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生存報告


 私は今、……えっと、その、生きている。

 いえ、生きてるのだけど、そうじゃない。そう言うことを言いたかったわけじゃなくて、……とにかく、頭が混乱するような出来事に襲われたの。だから、「生きてます」という生存報告をしただけで、深い意味はない。


 そして多分、彼の行動にも深い意味はない。

 ないって言って!


「……そあ、え」

「どうぞ、ごゆっくりくつろいでくださいな」

「本当、可愛らしいわ。レーヴェったら、いつまで経っても女性を連れてこないんだもの」

「……あう」

「ふふ、緊張しているステラ嬢も可愛らしいです」


 さっき言いかけたことを話すわ。驚かないでね。

 私は今、レオンハルト様の住むお屋敷に来ている。正確には、お屋敷に入ってすぐのホールに居る。

 しばらく会えないのが寂しすぎて、幻覚を見てるわけじゃないわ。だって、さっき3回もほっぺをつねって確かめたもの。全部痛かった。


 じゃなくて! 今は、こっちでしょう。

 目の前には、レオンハルト様のご両親がいらっしゃる。挨拶、挨拶しないと。


「はっ、初めまして。ステラ・ベルナールと申します。レオンハルト様に、いつもお世話になっておりまして、えっと、ありがとうございます!」

「ふふ、初めまして。ああ、本当に可愛い!」

「礼儀正しいね。レーヴェ、ちゃんと案内するんだよ」

「わかりました、父様」

「ちゃんと掴んでおきなさいよ!」

「か、母様……」


 ちゃんと挨拶できたかしら……。今の出来事なのに、何を口にしたのかさっぱり覚えていない。

 でも、そうね。レオンハルト様は、ご両親と仲が宜しいみたい。それが、とても羨ましい。

 私も、もう一度で良いからお父様とお母様にこうやって接したいな……。


 その光景にポーッとしていると、急に目の前に彼のお母様がやってきた。

 そして、間髪入れずに私をぎゅーっと抱きしめてくる。


「ひゃわっ!?」

「あ〜、可愛い! ねえ、ひゃわって! パパ、ひゃわって!」

「こらこら、レーヴェに怒られるぞ」

「ムー……。ステラちゃん、ギューくらい良いわよねえ」

「は、はひ……」

「困らせちゃダメだぞ。……では、私たちは下がりますので。どうぞごゆっくり」

「ごゆっくり〜。……ねえ、貴方。結婚式は盛大に……」


 彼のお父様はとても冷静沈着で、まるで将来のレオンハルト様を見ているようだったわ。でも、お母様はなんというかとてもお若い。態度だけじゃないわ。見た目も、どう見ても30代に見える。

 ……あれ、レオンハルト様って御年21とおっしゃっていたわよね。他のご兄弟もいらっしゃるお話を聞いていたけど……謎すぎるわ。


 私は、そんなお2人の背中を見ながらしばらくの間フリーズしていた。ってことは、レオンハルト様もだと思う。話しかけてこなかったし。

 しばらくして横を見ると、


「ごめんなさい、悪気はないんです……」


 と言いながら、顔を真っ赤にした彼と目が合った。

 その表情が、なんだかとても面白い。思わず、笑ってしまったわ。


 すると、レオンハルト様が唐突に抱きしめてくる。それがまるで「お返しです」と言わんばかりのタイミングだったから、気恥ずかしさはない。彼のお母様とは違った温かさだわ。私は、こっちの方が好きかも。


「ここに居れば、ギューし放題ですよ?」

「え……」

「嫌ですか?」

「え、あ……」

「ふふ、しばらく会えないなら、これくらいはしないと」

「……余裕ないれす」

「なくて良いですよ。そっちの方が可愛い。それより、部屋に案内します。本を読みましょう」

「はい、読みたいです」

「こちらにどうぞ」


 どうして、そんなに余裕なの!? 私は、こんな一杯一杯なのにっ!


 それに、侯爵様のお屋敷はうちとは比べ物にならないわ。別棟なんて、もってのほか。

 マーシャルに着飾ってもらって良かった。いつもの格好だったら、申し訳なくて入れないもの。


 私は、レオンハルト様と手を繋ぎながら、長すぎる廊下……多分、1人じゃ迷子になると思う。そのくらい広い廊下をゆっくりと歩いて行った。書斎にでも行くのかな。そんな感じがする。

 にしても、途中数人の使用人さんたちとすれ違って挨拶したけど……どうしてみんな瞬きをしないでこちらを見てくるの? もしかして、そういう規則があるとか!?

 侯爵家で働くのって、大変なのね……。やっぱり、伯爵家のうちとは大違いだわ。

 

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