十一
「見習いは全員、開花をして待機! 訓練生は魔法少女と共に外へ出る! 指示があるまで絶対に学園を出るな!!」
第二訓練生でもあるリオは足早に教室を回り指示を出していた。第一訓練生と準魔法少女はすでにミュゲ隊長の元へ集まっている。見習いへの連絡は第二訓練生の仕事でもあった。
混乱は治まりつつあった。だが、動揺はなくしきれていない。実戦の経験がない見習いではしょうがないと見なければいけないのだろうが、リオは苛立ちを隠しきれていなかった。今後の状況によっては見習いでも戦わなければいけない。だが、戦えるかどうか、戦えばどうなるか……その判断は難しかった。上級生である高等生ですら、訓練生との差は如実にある。実戦という経験は大きい。
(こんなので、戦えるの?)
中等生や初等生であれば尚更だ。あの生意気な初等生でも期待はできない。実戦でどれほど使えるかは当てにならない。
ミュゲ隊長の時代のようには、『エリスの災い』の時のようにはできないだろう……自分も含めて。その苛立ちもある。使徒と戦うことなど、まだ自分にはできない。
「リオ」
後ろから呼びかけられ、リオは振り返った。
些かも動揺していない、冷静で真っ直ぐな視線を向けてくる長い髪の少女。魔法少女と成ったヴィオラは足早に近づき、リオへ静かに呟いた。
「初等生がいない」
「なんですって? くそっ、ほんとにあの子たちはっ!!」
苛立ちがもう一つ加わり、リオは積もった感情を一気に吐き出した。時間がないこの状況で、本当に余計なことしかしない。
だからといって、放っておくわけにもいかなかった。外にでれば戦いの邪魔にしかならない。校舎内でもそうだ。連絡が行きかう場所でうろうろされたらかなわない。戦いが長引けば、学園は臨時の避難場所にもなる。早急に連れ戻さなければいけない。
「聖堂の方へ行ったそうよ。見た見習いの子が教えてくれた」
「聖堂に? 何だってそんなところに」
「とにかく行ってみましょう。聖堂といっても、見習いの子たちが一箇所にいないのは危険だわ」
「そうね、急いで捕まえないと」
疑問は残るが、悩んでいる時間もない。戦いは始まっている。従僕の数が分からない以上、自分たちも急いで行かなければ。
リオは朱色の装束を翻すと、聖堂へ向かい足早に歩き始めた。校舎には静けさが戻りつつある。それだけに、学園周辺の混乱の声がよく聞こえてきていた。




