第39話 口げんか!
「ラピス!何をしている!見損なったぞ!」
俺たちの前に真っ先に降りて来たのは、あのリーダー格の男だった。
「ベリル。貴様にどう思われようと構わん」
「同じことを竜王様の前で言えるのか!」
「この男を助けると決めたのだ。竜族の戦士たるもの一度決めたことは死んでも覆さない」
「き、貴様!」
ベリル以外の竜族の戦士たちが降りて来た。しかし近寄ってこない。かなり距離を置いている。上空にも何人か待機している。さっきの二の舞を踏まないように隊形を考えたんだろう。取り囲んでくれたほうが逆にやり易いんだけどな。
「その男はアズラとメノウを半殺しにしたんだぞ!」
「それはこちらが先に仕掛けたからだろう。何もしなければこの男は無害だったはずだ」
「なぜそこまでしてその男のことを助けないといけないのだ」
「リムドが世話になった」
「竜王様が決めたことより自分の子供が世話になった方を優先するのか!」
「誰が何と言おうと決めたことは最後までやり通す。一人の竜族として当たり前のことをしているだけだ」
ラピスとベリルがやり合っている間、後ろにいる竜族の戦士たちは隊列を組み始めた。ベリルを真ん中に右側にアズラ、左側にミノウが立ち、その後ろに二列横隊で構えている。前列はしゃがんで剣を持ち、後列は弓矢を構えている。上空には五人ほどが待機している。
ラピスとベリルの決着はしばらくつきそうにない。だんだん二人とも感情的になってただの口げんかになってきた。
「 さて、作戦を伝えるわ」
そんな口げんかを聞きながら、キャサリンは頭からスルスル降りてきて俺に耳打ちしてきた。
「……ということで。分かった?」
「な、何だって!?」
「バカ!声がでかいわ!」
キャサリンの作戦を聞いて思わず声が大きくなってしまった。
「お前、それ、本当にうまく行くのか?もしうまく行ったとしても……いてっ」
「他の案もないのに文句だけ言ってんじゃないわよ!じゃあね」
キャサリンは俺の頭の中に潜り込んだ。
たしかにこの状況で生きて帰ることができれば御の字だろう。俺は覚悟を決めてイメージの準備をした。
ラピスとベリルの口げんかはお互いの家族の悪口まで及ぶ場外乱闘となってきた。
「だいたい貴様のおかんの服、派手過ぎだろ!毎日結婚式でも行っているのか?」
「貴様の親父こそ昼から酒飲んで倒れてるところを何回も見たぞ!あれこそ見っともない!」
「見っともないのはお前の妹だ!短いスカート履きやがって!そんな男好きなのか!」
もう聞くに耐えない。
「なあ、これいつ終わるんだ?」
「知らないわよ。でもいいじゃない、面白いから」
キャサリンはのんびりと言った。
「でもあんた、隙は一瞬しかないからね!ちゃんと見てなさいよ」
「分かってるよ」
ラピスとベリルはハアハア言いながらまだ口げんかしてる。
そしてその時は突然訪れた。
「フン、そんな粋がってられるのも今のうちだ!これを見てもまだそんな口が叩けるのか!おい、連れてこい!」
ベリルの命令に隊列が割れて一人の子供が連れて来られた。後ろ手に手を縛られている。
「お父さん!」
リムドだ!
「リムド!!」
「今よ!!」
「爆風旋!!」
俺は思いっきり竜族の隊列目掛けてぶっ放した。




