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笑顔を見たくて



「……え? 今、なんと」

「ですから、お仕事が立て込んでしまうのでしばらく会えなくなると言いました」

「……そう、ですか」

「ごめんなさい、私の都合で」

「あ、いえ、とんでもない。仕事でしたら、仕方ないです。ステラ嬢はその歳で頑張ってるのですから、私はそれを応援できる人になります」

「ありがとうございます、レオンハルト様」


 次の日、目一杯のおしゃれをした私は、いつもの広場へと向かった。今日のドレスは、彼から一番最初にいただいたものでね、マーシャルが支度を手伝ってくれたのよ。サラシを巻いてない分、とても空気が美味しい。

 でもその代わり、今までいただいたプレゼントは全て処分することを約束したわ。せっかくくださったものだけど、それが原因でレオンハルト様にご迷惑をかけてしまったら元も子もないでしょう? ……そうね、ネックレスだけは隠し持っておこうと思う。でも、それ以外は全部……。


 レオンハルト様は、私の姿を見て褒めてくださった。「このドレスには、必ずネックレスを付けます。セットなんです」と言ったら、「とても良くお似合いです」って。それに、なんだかホッとしたような表情をされたけど……あれは、なんだったのかな。よくわからない。

 とにかく、どこかへ出掛ける前にそれを伝えられたから良かった。帰り際に言ったら、悲しくて泣いてしまいそうだったから。


「では、しばらくこうして一緒に歩くこともできなくなりますね」

「そうですね……。あの、今日ってどこへ行くか決めていらっしゃいますか?」

「特に。ステラ嬢の行きたいところにしましょうか」

「私も特にここってところはないのですが、あの、出来れば……」

「出来れば?」

「で、出来れば……帰る時にギュッてして欲しいので、その」

「帰る時で良いのですか?」

「はい……。帰る時で良いです。レオンハルト様の体温を覚えておきたくて……ワガママごめんなさい」

「ワガママじゃないですよ。貴女が言わなかったら、私が同じことを言っていました」

「……ありがとうございます」


 良かった。気持ち悪がられたらどうしようって思ったけど、彼も同じ気持ちになってくれていたのね。それだけで泣きそう。

 そうよね、こんなに優しいんだもの。ソフィーが長い間片想いしているのも、ファンクラブができるのも納得だわ。それを知る前なら幸せに浸かれていたけど、知ってしまった後は罪悪感の方が大きい。


 私は、視線を合わせずにレオンハルト様の後ろをついていく。

 今日はこっちに行くのね、いつもはあっちなのに。確かこっちは、告白の返事をした湖がある。あそこなら、人がほとんどいないから最後に抱きしめてもらえそう。何か、お菓子を作ってくれば良かったかも。


「ステラ嬢、今日は私が行く場所を指定しても良いでしょうか」

「はい。前回は、私が指定しましたので」

「では、この先で開催されている古本市に行きましょう」

「古本市!? え、本ですか!?」

「はい、いろんなジャンルの本を格安で購入できますよ」

「行きます! ぜひ!」

「ふふ、良かった。行きましょう。その後に行く場所も、すでに決めてありますが……あとでお伝えしますね」

「はい! ありがとうございます」


 古本市ですって! 嬉しい!

 ちょうど、小説が読みたかったのよね。恋愛小説とかファンタジー小説、それにミステリー! もしあったら、新しい作者を開拓しましょう。ああ、楽しみ。


 古本市に気持ちが向いてしまった私は、レオンハルト様が手を繋いできたことに気づかなかった。途中で気付いた時は、「ヒョエ!?」とか変な声を出してしまったわ。「やっぱり、気付いてなかったですね」と笑われるし……。

 でもまあ、彼の笑顔をゲットできたから良しとしましょう。



***



 古本市は、活気にあふれていた。

 見たところ、隣国の方もいるような? それほど大きな催し物なのね。


 ああ、この本の匂い! 印刷の匂いだと思うのだけど、嗅いでいると心が落ち着くのよ。これだけで、もう満足しそう。


「一緒に周りますか? それとも、別々に行動しても?」

「出来れば、一緒が良いです……。レオンハルト様が見たいところに合わせても良いですか?」

「はい、喜んで。別々にしましょうと言われたら、ちょっと落ち込んでいたかもしれません」

「ふふ、ありがとうございます。どこから周りますか?」


 古本市が開催されているところは、芝の敷き詰められた広いスペースだった。普段はここで、演奏会や寸劇が観れるのよ。私も、暇な時何度か1人で足を運んで……次は、レオンハルト様と行きたかったな。


 いえ、今は楽しみましょう。

 本よ、本! お金を多めに持ってきて良かった。


「では……小説コーナーから良いですか」

「……」

「他が良ければ、法律や専門書のところでも」

「いえ、私も小説が良いなと思っていたので、びっくりして固まっていました。まさか、異術を使ったとか?」

「そんな! 私に、記憶を覗く異術は持ち合わせていません。偶然です」

「なら良いです!」

「あはは、ステラ嬢可愛い」


 ほら、またこの方はすぐそうやって……。


 威張るような態度で、彼に向かって言葉を放ってみた。すると、予想通り笑顔が返ってくる。そうそう、今日は彼の笑顔も脳に焼き付けておかないと。


 私たちは、手をしっかりと握って古本市の中へと消えていく。



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