第52話 死刑なんですけど!
「クッソ、全然引っかからねえ」
さっきからずっと女に声をかけているが全然無視されてしまう。女どもは俺なんか目もくれずトップ選手のほうへ一直線だ。トップ選手の周りは女どもとそのおこぼれに預かろうとする奴らでお祭り騒ぎだ。俺はその輪にも入れず外の方で出遅れた女に声を掛けているが無視されている状態だ。
「早くあの輪の中に入って来なさいよ!」
学校でもぼっちだった奴にあの輪の中に入ってナンパして来いって言うのはあまりにも酷なことだと思いませんか。レースってこんな過酷なんですか。
「分かったよ……」
しかしあの輪の中に入り込めないと処されてしまう。なんか実況が人生終わってしまうとか言ってたな。
「ちょっと……すいません……」
「ああ?なんだお前!」
「あっち行けよ!」
俺が割り込もうとしても爪弾きにされてしまう。
「参ったな……」
「私にいい考えがあるわ」
キャサリンがニヤリと笑みを浮かべている。嫌な予感しかしないな……。
「ちょっと動かないで!」
「なあ、これなんの真似なんだ?」
キャサリンはマジックと杖とヅラを持ってきた。そしてマジックで俺の顔に何か描き始めた。
「うーん、ちょっとこうかな……」
「なあ、何書いてんだ?あとマジックとか杖とかヅラとかさ、どこから持ってきたんだよ」
「あんたは黙ってて!」
もう好きにしてください。
「よし!出来たわ!」
最後にヅラを被せられた。満足そうな顔をしてキャサリンが言った。
「鏡ねえかな」
俺は辺りを見回してみた。
「ないわよそんなの。さあ頑張って面白いことしてなさいよ」
「面白いことってどういうことだよ」
俺はもう一度辺りを見回した。その辺りにあった鉄柱を覗き込む。鉄柱に映った自分の姿は顔中に皺が書かれたジジイのそれだった。
「おい!こんなのでナンパできるかよ!」
「あんたただでさえ存在感ないんだからそれくらいやってちょうどいいくらいよ!」
キャサリンはいつものポーズで言った。
「だいたいこれ誰なんだよ」
「茂造よ。あんた本当に知らないの」
キャサリンは呆れたように言った。
「知るか!誰だよ!」
呆れるのはこっちのほうだ。
「さあ私も手伝ってやるから。こっちに来なさい」
本当にこれでナンパできるんだろうな。出来なきゃ俺死刑なんですけど。




