Ep.2 「運命変化能力」
「……おっとすまない、言い過ぎてしまったな」
おじいさんはさっきの言動に対して自分へ謝罪の言葉を述べる。
「いやいいんです、自分でも雑魚すぎると思ってるんで」
僕はおじいさんを安心させるようにそう言う。
「……そういえば、お前さんの名前を聞いていなかったな。」
「トアって言います」
「トア……?今考えた名前とかではないのか?」
おじいさんは僕の変わった名前に対して疑いを持つ。
「いや本当にトアって名前なんですよ笑」
まぁ確かにRPGゲームのキャラで居そうな名前だけども。
「……そうか。すまんな、わしは今まで色々な「 転生者」を見てきたが、皆難しい名前でな……」
(僕以外にも、「転生」してここに来た人たちがいるのか……?)
僕はここがどういう世界なのか、ますます解らなくなる。
「じゃから、そんなお前さんのような変わった名前の者には会ったことがなかったのじゃよ。」
「……おじいさんは一体……何者なの……?」
「ふぉっふぉっ、それはまたの機会にでも話すとしよう……」
このおじいさん、絶対にまだ色んな秘密を隠している。
そう、僕は確信した——。
——「……そういえば、転生者ということは、この近くの街の場所も知らないのか?」
おじいさんは僕にそう訊く。
「そうなんですよ……転生してきたところがこの暗闇に包まれている森の中だったもので……。」
「なら、わしがそこまで道案内をしてあげよう。」
「本当ですか!ありがとうございます!」
——そう言われた僕は、おじいさんにこの暗闇に包まれている森の抜け方を道案内してもらうことにした。
そして歩き始めて数分後——。
「す、凄い……!ここが……!」
——「はじまりの街……!!(まぁゲームで言えばだけど)」
僕が見渡す限り、街の家などは全て赤茶色のレンガで造られている。
「まぁ、おぬしにとってははじまりの街かもしれぬな。」
おじいさんはそう優しく僕に合わせてくれた。
「ここは「スカイフィア」という街でな。「初級職者」から「上級職者」まで色んな者たちが集まる……まぁ、おぬしが言った通り、皆のはじまりの街でもあるのぅ。」
「……職者って何なんですか?」
僕は気になり、そうおじいさんに訊く。
「職者というのは、簡単に言えば職業を持った人のことじゃ。」
「……例えば、おぬしは魔法使いなどは知っているか?」
「はい、呪文を唱えて色んな魔法を扱える人ですよね」
「そうじゃ。だが、この世界では初級魔法と中級魔法、上級魔法、極級魔法と4つのランクに分かれており……、」
「4つ……。」
「魔法のランクが自分の職者ランクよりも高いのは使えんのじゃ。」
「そうなんですね……」
「他の職業も大体同じような感じじゃ。だが——」
「……ある職業だけは違う」
「……?」
おじいさんの急な険しい表情に僕は訝しむ。
「唯一、メイン職業である「魔法」「盗賊スキル」「剣士」「僧侶」「暗殺」の5つのスキルを全て合わせ持った職業、そう……その職業こそが、」
「——「勇者」 である。」
「ゆ、「勇者」……!」
その言葉を聞くだけで僕の心は揺さぶられる。
(あの2人を集めて、初めてオンラインプレイができるRPGゲームを一緒にやった時、誰が勇者になるか喧嘩したっけな……、懐かしいなぁ……。)
「勇者はな、なった者は全員、この世界の最北端にある「魔王城」を目指し、モンスターがうじゃうじゃいる全9ステージのダンジョンをクリアせねばならん。」
「そして、魔王城のボスモンスターを倒さねばならぬ。」
(そこまでしなければいけない勇者って、ラスボスを倒したら流石に何か貰えるのかな……?)
