Ep.1 「転生」
【Ep.1 転生】
「はぁ……はぁ……、何処なんだよここ……。」
僕は今、暗闇に包まれている森の中で彷徨っている。
ガサッ。
「……?何か聞こえたような……?」
「……まぁ気のせいか」
……うん、自分でもこれは死亡フラグだと思った。
ビュンッ!!
「なっ……何か出てきたぁぁぁ!?」
僕は出てきた「何か」の正体を恐怖でしっかりと見ることはできず、すぐさま、その場を後にするかのように逃げ出す。
僕は走りながら、後ろを少し振り返ってみる。
草むらから出てきた正体は、モンスターの……
……ん?モンスター?
そんなのゲームとか、異世界転生してないと——、
「——異世界に飛ばされたのか……!?僕……!」
僕は今頃その事実に気づく。
タタタタッ!!
「……!?スピード上げてきた……!?」
どんどんそのモンスターは近づいてくる。
「くそっ……!なんで僕がこんな目に……!!」
本当……どうしてこうなった——!!?
時は遡り……。
——僕が異世界に飛ばされる前。
「楽しみだなぁ〜。成人式。」
そう、今日は僕の成人式。
「お母さーん、じゃあ友達と先に行っておくから〜」
「分かったわ〜。行ってらっしゃい、十碧。」
「うん!行ってきます!」
僕はお母さんに聞こえるような声でそう言い、玄関の扉を開け、歩き出す。
僕の名前は"氷雨十碧"。ちょうど今日、成人になる18歳だ。
「おはよ、十碧!」
歩いていた僕の後ろからそう僕に声をかけてきたのは、
「おはよ、優希。」
幼稚園の頃からの幼馴染で、僕と同じく今日成人式に出る"綾芽優希"だった。
僕は優希と話しながら成人式の会場に着く。
着いた成人式の会場には中学校や高校で仲良くなったクラスメイト達が揃っていた。
だが、あることに気づいた優希は訝しんだ表情で呟く。
「……そういえば、「澄玲」は?」
「あぁ確かに……」
そう。僕たちのもう一人の幼馴染"古井澄玲"が会場に居ないのだ。
「ったく、人生一度の大事な成人式だっていうのに……」
優希は表ではイライラしながらも心の中では心配そうな想いも込めてそう呟く。
「……にしても変だな……?澄玲が僕らより先に会場に来ていないだなんて」
そう、澄玲はいつも僕ら3人で遊ぶ予定の時や、学校の修学旅行の時の集合などには、絶対に僕らより早く待ち合わせ場所に着いている。
「そうだよな……。何かあったのか……?」
そう優希が口にすると、会場の入口から走ってくる女子が見えた。
「ごめーん!!遅れたぁ〜!!」
澄玲だった。
けど、いつもの澄玲とは違う、凛とした、まるで人が変わったような美しい着物姿だった。
「もぉ〜心配してたんだぞ〜!?」
優希は心配そうに言う。
「ごめんごめん!メイクとか色々してたら時間管理全然出来てなかった笑」
「まぁ、間に合ったから大丈夫だ。」
「そうだな」
優希は安心した表情で僕の言葉にそう呟きながら頷く。
「じゃあ、次いつ会えるか分かんないし……」
「「「楽しみますか!」」」
僕たちはそう言って、成人式で集まったメンバーで雑談したりと幸せな時間を満喫した——。
「——結局、十碧と澄玲はこの後の食事会、来ないのか?」
優希はそう僕と澄玲に訊く。
成人式終了後、集まったメンバーで夕食にでも行かないか、とクラスのリーダー的だった奴が言った。
「あぁ。あんまり僕大人数でガヤガヤするの苦手だし、すまんな。」
「私も、この後予定があってさ!本当にごめんね……!」
「そっかぁ……、じゃあまた予定が空いてる日あったら3人で遊びにでも行こうぜ!」
優希は少し悲しそうにしながらも、すぐ切り替えていつものポジティブで元気な声で僕たち2人に心配かけないようにそう告げる。
まさかこの後、僕たち2人があんなことになるなんて、優希は知る由もないだろう——。
——帰り道。
僕たち2人はコンビニなどが立ち並ぶ道路沿いで、話しながら歩いていた。
ちょうど雑談が終わったタイミングで、僕はある話を切り出そうとする。
「……あのさ。」
そう、僕は呟く。
「……?どうしたの?」
