第41話 帰宅!
「お父さん大丈夫かな……」
真っ暗な空を飛びはじめてどのくらい経っただろう。ポツリとリムドが言った。
「大丈夫よ。あんたのお父さんそんな簡単にやられないわ」
「そうかな……」
「ええ。だいぶ強いわよ、あんたのお父さん」
なんの根拠もなさそうだが、かと言ってここまで来るとリムドを不安にさせるようなことを言うわけにもいかない。
実際、あれから俺たちを追ってくるような気配もない。二十人くらいを相手に一人で戦って食い止めてくれているのだろうか。それほど強いということか。
「で、北がどっちか分かったの?」
「ああ、なんとか」
方位磁針は蓄光塗料が塗られているのかぼんやり光っていたので何とか北を目指して飛んでいる。
「ねえ、あんたお母さんは?」
「お母さんは僕がちっちゃい時に死んじゃったんだ」
「じゃあ、お父さんと二人暮らしなのか?」
「僕は街の学校の寮にいるんだ。お父さんは森の方で暮らしてるよ」
「そうか……。淋しくないか」
「淋しくないよ。竜族の戦士はそんなことで淋しいとか言ってちゃダメなんだ」
小さいのにしっかりしてるな。
「ところでどうやって森まで連れてこられたの?」
キャサリンが聞いた。
「寮の部屋に居たら竜族のお兄ちゃんたちが来て、お父さんが呼んでるからって連れてこられたんだ」
「でもあんた手縛られてたじゃない」
「うん。なんか馬車から降りたら急にすぐ終わるからって言って縛られたんだ」
あの竜族たちもなかなか無茶しやがるな。
「だんだん明るくなってきたわね」
そんな話をしていると東の空が明るくなってきた。結局朝までコースだったな。
うちがだんだん見えてきた。
こうして見るとうちの屋敷は丘の上に建っていて結構豪華そうに見える。
俺は家の前あたりで降りた。
「さて、ここからどうするかだな」
「はあ?何がよ?」
キャサリンは俺の頭の上から降りて腰に手を当てたいつものポーズで言った。
「いや、色々だよ」
「色々って何よ」
「いや、リムドのこととか、爺になんて言うかとか」
「何を悩むことがあるの?」
キャサリンは心底何が問題なのか分からないようだった。
「ねえ、リムド、あんたしばらくうちにいなさいよ」
キャサリンはリムドの方を向いて言った。
「えっ、でも学校もあるし……」
「学校行かないといけない?こいつは学校行ってないどころか何にもしてないわよ」
「俺のことはいいんだよ」
純粋無垢な少年にアブノーマルを教えないで欲しい。
「でも……」
「あんた誘拐されてんのよ。学校行ってる場合じゃないわ」
「でも、あの竜族のお兄ちゃんたちは知ってる人たちだよ」
「でもあんたの手を縛ったんでしょ」
「そ、それは……」
「どんな理由があったか知らないけど、手を縛るなんて普通やることじゃないわ。あんた誘拐されるのと一緒よ。お父さんが迎えに来るまでここに居なさい」
「う、うん……」
リムドは俯いた。
「あとあの爺さんに何を説明するの?」
キャサリンは俺の方に向き直って言った。
「いや、これまでのこととか……」
「何も言う必要はないわ」
キャサリンはきっぱりと言った。
「いや、でも何も言わずに出てきて心配かけてるかもしれないじゃないか」
「フン。勝手に心配させてればいいじゃない。さあ行くわよ。さすがにちょっと疲れたわ。寝かせてもらうから」
そう言ってキャサリンはアクビをしながらズンズン家の方へ向かって行った。




