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 ――ィィィン!


 閃光の羽と、燐光の粒が輪舞し弾ける。溢れる光の中で、ただ一つの影であるエリスの身体は揺れ、膝を付いた。黒き翼は萎れ、地に伏している。だが、まだ倒れてはいない。


「フルールさん!」


 天使が空へと帰るように閃光が消える。と、同時に、セレスはフルールの元へ駆け寄ろうと走り出した。その姿に、フルールは叫んだ。エリスは倒れてなく、攻撃できなくなるほど傷ついてもいない。今、セレスはもう一度魔法を編まなければいけない。


「セレスちゃん、駄目っ!!」

「――っ!?」


 フルールの声に、セレスは立ち止まった。だが、もう遅かった。

 エリスは、翼を翻すと一気にセレスへと向かった。セレスが近づいたこともあって一瞬で縮められた距離は、エリスが攻撃するまで十分な時間を作った。


閃光よ(エクレール)――っっ!?」


 魔法を放とうとするセレスの首を、エリスが掴む。構成が霧散し、絞められる首を離そうと対抗するが力では敵わない。息が詰まり、すぐに意識が朦朧とする。が、絞める痛さにまた引き戻される。


「っ……っっ……!!」

「セレスちゃんっ!」


 フルールは大鎌を手に駆け出した。痛む身体に叱咤激励し、地を蹴りエリスの背中へと刃を振り下ろした。だが、エリスは慌てず顔を向け、振り向きざまにフルールへセレスを投げ飛ばした。飛び上がったフルールにセレスがぶつかるが何とか受け止め、そのまま地面へと転げ落ちる。


「くぅ……っ……」


 全身がばらばらになるような痛みが走る。だが、腕に抱き胸の中にいるセレスへ視線を向けて、身体がくっ付いていることも確認し、フルールはほっとした。セレスが無事だったことと、身体がくっついていたことを。


「っ……フルールさん」


 咳き込み、瞳を開いて見つめてくるセレスに微笑み返しながら、フルールはすぐに魔法を放った。


天使の風よ(ヴァン・ダンジュ)!」


 荒ぶる烈風が近づいて来ていたエリスを吹き飛ばし、地を滑りながら遠くで膝を付いた。やはり、エリスも傷ついていた。少し前だったなら、今の魔法くらいは避けるか弾くかできていたはずだ。

 だからといって、こちらが有利とも限らなかった。身体を動かすのも、魔法を使うのも限界が来ていた。今の戦い方を続ければ、エリスよりも先に自分のほうが倒れてしまうだろう。逃がすわけにもいかない。エリスを逃がせば、みんなの戦いが長引いてしまう。

 チャンスは後一度きりだった。


「――セレスちゃん」


 俯き、自分の胸にいるセレスを見つめ、フルールは静かに囁いた。


「任せるね」

「っ! 駄目です!」


 微笑むフルールの服をセレスは掴んだ。フルールの考えが分かっているからこそギュッと服を握り、その瞳を見つめ懇願するように訴える。


「今度は私が行きます。行かせてください」

「駄目だよ。それでもし、セレスちゃんまで傷ついちゃったら、二人とも動けなくなっちゃう」

「でもっ……!」

「大丈夫」


 フルールは服を握っているセレスの手を優しく握り、にこりと笑った。


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