表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

3.ガラスの靴

一曲踊り終えたら、ちょうどいい時間だった。

「ではこれで失礼します」

私は一礼すると、急いで会場を後にした。

時間を守らなければ、私は馬車を失い、かぼちゃを抱えて歩いて帰る羽目になる。

それだけは何としても避けたい。


「待ってくれ」

王子が後ろから追いかけて来る。

いやいや、こっちは急いでいるんだって!

階段を駆け降りていると、物語通り、なぜかガラスの靴が片方脱げた。

「歩きにくっ!」

仕方がないので、もう片方もポンと脱ぎ捨て、私は裸足でダッシュした。

おかげで無事に馬車で帰ることができた。

日頃の成果が実って、私は大満足だ。



翌日、ガラスの靴を手にした王家の使者が我が家にやって来た。

仕事が早い…。ちゃんと寝てるのか? ちょっと心配だ。


「この家にはご令嬢が3人いますね。全員、お集まりいただけますか」

相手は王家の使い。その言葉に逆らうことはできない。普段は家族にカウントされていない私も、父に連行された。


「殿下はこの靴の持ち主との結婚を望んでおられます。順番に靴を履いてみて下さい」

使者の言葉に、義姉たちは鼻息荒く挑むも、当然靴は合わなかった。

「そちらのご令嬢も」

と促され、仕方なく足を差し入れた。


使者は判断に迷ったのか、シンデレラの足と靴を何度も見比べた。

「う~む。ほんの少しだけ靴の方が大きいですかねぇ。残念ですが、靴の持ち主ではないようです。ではこれで失礼します」


その言葉に、私は心の中でガッツポーズをした。

(よっしゃ〜、マッサージした甲斐があった!)


そう、舞踏会に参加したあの日、私は仕事を命じられ、朝から立ちっぱなしだった。

つまり、ガラスの靴を履いた時点で、足はパンパンにむくんでいたのだ。

これではいけないと、帰宅後、念入りにマッサージをして足上げて寝たんだよね。

おかげで今日は足スッキリよ。いやぁ~効果が出て良かった良かった。



結局その後も、ガラスの靴にピッタリ合う足の持ち主は見つからなかった。

そりゃそうだ。私のむくんだ足にしかフィットしない靴だからね。


でも王子は諦めなかった。

何日たっても見つからないので、最終手段として、魔法使いを呼び出した。


「頼む。どうしてもあの時の令嬢と会いたいんだ。見つけ出してくれ」


依頼を受けた魔法使いには、心当たりがあった。

伯爵家の娘に魔法をかけ、舞踏会に送り届けたことがある。

何も好きでそんなことをした訳ではない。昔、世話になった彼女の母親と、約束を交わしたのだ。


「私が死んだら、夫は浮気相手の女とその娘を家に引き入れると思うの。そうなれば、娘は辛い思いをするわ。どうかあの子が幸せになれるよう導いてあげて」


そう頼まれていたので、王子と縁づかせてやろうと舞踏会に参加させた。

王子は令嬢の名を聞きそびれたようだが、ガラスの靴を落としていったというから、すぐに分かるだろうと思っていた。

しかし何故か彼女は名乗り出なかった。


(もしかして家族に監禁された? いや、母親が心配するような弱々しい娘じゃなかったから、それはないな。とにかく色々と確かめないとね)


魔法使いはすぐに彼女の家に行ったが、その姿はどこにも見当たらない。

「ったく、どこをほっつき歩いてるんだい」

魔法使いはブツブツ文句を言いながら、あちらこちら駆けずり回った。

そしてようやく、港で船待ちをしているシンデレラを見つけた。


「やっと見つけた!」

魔法使いは、グイッとシンデレラの腕を掴んだ。

「ビックリした。誰かと思ったら、あの時のおばあちゃん! まさかまた王宮へ行けとか言う?」

警戒して距離を取ろうとしたが、おばあちゃんとは思えない力強さで引き寄せられた。


「そのまさかだよ。あんた、何でガラスの靴の持ち主だって名乗り出なかったんだい。王子と結婚できるチャンスなんだよ」

「え〜、結婚する気ないし。これから隣国へ行って自由気ままに生きようかなと」

「無理だね。あの国は最近、治安の悪化で移民の受け入れはしていないんだよ。それにたとえ隣国に渡ったとしても、王子との契約を遂行するまではどこまでも追いかけるよ」

「そんな殺生な~。私に断る権利は?」

「ないね。諦めな」

今どきの魔法使いは、本当に横暴が過ぎる。


でも私にも意地がある。

「分かった。王宮には行く。でも条件があるわ」

私はニヤリと笑い、ある計画を囁いた。

自由を手に入れるためなら、魔法使いだって利用してやる!



私の計画はこうだ。

1回踊ったぐらいで、私の中身も知らない王子。そんな相手と結婚する気はない。

だから、多くの令嬢の中からスッピンの私を選べるかどうかのゲームをしたいと提案した。

見事、私を見つけたら王子と話す。でも見つけられなかったら、私は大手を振ってこの国から去ってやる。


それを聞いて魔女は大笑いした。

「こりゃまた、おかしなことを考えたねぇ。ははは、面白い。よし、私も協力してやろうじゃないか。どうせなら魔法で、みんなを同じ姿形にしてしまおう。難易度が上がって、より面白いゲームになるだろう?」

「乗った! 当日はよろしく頼むわ」

私たちはガッチリと握手した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