第19話 作戦会議!
「で、魔王指名レースってなんなんだよ」
俺は寝ようとするキャサリンを呼び止めて聞いた。
「え?魔王を指名するためのレースよ」
それは俺でも分かる。
「いや、だからどんなレースなのか聞いてんだよ」
「知らないわよ、そんなこと。話ってそれだけ?なら寝るわよ」
「ちょっ、お前、知らないのに出るって言ったのか」
「そうよ。だから何よ」
キャサリンはケロッと言った。
「爺が生還率一万分の一とか言ってたぞ!ヤバイレースなんじゃないか?」
キャサリンはため息をついた。
「じゃあ、あんた、あの状況何とかできたの?」
「ぐっ……」
確かにあの後、みんな妙に納得したような空気になって解散になった。
「何もできないのに偉そうに言わないでよね」
キャサリンは去って行った。
次の日の朝、ペーシャがいつものように朝食を運んできた。
「お、おはようございます」
丁寧にお辞儀をして部屋に入ってきた。
「ああ、おはよう」
ペーシャはカチャカチャと皿を出したりして用意をしている。ふと見るとペーシャの目は赤く腫れぼったくなっていた。
「ダヴィド様」
急にペーシャが俺に向き直った。
「ん?どうした」
「私はもうこのお屋敷を去ろうと思っています」
「な、なんでだよ!お前何も悪いことしてないんだろ!」
「しかしこれ以上ダヴィド様にご迷惑をかける訳には参りません」
「別に迷惑なんてかかってねえよ。気にすんなよ」
「いえ、私のせいで魔王指名レースに参加されるなんて……本当に私のせいで……」
ペーシャはポロポロと涙をこぼし始めた。
「別にお前のせいで魔王指名レースに参加しようと思ったわけじゃない。いつかは家族を見返してやらないといけないと思ってたんだ。いいキッカケになったんだよ」
「でも……」
「もう、この話は終わりだ」
「ダヴィド様!」
急にペーシャに抱きつかれた。こいつもすげえいい匂いがする。俺がスンスン匂いを嗅いでると……。
「さあ、作戦会議するわよ!」
バターンと勢いよくいつもの二人が乱入してきた。
「あ、お兄様、またペーシャ泣かしてる!」
「あんたそのニヤケ面なんとかならないの。そうやって髪の毛の匂いとか嗅いでんのよ、気持ち悪い」
二人にボロカス言われるのにも慣れてきた。
「ちょっと待って。いま朝飯食うから」
「じゃあ、私の部屋で待ってるよー」
「早く来なさいよね」
そう言って二人は部屋を出て行った。
「とりあえず魔王指名レースの確認をしないとね」
キャサリンは机の上で、とある本のページをめくっている。
「これ、何の本だよ」
「よく分かんないわ。なんか魔王のことがずっと書いてあるけど」
「ところでお前、何で魔王指名レースがあるって知ってたんだ?」
「え?台所のテーブルに募集要項が置いてあったからよ。ちょっと今これ読んでるから話しかけないで」
話しかけてはいけないなら何故俺を読んだのでしょうか。一方、リディアはソファーに座っている。俺はソファーに移動した。
「なあ、リディア、魔王ってどんな奴か知ってるか?」
「いや、私は見たことないよ。メルフなら知ってるよ。なんか凄い大っきい人だって聞いたことあるけど」
「もし俺が魔王指名レースに勝って魔王になったらどうする?」
「えー。どうもしないよ。でもこの家から魔王様になる人が出たら凄いと思うよ。ここのところずっと魔王様は新しく貴族になった人からなってるから。うちのような古くからある家から魔王様が誕生したら、みんなビックリするんじゃない?」
「ふーん。そうかあ。魔王になったらどうなるんだろうな……」
ところで魔王って何するんだろう。国王みたいなもんか。政治とかするのかな。総理大臣みたいなもんか。でも総理大臣っていつも何してるんだろうな。まあ、もし魔王になれなくても少しは家族を見返せるだろうし、ペーシャのことも守れるだろう。魔王を目指すのは悪いことではない……はず。
「うん、だいたい分かったわ。さあ、みんな集合よ」
キャサリンは本をパタンと閉じて言った。




