第1章 アリス (6)
新政権の発足式典。広場を埋め尽くす民衆の前に、アリスはその姿を現しました。
かつて出来損ないと蔑まれた彼女の背中には、ドワーフの職人たちが最高技術を結集して作り上げた、精巧なプラチナの義翼が装着されていました。
工業と魔導技術の粋を結集して作られたその翼は、太陽の光を反射して神々しい輝きを放ち、彼女が人類を超越した存在であることを知らしめるのに十分な効果をもたらしていました。
「皆さん、古い時代は終わりました。これより、すべての富を国民一人一人に、平等に配分していくことを誓いましょう」
広場の隅々まで響き渡ったその演説は、アリスを頂点とする新たな体制の幕開けを告げるものでした。
それに対して民衆は、旧時代の困窮からの解放という切実な期待を込めて、大地を揺らすほどの喝采を送ったと記録されています。
アリスはその高台から、歓喜に沸く民衆を静かに見つめていました。
彼女の瞳に映っているのは、個々の感情ではなく、効率的に稼働を始めた国家という名の巨大な演算装置の歯車です。
すべての情報はアリスという一点に集約され、最適化されます。そして議会によって示される計画経済に基づいて国政が実行されるのです。
人類史上、かつて誰も成し得なかったこの画期的なシステム。それこそが真なる平等という理想を建前とした、論理的かつ合理的で、あまりにも冷徹な管理社会の幕開けでもあったのでした。




