接続
『大きな時代の波という色。それに飲まれたり。混ざったり』
漂う煙の向こう。
鳶色の瞳が翳る。
『それこそカメレオンのように。自らの色さえ変えて。順応したり適応したりする』
煙草を挟んだ手が口を覆う。
白い筋がくゆる。
『それでも、敢えて馴染まなかった色もあるのが歴史の面白いところでしょ? ね、柚葉さん』
ぐっと。
私を射抜く眼差し。
あわただしくなる心臓。
そっと。
顔を背けて。
髪の毛先を指に巻き付ける。
「それって、りょうさんのことですか? それともご先祖様のことですか?」
首を傾けた私。
ちらりと送った画面の向こうで。りょうさんも同じ向きに首を倒していた。
『うーん。どうだろう。でも、柚葉さん……』
ブーッ、ブーッ……
スマホの震動音。
りょうさんが手を伸ばして。
その画面に視線を落とす。
文字を追っているのか。
瞳が動く。
「……彼女さんですか?」
勇んで。
ううん。
振り絞って。
口にしてしまった言葉の行く末。
ぐちゃぐちゃして。
気持ちも。
呼吸も。
鼓動も。
きっと、表情さえも。
ちぐはぐな私。
『ん? 何か?』
「あ、いえ……なんでもないです……」
尻すぼみになる声。
『そう。でも、柚葉さんと話が出来て。本当によかった。ありがとう』
頭を下げるりょうさん。
「いいえ、私の方こそありがとうございます」
私も姿勢をただして。
お辞儀をする。
『そしたら、もう遅いから終わりにしましょう』
「え? あ、はい……」
肩を丸めて。
うつむく私。
アワアワする心。
ピークを迎える心臓。
どうするの……
柚葉。
もう二度と会えないよ。
膝の上の汗ばんだ手を握りしめた。
『……ミャアオン』
おねだりするような。
甘い鳴き声。
また猫って。
それどこじゃなくて……
「あ! あの!」
モニターの中。
りょうさんの姿はもう消えていた。
あっ……
沈む吐息を連れて。
椅子にもたれかかる。
真っ暗なモニターに。
りょうさんの残像が浮かんできて。
頬がゆるむ。
かっこよかったな。
指先でライターをつける仕草を真似してみる。
あっ。
私はスマホを手に取った。
りょうさんとの会話を打ち込む。
その度に。
色々想い起こして。
にやけていた。
でも――
もう会えないんだよね。
一期一会のときめきにしとくしかないか。
スマホを置いて。
冊子のページをめくる。
由緒ある家なのかは分からないけど。
古くは平安時代から連綿と続く家。
それ以前のことは、口伝で伝わっていたみたいで。
今はもう分からない。
コジマよりユナキジマに移りて。
が最初。
ユナキジマは夕凪島の昔の呼び名。
記紀の国産み神話にも登場する。
一番最後のページを見て。
「あっ!」
両手で口を覆う。
上向きの龍の紋様が目に飛び込んできた。
りょうさんのライターに刻印されていたのと似ている。
向きは違うけど。
ああ……
だから、見たことがあったんだ。
そうだ!
龍が手にしている玉に描かれているのは……
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