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風砂の王国  作者: 藤木一帆
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終章 《 真実 》

ほぼおまけの章です。なんとなく、後日談的なものです。

さらりと読めますので、気楽にお楽しみください。

終章 《 真実 》

 

むかしむかし、あるところに、それはそれは美しい青年がおりました。

彼はハーフエルフだったので、村の皆にいじめられていましたが、彼はとてもボケていたので、まったく自分がいじめられているという自覚がありませんでした。

そんなある日、世界に突然『モンスター』があらわれて、世界は大変なことになりました。

彼はぼけていましたが、とても剣の腕が強く、またすばらしい魔法使いでした。

街の人々は、ちょうどよいので、この青年を『モンスター退治』にだして、そのまま殺されてしまうのがよいだろう、と考えました。

青年は、街の人々に、困っているから『魔王』を倒してくれと頼まれて、あっさりとそれを引き受けると、皆に見送られて、一人『モンスター退治』の旅に出たのです。

彼は旅をしているうちに、『アガス』という街につきました。そして、そこで『魔王』が暴れているということを知り、そして、その『魔王』を倒す勇者を募集していることを知りました。

『モンスター退治』のついでに、と思った青年は、そのまま『勇者』に志願し、どういうわけかあっさりと合格してしまいました。

青年は、再び『魔王』がいると言われている『イリナ』に向けて旅に出ました。

一方、『魔王』です。

実は、『魔王』は本当はとても優しい人でした。世界を滅ぼそうとしていたのも、本当は『魔王』ではなかったのです。ですが、すっかり悪者にされてしまい、とても悩んでいました。

そんな時、部下の魔族に、息抜きに遊んでいらっしゃいと言われて、『イリナ』のお隣の『テスカ』の街に、人間に化けてハイキングに出かけたのです。

その途中のことでした。街道に、一人の人間が倒れているのを『魔王』は発見したのです。『魔王』は驚いて、慌てて彼を助けてびっくりしました。それはとてもとても美しい青年だったのです。

『魔王』は、急いで『イリナ』へ青年を連れて帰り、手厚く看病しました。

この青年は、あの『勇者』とされた青年でした。彼は街道の途中で路銀と食料が尽きて、行き倒れてしまっていたのです。

彼は『魔王』の献身的な看護とたくさんの食べ物を食べて、すぐに回復しました。そして、助けてくれた人が『魔王』だと知って、とてもとても驚きました。

なぜならば、『魔王』は大変美しい女性だったからです。青年は、自分の正体と目的を正直に彼女に告げて、そして『とどめの一撃』を放ちました。

「僕はあなたに一目惚れしてしまいました。世界を支配するなんてやめて、僕と結婚しませんか?」

彼女は答えました。

「もちろんです。私もあなたに一目惚れしたのです」

こうして『勇者』は見事『魔王』を射止め、二人は結婚し、青年は『魔王』が作った首を持って『アガス』に帰り、魔王が作り上げた戦いの様子を事細かに説明しました。

『アスティナ』の国王はたいそう喜んで、彼に褒美として砂漠の土地を分け与えることにしました。

こうして、砂漠に『ドナウブ』という国を建てた青年は、『魔王』と暮らすためにその国を結界で封じ込めて、いつまでも末永く幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし……。


その言葉の終わりと共に、誰ともなしに拍手が巻き起こった。

「ダリュスさま~、お話面白かったあ!」

子供たちの無邪気な声に、ダリュスが目を細める。

「やあ、ダリュス。また『本当の昔話』かい?」

柔らかな声に、ダリュスはぱっと笑顔を浮かべて振り向いた。そこには、ソナウがウェブを従えて立っている。

「おお、ソナウ。久しぶりじゃの」

そう言って、ダリュスは顔を緩めた。

あの事件から、一ヶ月ほどが立っていた。一度解いた『結界』の修復維持と、今回の事件のためにあちこちに張り巡らした『小細工』の後始末やらなんやらで、ダリュスもソナウも、そしてコルンやウェブやルナティスアまで、あちらこちらを駆けずり回っていたのである。

ダリュスは『魔界』へと一旦赴き、そこで強制送還されたガシュー達を確認すると、『魔王』としてそれぞれに罰を与えた。その作業もようやく一息つき、今ダリュスがいるのは『ドナウブ』の城下町である。

ダリュスは事件の前にいつも行っていたように、街の広場の一角に子供たちを集めると、『本当の昔話』の話をしていたのだ。

「やれやれ、ってとこだね。こっちの後始末も終了したよ。外の世界には、街の消えていた理由を、自然現象の暴走、という一言で片付けてきたからね」

「……もちっと、ましな言い訳をせえよ……」

ソナウの能天気な一言に、思わず突っ込んでおいてから、ダリュスは笑った。

「ま、お主らしいの。ルナティスアはどうした?」

「ルナス? あの子なら、外の世界を回っているよ。本来の目的を果たすためにね。そうそう、あと、サラをこっそり見てきたけれど、何かに怯えたように、部屋に閉じこもっていたよ。『アガス国王』にも尋ねてみたけど、さすがに当分は動き出さないだろうね」

