四
――ィィィン!
閃光の羽と、燐光の粒が輪舞し弾ける。溢れる光の中で、ただ一つの影であるエリスの身体は揺れ、膝を付いた。黒き翼は萎れ、地に伏している。だが、まだ倒れてはいない。
「フルールさん!」
天使が空へと帰るように閃光が消える。と、同時に、セレスはフルールの元へ駆け寄ろうと走り出した。その姿に、フルールは叫んだ。エリスは倒れてなく、攻撃できなくなるほど傷ついてもいない。今、セレスはもう一度魔法を編まなければいけない。
「セレスちゃん、駄目っ!!」
「――っ!?」
フルールの声に、セレスは立ち止まった。だが、もう遅かった。
エリスは、翼を翻すと一気にセレスへと向かった。セレスが近づいたこともあって一瞬で縮められた距離は、エリスが攻撃するまで十分な時間を作った。
「閃光よ――っっ!?」
魔法を放とうとするセレスの首を、エリスが掴む。構成が霧散し、絞められる首を離そうと対抗するが力では敵わない。息が詰まり、すぐに意識が朦朧とする。が、絞める痛さにまた引き戻される。
「っ……っっ……!!」
「セレスちゃんっ!」
フルールは大鎌を手に駆け出した。痛む身体に叱咤激励し、地を蹴りエリスの背中へと刃を振り下ろした。だが、エリスは慌てず顔を向け、振り向きざまにフルールへセレスを投げ飛ばした。飛び上がったフルールにセレスがぶつかるが何とか受け止め、そのまま地面へと転げ落ちる。
「くぅ……っ……」
全身がばらばらになるような痛みが走る。だが、腕に抱き胸の中にいるセレスへ視線を向けて、身体がくっ付いていることも確認し、フルールはほっとした。セレスが無事だったことと、身体がくっついていたことを。
「っ……フルールさん」
咳き込み、瞳を開いて見つめてくるセレスに微笑み返しながら、フルールはすぐに魔法を放った。
「天使の風よ!」
荒ぶる烈風が近づいて来ていたエリスを吹き飛ばし、地を滑りながら遠くで膝を付いた。やはり、エリスも傷ついていた。少し前だったなら、今の魔法くらいは避けるか弾くかできていたはずだ。
だからといって、こちらが有利とも限らなかった。身体を動かすのも、魔法を使うのも限界が来ていた。今の戦い方を続ければ、エリスよりも先に自分のほうが倒れてしまうだろう。逃がすわけにもいかない。エリスを逃がせば、みんなの戦いが長引いてしまう。
チャンスは後一度きりだった。
「――セレスちゃん」
俯き、自分の胸にいるセレスを見つめ、フルールは静かに囁いた。
「任せるね」
「っ! 駄目です!」
微笑むフルールの服をセレスは掴んだ。フルールの考えが分かっているからこそギュッと服を握り、その瞳を見つめ懇願するように訴える。
「今度は私が行きます。行かせてください」
「駄目だよ。それでもし、セレスちゃんまで傷ついちゃったら、二人とも動けなくなっちゃう」
「でもっ……!」
「大丈夫」
フルールは服を握っているセレスの手を優しく握り、にこりと笑った。




