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巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


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2/5

予感

「君、日本人?」

滑舌のいい、爽やかな耳心地の響きが返ってくる。

「あ、はい」

「驚いた、日本の人ともつながるんだ」

「ええ、珍しいですけど」

「ふーん。君はランダムチャットよくやってるの?」

「ええ、週に2、3回ですけど」

「俺はこないだはじめたばかりなんだ」

「あの、お名前聞いてもいいですか?」

「え? ああ、でも、特に話すことないから」

画面の向こうの彼の手がパソコンのボタンを押そうと動いた。

「え? せっかくですから少しでも話しませんか? 愚痴でもなんでもいいですし、私は柚葉っていいます」

彼は少し鼻で笑うようにして。

手を引っ込めた。

そう。

フルネームは名乗らない。

身元特定されちゃったりする可能性があるから。

私も普段はハンドルネームを使うんだけど。

画面の中の彼が気になって。

本名を言っていた。

「俺、愚痴言いそうな顔してる?」

キリッとした二重。

照明のせいが。

鳶色の瞳が薄く光っている。

「いえ、ごめんなさい」

「ああ、ごめん、謝らないで、俺はりょう」

「りょうさん」

「で、なに話すの? 俺の愚痴かな」

「いえ……あるんですか?」

りょうさんは、片手を顔の前で振る。

「そりゃあ、人間だからね。柚葉さん趣味は?」

「歴史が好きなんで、本読んだり、ドラマ見たりしてます」

「へえ。歴女さんか。世界史? 日本史?」

「主に日本史です。神社仏閣巡りとかしてますよ」

「なるほど、だから後ろの本棚に書籍がびっしりなんだ」

りょうさんは、画面を指差している。

ふーん。

よく見てるんだな。

私はりょうさんの背後に視線を送る。

白を基調にした空間。

壁には写真かな?

絵かな?

額に入ったものが飾られている。

んー。

何も分かんないな。

「りょうさんの趣味はなんですか?」

「旅行かな」

「へー。いいですね、羨ましいなぁ、どんなとこ行かれるんですか?」

「柚葉さんに近いかな」

「ん?」

「歴史のある。場所を巡ってる。まあ、歴史がないところはないんだけどね」

「うわぁ。すごい」

胸の前で両手を合わせて微笑む。

きらりと心に煌めく星たち。

めっちゃくちゃ。

りょうさんのことが気になりはじめていた。

ん?

なんだろう?

イヤホンを押さえる。

何か聞こえた気がして。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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