔道具、炊飯器のような魔道具、洗濯機のような魔道具色々あった。
本当に家電量販店のような感じだ。
そして、生活家電を越えた先、ディスプレイにあったウサギの乗り物にまたがる紗奈を確保した。
「コラ!!!なんで勝手に入るの!急に走るのもダメ!危ないでしょ!それに、お店の物も勝手に触っちゃダメでしょ!!」
紗奈に注意する。
「、、、、ごめんなさい。」
紗奈がブー垂れた。
「ふふふ。お母様ですか?大丈夫ですよ。置いてある物はサンプルですのでご自由にお試しください。」
女性エルフ店員に笑顔で諭された。
「はーちゃん、ほれで遊びたい!」
出た。一度ロックオンしたら離さないやつ。
「サナ、こうやって動かすんだ。」
アルクがサナにウサギの乗り物の操作を教える。
「すいません。。アルクもありがとう。。」
「良いんですよ。このおもちゃ、以前アルク様にもお馬さんの方をご購入して頂きましたね。甥御様もお気に入りなようで、定期的に魔力の充填にいらっしゃいますよ。」
「ども。」
アルクが照れ臭そうに返事した。
「アルクは甥っ子がいるのね。」
「ああ。甥姪合わせて5人いる。」
「5人!!まぁ、4人兄弟ならそうなるわね。アルクはご兄弟とか甥っ子ちゃんとかと仲良いの?」
「あー、まぁまぁだ。」
アルクの隣で女性エルフ店員がニッコニッコしている。
多分、まぁまぁどころじゃなく仲がいいのかもしれない。
それか叔父バカかだ。
私の予想だが多分後者だ。
紗奈がウサギのおもちゃを乗り回すのを、無言ながら上手にサポートするこの勇者、かなり子供に慣れてると見た。
「ママーー!動たなくなったった!」
うさぎの乗り物が動かなくなったらしい。
紗奈が絶望的な顔をしてこちらを見ている。
「しっぽを掴んで魔力を込めるんだ。リサ、やってみるか?」
「あ、うん、こう?」
「ああ。目が緑になれば充填完了だ。」
「アルク様のお連れ様は、もしかして、噂の親子サモンドの方ですか?」
「、、、ええ。」
出た。噂されてるやつ。
一体どの範囲で噂されてるんだ?
「サモンドの方でしたら、こちらの魔道具は充填し放題ですので、買って損はないと思いますよ。」
「この世界には電気がないからな。魔力で動く魔道具が家電みたいなもんなんだ。魔道具を動かすには魔力を溜めておかないといけないが、俺達ならさっきみたいに自力で充填できる。」
「へぇ、、、」
魔道具は基本、魔力を充填して使うものらしく、店には充填カウンターもあった。
魔力を扱えない普通の人たちは、小型の魔道具はこの店や、昨日行ったローブや杖の魔道具店で充填してもらうらしい。
そして持ち運べない大型の魔道具は、エルフに出張充填に来てもらうそうだ。
エマの家は普通に夜も明るく、家電のようなものも沢山あったので気にしていなかったが、魔道具の無い家庭は調理は釜戸、照明は火種のランプ、洗濯はタライなんだそう。
「あ、安い。冷蔵庫5000ルーク!?こっちのコンロは3000ルーク!?水洗トイレ1000ルーク!!!」
「はい。充填でお金を頂いてますので、商品自体はお安く提供しております。」
この店員、今、いかにも私達親切でしょ?風に言ったが、これはあれだ。
0円で携帯電話を売って、基本料金で稼ぐ昔の携帯電話会社の仕組みじゃないのか?
安いから、便利そうだからちょっと使ってみようとかいって買ったが最後、便利さから手放せず、メンテナンスに金をかけていく、、、
絶対エルフが儲かるやつじゃないか!
私がジト目で店員を見ると、
店員は、変わらずニコニコ笑顔でこちらを見た。
あ、違う、これ、あれや。
天然で良いことしてるって思ってる顔だ。
「はーちゃん、ぴょんぴょんほちぃ!!」
紗奈がわがままモードに突入した。
「ダメよ。私たちは今、エマの家にお泊りさせて貰ってるの!他所様の家にこんな大きなおもちゃ置けません!」
「えーー。。じゃあ、はーちゃんのおうち、はって、、、」
「お家は買うわよ。」
「やったー!おうち はったら、ほれ置てるね!」
「そうね。お家買うまで我慢できる?」
「うん!やったーー!!!」
よし。
家を買うのはまだ先だ。
これで後は、この店に近寄りさえしなければ、きっと家を買う頃には忘れてる。
「あ!アイシュ食べりゅんだった!!」
紗奈が急にアイスの方を思い出したので、魔道具店を後にした。
冷やかしでごめん。