国同士の会談が始まりましたが、関係ないので寝ています
朝。
起きている。
目は閉じている。
これは寝ている。
【省エネ成長:安定上昇】
「完璧」
外の音が、また変わった。
人は多い。
言葉も多い。
だが――
今日は、重い。
足音が揃いすぎている。
声が抑えられている。
ざわめきが、意図的に小さい。
「……やめてほしい日だ」
呟く。
ノック。
「ユウトー……」
「いない」
ドアが開く。
ミリアだ。
今日は珍しく、笑っていない。
「始まった」
「終わらせて」
先に言う。
「まだ始まったばかり」
やめてほしい。
セリスが続く。
「国家間の会談よ」
「関係ない」
即答。
「関係あるわ」
ない。
「ここでやってる」
「やめて」
場所の問題が一番大きい。
「お兄ちゃん、すごい服の人いっぱい!」
「見ない」
ルナが窓を覗いている。
見ない。
「師匠……ついに世界の……!」
「違う」
リィナの震えがさらに強い。
だが。
【生活最適化:外部確認を推奨】
「……遠い?」
聞いてしまった。
「目の前」
「やめて」
逃げ場がない。
外へ。
「……多い」
いや、もう“多い”ではない。
整列。
旗。
紋章。
装飾。
明らかに、国。
複数。
「……やめて」
中央の“静止の場”。
あの円形の場所。
そこに、長い机が置かれている。
「机いらない」
「会談だからね」
ミリアが肩をすくめる。
席が並ぶ。
それぞれに違う紋章。
「……多い」
十。
二十。
それ以上。
「こんなに国あったの」
「あったのよ」
セリスが淡々と答える。
だが、空気は異様だ。
誰も大きな声を出さない。
ただ、張り詰めている。
「……戦争前みたい」
ミリアが小さく呟く。
誰も否定しない。
そのとき。
「開始する」
低い声。
一人の男が立つ。
「本日の議題は――」
言葉が続く。
だが、途中で止まる。
なぜか。
風が、止まった。
「……?」
全員が、同時に息を止めたように見える。
【無意識スキル発動:環境完全最適化】
空気が整う。
完全に。
音が、消える。
葉の揺れ。
衣擦れ。
呼吸。
全部が、均一。
「……やめて」
だが、誰も動かない。
そして。
ゆっくりと。
一人が、口を開く。
「……我が国は、譲歩する」
「……?」
ざわめきが、起きない。
次。
「……こちらも、条件を緩和する」
さらに次。
「……停戦を提案する」
「……え」
ミリアが小さく声を漏らす。
止まらない。
「……同意する」
「……問題ない」
「……賛成だ」
次々に。
争うはずの言葉が、出てこない。
代わりに出てくるのは――
「……受け入れる」
そればかり。
【誤解誘導が発動しました】
「“無為王”の前では……」
「争いは意味を持たない……」
「やめて」
やめてほしい。
だが。
机の上で、書類が動く。
署名。
次々に。
「……終わった?」
ルナが小さく言う。
セリスが目を細める。
「……終わったわね」
早い。
あまりにも。
「何これ」
ミリアが呟く。
「会談ってこんな早いの?」
「違う」
絶対違う。
だが結果は出ている。
そのとき。
アリシアが前に出る。
「本日をもって、各国は停戦に合意しました」
静かな宣言。
だが重い。
「……やめて」
スケールが大きすぎる。
「感謝します」
アリシアがこちらを見る。
「してない」
即答。
ナギも横で頷く。
「意図、伝わってる」
「伝えてない」
だが、もう通じている。
各国の代表が、こちらを見る。
そして。
一斉に、頭を下げた。
「やめて」
完全に違う方向に行っている。
【資源流入:特大】
「支援物資、後日届けます」
「いらない」
「外交権の一部委任を――」
「しない」
危険すぎる。
ミリアが笑いをこらえている。
「世界平和だね」
「違う」
セリスが静かに言う。
「止まらないわね、これ」
止まってほしい。
「……帰る」
限界。
家へ。
布団へ。
「……疲れた」
本当に何もしていないのに。
「ユウト、戦争止まったよ」
「知らない」
ミリアが笑う。
「すごいね」
「すごくない」
ルナは嬉しそう。
「お兄ちゃんすごーい!」
「違う」
リィナは涙目。
「師匠……世界を……!」
「違う」
セリスが小さく呟く。
「もう国家じゃ止まらないわね」
やめてほしい。
【省エネ成長:大幅上昇】
「いいね」
何もしないほど、全部うまくいく。
「寝る」
目を閉じる。
外は静かだ。
だがその静けさは――
今までで一番、広い。
「……知らない」
【次回:なぜか“神扱い”が始まりますが、断固否定します】




