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第1章 アリス (5)

挿絵(By みてみん)

 

 アリスによる権力掌握へのプロセスは、驚くほど慎重かつ緻密なものでした。


 精霊たちから得た膨大な機密情報を武器に、彼女はまず研究所の所長を思想的に感化。次いでその人脈を利用して、軍部の若き将校たちや、腐敗した貴族政治に不満を持つ知識人たちへと接触していったのでした。


 彼女が語る言葉は、当時の記録によれば、超自然的なまでの説得力を帯びていたといいます。


 厳密には、それは感性に訴える魔法というよりも、圧倒的に冷徹な論理的正しさであったと評すべきでしょう。


 停滞する経済を再建する数式、軍隊を最適化する運用戦術。そして既存の階級社会を打破する壮大な理想論。


 アリスの言葉は、まるで魅了の魔法を使ったかのように人々の心を捉えていきました。


 彼らにとって、アリスはもはや翼なき畸形のドラゴンではなく、荒廃した帝国を再興へと導く新時代の指導者であり、平等の象徴として神格化されていったのです。


 アリスは取り込んだ協力者たちを駒として配置し、現体制を根底から転覆させるための周到な計画を画策しました。



 統合歴一九一七年。帝都で発生した大規模なストライキを合図に、アリスの指揮下に入った軍部が一斉に蜂起しました。


 皇帝一家はすぐさま拘束され、数世紀にわたって栄華を誇った旧体制は、わずか一夜にして崩れ去りました。


 この政変は、歴史上稀に見る無血革命として成功を評価されることとなります。


 それは、アリスが精霊を通じて帝都中の通信と情報を完全に掌握し、反革命勢力の動きをあらかじめ封殺していたからだったのでした。

 

 

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