第20話 キャサリンの長話!
「まず魔王とは何かについて説明するわ」
そしてキャサリンの長い話が始まった。
その昔、魔族には魔王などはいなくて、それぞれの地区の有力者が個別に土地を治めていた。しかし、人族が資源を求めて魔族のいる大陸に攻め込んでくるようになると、団結し立ち向かう必要があった。
そこで有力者の間で魔王を立てて、その魔王のもとで軍隊を組織するようになった。これが魔族軍の元になった。
魔族が人族に対抗するために編み出したものの一つに魔法がある。魔法には大きく分けて火属性、風属性、治癒属性の三つがある。
火属性は主に火の玉みたいなのを敵にぶつける攻撃用の魔法だ。一方、風属性は風を操って火属性の補助的な役割を担う。そして治癒属性はその名の通り傷ついた仲間を治療するために使われる。
魔族と人族の戦争は長い間続いたようだが、魔法の出現により魔族軍の優勢になり、戦争は終結した。しかし、戦争がなくなって魔族軍の存在感は、何年かに一度起こる一揆の鎮圧くらいで低くなってしまったようだ。
今、火属性は加工品の製造や工業用に使用され、風属性は農業用に雨を降らせたり、船を操ったりするために使われるようになった。治癒属性も病気や怪我の治療に使用されている。
魔王もかつては戦争に強い者が選ばれて、人族との戦いに勝利することでその支持を得ていた。しかし戦争が終結し世の中が平和になると魔王の役割も変わってしまった。戦争の強さよりもその時々の時代が求めることに対応できる魔王が選ばれるようになった。
今の時代が求めるものは戦争で減ってしまった人口を取り戻すことだ。とにかく産めよ、育てよが合言葉になっているらしい。
「ちなみに昔からの貴族と言われてる家は戦争が得意な家柄みたいね。この家も例外じゃないわ」
なるほど。それでレオンは軍の学校に行っているのか。しかし平和になったことで、その軍の存在感も低くなってきてるということか。
なお、魔王指名レースの内容は現魔王が決めることになってるらしいが、だいたいいつも同じものらしい。
「何やるんだ?」
「あんたの得意そうなことよ」
ん?得意そうなこと?なんだ?
「女の人と何回まぐわれるかで決めるんだよ」
リディアはさらりと言った。
「ちょっ、そんなの、アリなのかよ!」
「え?別に変なことかな?」
リディアは不思議そうな顔をしている。
「リディア、お兄様にまぐわいの仕方教えて差し上げて」
「うん、いいよー」
そしてリディアは立ち上がって机の中を探し始めた。何持ってくる気だよ。いいのかよ。ちょっとドキドキしてきたぜ。
「これ」
リディアが見せてくれたのは小さなイヤリングだった。
「これがどうしたんだ?」
「これ見ても思い出さないの?」
リディアはそのイヤリングを耳につけた。
「これをこうやって付けて手を繋いで寝るの。一晩経ったら精の受け渡しが終わるの」
こ、これがこの世界でのまぐわいですか。
「あ、ああ。そうだったな……」
「ほんとに分かってるのかな……。お兄様、なんか忘れてるというより知らないって感じだね」
リディアは疑わしそうな目で俺を見た。
「まあ、それを12時間くらいぶっ続けでやるってことね」
キャサリンが言った。
「ふーん、なんだ、余裕じゃねえか」
「うーん、やっぱりお兄様なんか分かってないような気がするわ」
リディアは俺の顔を覗き込んで言った。
「な、なんでだよ」
「だって、普通一晩で三人くらいが限度なのに、レースだったら一日中入れ替わり立ち替わり女の人と精の受け渡しやるんだよ。大体の人は5人以上連続でやったら血吐いて倒れちゃうよ。だからレースに出る人はみんな体鍛えたりしてるのに、お兄様全然何もしてないし。大丈夫かな」
「ああ、問題ない。実はお兄様は本気を出せば20人くらいは余裕でいける」
「うそ!そんなにできるはずないよ!お兄様はだいたい夜のまぐわいが嫌だっていつも言ってたじゃない!」
「これまでのことは忘れてくれていい。俺は今日から本気出す!」
「なんかお兄様最近本当に変だよ!なんか違う人みたい!お兄様は本当にお兄様なの!」
思わずウッと唸ってしまった。
「ま、まあ、不安にさせて済まないな。確かに熱から冷めてから色んな記憶がないのは本当なんだ。でも本当にこのままでいいと思っていないことは確かなんだ。信じてくれ」
「これまでのお兄様ならそんなこと言わないもん!あんた本当は誰なのよ!」
リディアは部屋の外に出て行ってしまった。




