第62話 美味くないよ!
「はあ、はあ、まだかよ……」
どのくらい登っただろう。もうかれこれ一時間くらい経ったんじゃないか。さすがに足がプルプルする。
「伏せろ!」
ラピスの声に合わせて伏せる。頭の上を矢が掠めて行った。
ラピスは後ろを振り向きながら階段を登っている。時々下りていって何人かぶっ倒してまた登ってくる。俺はラピスを信用して背後を気にせずとにかく上を目指していた。正直ラピスがいなければあっという間に捕まっていただろう。そもそもラピスがいなければこの階段を登ることもなかったし、あの監獄から脱出することも出来なかっただろう。
「もっと早く走んなさいよ!」
頭上のリスは景気のいいことばっかり言ってるがそれに反論する元気もなくなってきたぞ。
「くそっ!まだか!」
「もう来ると思います!」
竜族の戦士たちが何か喋っている。これ以上何が来るって言うんだ。もう助けて!
「おそらくメガバーミンだろう。気をつけろ!」
なんだって?もう好きにして!
急に頭上が暗くなる。
天井を見上げた。
「ヒッ、ヒイイイ」
天井に張り付いていたのは巨大なクモの化け物だった。気持ち悪くて寒気がする。
クモと目が合った、ような気がした。目がどこか知らないけど。
ズドオオオオン!
突然クモは落下してきた。
「シイイイイイイィ」
脚を器用に使って舌舐めずりをしてるような音を出している。
「それがメガバーミンだ!気をつけろ!」
こんな化け物相手にどうやって気をつけるんだよ!
「走りなさい!」
キャサリンが言った。
「なんでだよ!応戦したほうがいいだろ!」
俺は反論した。
「バカ!応戦しないで!魔法使ったらロウソク消えて真っ暗なっちゃうじゃない!とにかく逃げるしかないわ!」
「ロウソク消さないでやったらいいんだろ!」
「そんなの出来んの?」
できるかどうかはやってみないと分からない。正直成功率は5割くらいだ。でもやらないと死ぬしかない。
「とりあえず逃げる、追いつかれそうになったら考える、それでいいな!」
「好きにしなさい!私は生き延びるから!」
頼もしいね。俺はこいつに食われるイメージしかないけど。でも俺は食ってもそんなに美味くないよ!言っとくけど!
俺は右手にイメージを固めた。さあ、いつでも来やがれ!俺は震える足で全力疾走しながら腹を決めた。