「……もし、ボスを倒すことが出来れば……?」
気になった僕はおじいさんにそう訊く。
「……これはあくまでも噂じゃが……もし、魔王を倒すことができたのなら……、」
「……何でも「願い」が叶うらしい。」
「……それって、「転生前の世界」にも戻れるの……?」
「噂の通りなら、出来るはずじゃ。「過去」にも戻れると言われている。」
なら。
もし、魔王を倒すことが出来たら……
「澄玲」と僕が「トラックに轢かれる前」へ戻れるのかもしれない。
そう思い、笑顔になって期待を膨らませていた僕だったが、
「……だが無理じゃ。」
「な、なんで……?」
「この世界の「勇者」は誰一人として、第6ステージ目すら「クリア」したことがないのだ。」
「なっ……!?」
誰も、魔王にすら会ったことがない。
少しずつ、僕の心は期待から不安に変わってゆく。
「そして、もう一つ。大事なことを言う。」
「……勇者になった者は、ダンジョンのモンスターに一度でも倒されれば——」
もう、全てを諦めたような、そんな声でおじいさんは僕にこう告げる。
「——2度と生き返ることが出来ない」
この言葉で、完全に僕の感情は期待から不安へと変わる。
けど……僕の心がどれだけ、期待より不安が上回ったとしても……、
……僕の「 想い」は。
「……解るじゃろ……?誰も魔王を倒す事など考えていないのじゃ、じゃから勇者になんて——」
「ごめん、おじいさん」
そう僕はおじいさんの言葉を遮り、続けて、
「僕——「勇者」になりたい。」
「……。」
おじいさんは黙る。
自分でも分かっている。バカなことを言っていると。
でも——、
「——元の世界に戻って、「救いたい人」がいるんです、僕。」
「この命を懸けてでも、その人のことを救いたい。」
すると。
「……なら、好きにするが良い。じゃが、わしは忠告したぞ?」
「あぁ。」
「よし。それなら、まずはスカイフィアにある「冒険者ギルド」に行ってみるといい。」
「確か、冒険者ギルドって自分の職業とかを決める場所ですよね?」
「そうじゃ。また、今の自分の「ステータスと能力の詳細」も知れるんじゃ。」
なら、あの「運命変化能力」という能力の詳細も知れるのか……!
「この先にある、赤い屋根の家のところを右に曲がれば、ギルドがある。すまんが、わしは用事があるからここで失礼するぞ。」
「分かりました!ご丁寧にありがとうございました!またどこかで!」
「またな。」
僕はおじいさんに別れを告げた後、言われた通りの道を辿る。
「……ここか」
着いた先には、明らかに他の建物とは違う、古びた看板と入り口の扉があった。
建物の名は、「イリーシアギルドハウス」
僕は古びた入り口の扉を開ける。
「……いらっしゃいませ!」
ギルドハウスの中にいた受付係の女性はそう元気に挨拶をする。
「こんにちは!あの〜、ここで自分の能力やその詳細を見てもらったり、職業が選択できるんですよね?」
「はい!そうです!」
「じゃあ早速、僕の能力を見てもらってもいいですか……?」
「わかりました!では、このまま受付カウンターでお待ち下さい!」
と、僕は言われた通りに受付カウンターで待つ。
すると。
「……えっ……?嘘……!?」
と、驚いた声を受付係の女性が発する。
僕は、
「ど、どうかしましたか……?」
と、心配そうに受付係の女性に訊ねる。
(結局、能力もダメダメだったのかな……。)
と、心配していたのも束の間。
僕は、驚愕の事実を受付係の女性に伝えられる……。
「貴方の能力……、運命変化能力は——、」
「——唯一、魔王に対抗できる能力です……!」
「えっ……?」
と呟き、僕は固まる。
唯一……魔王に対抗できる……だと……?
信じられない事実に、僕は頭の処理が追いつかない。
「あ、あの……。」
受付係の女性が心配そうに僕の様子を伺っている。
「……!す、すいません、驚きで固まってしまっていました……。」
僕はそう受付係の女性に伝える。
「そ、そうですよね……。私もこの能力を見るのは初めてなんです……」
どうやら僕の能力は、受付係の女性も見るのは初めての能力らしい。
「そうなんですね……、ちなみにこの能力ってどういう能力なんですか?」
僕は受付係の女性にそう訊く。
「……少し時間を頂きますが、良いでしょうか?」
「は、はい——!」
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——運命変化能力。
またその能力を持つ者を、「イフネーター」と呼ぶ。
この能力は、「もしも、○○○だったら」と考えて願えば、本当にその通りになる、
自分の思考と願いで、今居るこの世界で起こった結果を無理やり「IF」の世界線に変えられる能力である。
ただし、幾つか注意点がある。
まず1つ目。
あやふやな願いはダメである。
例えば、「こういう攻撃が出来たら良いのに。」
これはどういう攻撃でどういう特性に対してダメージが効きやすいかがあやふやな為、ダメである。
正しいもので言えば、「剣の斬りの技で、斬りの残像たちが炎として無数に相手に襲うような技が使えれば良いのに(自分が剣で斬った時の残像が炎となり、その残像も相手を攻撃してくれるという能力)」など。
次に2つ目。
一気に色んなことを願うのはダメである。
例えば、「回復魔法と攻撃魔法が使えたら良いのに。」
これは一気に2つの願いを叶えようとしているのでダメである。
そして最後である3つ目。
一番注意しなければならないのが。
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「願いが「壮大」であればあるほど、一度での能力の「消費回数」が増えるんです……そして——、」
そう、僕のこの能力は。
——「……「99回」しか使うことができない……?」
「はい、そうなんです。」
有限が決まっている能力なのだった——。
【Ep.3へ続く】