澄玲は不思議そうな表情を浮かべて、そう僕に訊く。
「……いや、なんでもない。」
言えない。
僕が君のことが「好き」だなんて。
恥ずかしくて言えない。
今日の君の着物姿が「綺麗」「可愛い」だなんて。
「え〜なんでよ〜!それ余計気になるじゃ~ん!」
「ご、ごめんな。澄玲に言うような話じゃない気がしてさ……。」
「……んもう」
と澄玲は呟き、横断歩道を後ろ向きで僕の顔を見ながら歩き、こう話す。
「言って良いんだよ?別に遠慮なんて——」
もし、「危ないからちゃんと前を見て歩いてくれ」と言えていたら……。
もし、ちゃんと僕が信号機を見て「今赤だよ」と君に伝えられていたら……。
未来は、変えられたのかな。
「澄玲、危ない!!」
「えっ……?」
僕は咄嗟に澄玲を庇うように抱く。
——そう、澄玲の横から物凄いスピードでトラックが来ていたのだ。
僕は澄玲を抱きしめながら、トラックに轢かれて一瞬での死を覚悟した。
澄玲さえ生きていれば……と——。
しかし、僕は一瞬で死ねなかった。
苦しみながら死ねと、神は言ったのだ。
「ぐっ……なんで苦しみながら死ななくちゃいけないんだよ僕は……。」
そう呟いた後、僕はすぐにとあることを思い出す。
「……!!す、すみ……れ……は?」
苦しみながらも、大切な人の容態を見るため、僕は出血多量で今にも倒れそうな自分の身体を動かす。
そして、近くに居た澄玲を僕は見る。
「……なんでだよ……、いつものように元気な声聞かせてくれよ……!」
……神様は、僕達を見捨てた。
「……ふざけるな……!!澄玲が……澄玲が何をしたっていうだよぉぉぉ……!!」
そんな怒りと、到底理解し難い、現実の残酷さに耐えきれなかったのか、僕はいつの間にか意識を失った。
——澄玲は、僕よりも先に息を引き取っていた。
……そして、すぐに僕は目を覚ます。
「……え?ここどこだよ……?」
そう。
その目を覚ました場所こそ——。
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——この異世界の暗闇に包まれた森ってわけだ。
けど……。
「結局どうしたらいいんだよもう!!」
一生終わらない鬼ごっこに疲れ果てていた——、
——その時。
「……?」
「あれ!?今のモンスターは!?」
急に足音が聞こえなくなった僕はすぐに後ろを振り向くが、さっきまで追いかけられていたモンスターは跡形もなく姿を消していたのだ。
「……まぁ、別にいなくなってよかったか……。」
そして僕は気を取り直して前を見る。
「……!?え、おじいさん誰?」
「ふぉっふぉっ。お前さんは転生者か?」
目の前にはそんなことを口にする、ゲームで言う僧侶みたいな風格が漂うおじいさんがいた。
「あっ、まぁ多分そうですね」
僕がそう言うと、
「どれどれ……基本ステータスを見てみようかのぅ〜」
「え!ステータス見れるんですか!?」
「……?知らぬかったのか?まぁ良い、一緒に見るとしようか」
そうおじいさんは言うと、慣れた手つきで透明なタッチパネルを駆使し、ステータス画面を開ける。
「どれどれ……」
「……ふぉっ、」
「……?」
「ふぉっふぉっふぉっww攻撃力1体力1とは雑魚ステータスにも程があるぞww」
おじいさんはツボに入ったかのように笑い続ける。
「……え?」
僕はおじいさんの言っていることが理解できず、ステータス画面をもう一度見てみる。
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【ステータス】
Lv.1
トア [無職] 体力1/1 攻撃力1 防御力1 素早さ1
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「……終わってるだろ、こんなステータス」
もうそれしか僕は言えなかった。
だが、基本ステータスしか見ていなかった僕とおじいさんはこの時気づかない——。
——これから目にする、「能力」のヤバさに。
【Ep.2へ続く】




