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十九

「…………」


 ――訪れる沈黙。そんな中、誰もがシェオルの言動と行動に疑問を覚えていた。

 入学を希望しているにも関わらず、まるで魔法少女を否定しているような態度――自分の力に自信があるといっても、まさか魔法少女よりもすごいということを証明したくて入学を希望してきたわけじゃないはずだった。何故なら水晶という結果が出てしまっている。単なる英雄願望だけで魔法少女とは異なる浄化を生み出し、命の危険すらある魔女の従僕との戦いができるとは思えなかった。

 それ以前に、英雄願望などというような心では浄化を発現することはできない。純粋なる優しさがなければ浄化はできないのだ。浄化が使えるということは、自身の心の純粋さを証明したことにもなる。


「――あなたの経験は認めます」


 数秒の沈黙の後、セレスは一度瞳を伏せ軽く息を吸うと、すぐに顔を上げ先程よりも言葉に力を込めながら一つ一つ話していった。


「しかし、入学し学生となる以上、実践をさせるわけにはいかない。いくら経験があっても、それを許すわけにはいきません」

「分かっています。もちろんすぐに実践で戦わせてくれなんていっているわけじゃありません」


 セレスに一歩も退くことなくシェオルははっきり答えると、更に言葉を次いだ。


「ただ、力があるのに戦うべき時を迷えば取り返しがつかなくなる場合だってあります。その時のみの力の使用は許してください」

「…………」


 シェオルの雰囲気に圧されたわけではないだろう。だが、セレスはもう一度沈黙した。


(お母さん、シェオルさん……)


 考えてみれば、確かに異常なことではあった。魔法少女でもない十二歳の少女が、学園長であり聖女であるセレスと何の気負いもなく対等に話している。いや、対等どころか否定し自分の意見を通そうとまでしていた。

 最初からそんな雰囲気をシェオルは持っていた。そのことにセリッサは改めて気付く。

『間違いなく』というのはおかしい。だが、間違いなくシェオルは強かった。力だけではない強さ。誰にも崩されることのない、ぶれることも迷うこともない強さ。その強さを持っている。目の前の、自分と同じ十二歳という幼さの少女は。


「……許すわけにはいきません」


 シェオルの強さには、会話をしているセレスが一番気付いているだろう――セレスの話し方を見ていても、それは分かった。入学もしていない十二歳の少女の反抗的態度というだけでは対応できないようになってしまっていた。

 だが、だとしてもシェオルの言葉を認めるわけにはいかなかった。そして、自分の態度が揺らぐわけにもいかない。

 そう自分に言い聞かせながら言葉に強さを込め、セレスは静かに口を開いた。


「あなたが戦うときは、それは私を含め魔法少女全員が戦う時です。それ以外では許しません。学生であり見習いであることを理解しなさい」


 静かに重く続ける。シェオルの強さを断つように、内に鋭さを込めたまま。

 セレスの、聖女のここまでの言葉を受けて、納得しない人間はいない。魔法少女ならば、誰もが従わざるを得ない。


「分かりました」


 だが、シェオルは魔法少女ではない。魔法少女とは違う力を持ち、そして、その力が揺らぐことはなかった。

 だからだろう。セレスの視線と言葉を受けて、にこりと微笑んだ。


「シェオル・ハデス! あなたはっ――!!」

「シュム」

「っ! しかし、学園長っ!」

「いいのよ、シュム」


 あまりのことに声を上げるシュムをセレスは短く治め、シェオルとセリッサにそれぞれ視線を向けた。


「学園の説明と入学の手続きをします。ついてきなさい、シェオル。セリッサ、あなたも一緒に」

「はい」

「……はい」


 同じ返事を、それぞれの想いを持ちながらシェオルとセリッサは応える。

 それ以上の話はなく、セレスはティスとリップに後の処理を頼むと、すぐに歩き始めた。

 その後ろをシュムと、少し遅れてシェオルも歩き出す。そして、母とシェオルの背中を見つめて、セリッサも歩き出した。

 不思議な沈黙があった。だが、それも当然だろう。シェオルの態度を見て、怒りを覚えない魔法少女はいないはずだった。

 セリッサも複雑な気持ちはある。でも、その中には――


(他の人は、怒るかもしれないけど)


 不安と悲しさがあるセリッサの気持ちの中には、何故か安心と嬉しさも混じっていた。


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