そう言って、ソナウは笑う。

「……そうか。偵察ご苦労じゃったの。それはそうと、ソナウ。ちと聞きたいことが。子供たちよ、ちっと待っておれな」

そう言い置いて、ダリュスはソナウに耳打ちするように、小声で聞く。

「……コルンのことなんじゃが」

「ああ……なるほど」

ダリュスの言わんとすることを瞬時に理解して、ソナウと、側に控えていたウェブも、頷く。

「あの砂漠での、最後の戦いですね。コルン様が何をしたのか、ってことでしょう?」

ウェブの言葉に、ダリュスが頷く。

「正直、わしの力でも、あの『砂煙』を払うことが出来ず、何が起こったのやらさっぱりわからなかったのじゃよ」

その言葉に、ソナウが苦笑した。

「……なんてことは、ないんだけどね」

そう前置きして、彼はあのとき、コルンが何をしたのかを説明した。

「コルンはね、あの砂塵に紛れて、まずガシューに一太刀。その後、一気に砂漠をものともせずに駆け抜けて、サラの目の前の奴を一太刀、反撃する残り二人に対して、返す刀で一人、対峙して幾度か剣をまじわせて、さらに一人。で、サラだ。彼女は本当に曲者だったよ」

そう言って、苦笑する。

「あの子は、素晴らしい魔法使いだね。コルンの勢いに怯みながらも、最後の一人と戦っている時に、コルン一人を狙ったピンポイントの『浄化魔法』を使ってきたよ。コルンが『魔族』の血を引くから、それが効くと判断したんだろうね。ま、効かないんだけど。それに、隠していたみたいだけど、剣術も相当なものだったよ? コルンと何度か打ち合っていたからね」

その言葉に、ウェブが補足をするように呟く。

「あのコルン様の剣を受けて、よろめきつつも少しは持たせましたからね。まともに相手にしていたら、普通の剣士なら負けてますよ、あれ。サラさんも相当自信があったみたいですが、コルン様のあまりの強さに、かなり恐怖したようです」

そこまで聞き終えてから、ダリュスは大きく一つため息をついた。

「やはり、末恐ろしい奴じゃの、あやつは」

「うん。しばらくは、『封印』を強化してやらないとね。僕もびっくりした。まさか殺さないとは思いつつも、止めなきゃいけないかもと思って、僕まで『砂の剣』を出したし。しかも最後は、相手を殺さずにあんなに簡単に『魔界』とのゲートを開けて、しかも四人一度に送還しただろ。剣の腕もだけど、魔力はもっと洒落にならないよ。『返還』も『召還』も、僕やダリュスにさえ、ものすごい高度で難しい魔法だってのに、あんなに簡単にやっちゃうんだもの」

ソナウも、そう言ってため息を落とす。

実は、コルンの『イヤリング』と『サークレット』には、強力な『力の封印』と『魔力の封印』の魔法が、ダリュスとソナウによってかけられているのだ。

コルンは、その事実を知らないし、なにより自分の額にソナウと同様の『紋章』が出現することすら知らない。当然、その紋章が『リバース』であることも。

この『リバース』の紋章は、おそらく『ダリュス』の『魔族の紋章』の影響だと思われているのだが、詳しいことはダリュスたちにも分らない。ただ、コルンの力が、ダリュスよりもソナウよりも勝っていることだけは、確実なのである。

「まあ、とりあえず知らないうちは良いわ。今のうちにあの力をうまく利用して、こういう輩がまた出てきた時に、撃退するには実に心強いでの」

ダリュスの気楽な一言に、ウェブとソナウは顔を見合わせて苦笑した。まあ、これくらい気楽に考えたほうがよいのかもしれない。

「さあて、謎は解けた。さて、子供たちよ、待たせたのう。もう一度、さっきの話を聞きたいか?」

くるりと子供たちを振り向き、にっこりとダリュスが笑って問いかけると、子供たちから歓声が巻き起こる。

「よおし。では話してやろうかの。めでたしめでたしの昔話じゃ」

ダリュスがそう言って、話を始めようとしたその時だった。

「なんにもめでたくなどないわーーーーーー!!」

いきなり叫び声が周囲を切り裂き、だんだんと地団駄を踏む音が響き渡った。その声と音に驚いて、子供たちがきょとんとして後ろを振り向く。

「ダリュス! 頼むから街の子供たちにとんでもない昔話を吹き込むんじゃない!」

声の主はコルンだった。鬼のような形相でダリュスを睨み付けているその風貌は、たった今旅から帰ってきたのか、砂塵マントを身に纏い、少々薄汚れた格好をしている。

「おお、ご苦労じゃった、コルン。帰ってきたということは、後始末は済んだということじゃな。それにしても、何を怒っておるのじゃ。わしがしているのは、実際本当の話ではないか。のう、お前たちもいいお話だと思うよなあ?」

子供たちに向けてダリュスが尋ねると、元気に子供たちがはあい、と返事をする。

「馬鹿者! お前もしこのことが世界にばれてみろ。袋叩きどころじゃすまないぞ!? 下手すれば、今まで築き上げてきた全てが崩壊して、『ソナウ教』なんか造られてるの外の世界なんか、大パニックだ!」

……実のところ、『ドナウブ』が世間に出てこられない理由の大半が、この真実がばれるとまずい、ということだったりするのだが。

「それにだ! 母上がまた『勇者の英雄譚』を正しく広めるために、旅に出ているじゃないか! いい加減いつまで嘘を通すつもりだよ!!」

そう。ルナティスアが旅に出ている理由。それは、偽物の『勇者の英雄譚』を世の中に浸透させ、ダリュスが広めたものと間違って伝わっている部分を、事細かに訂正させるためなのである。サラが狙いをつけた『最初の街』で『吟遊詩人』を使って魔力を振りまく作戦に出たのは、実はこういう目的があったためでもある。

そういうわけで、正直コルンたちは、いい加減平和になった『アスティナ大陸』全土に、『ドナウブ』の存在を知らせたいとは思っているのだが、これだけ恐ろしい嘘をつき続けている以上、とてもではないが、公表できないでいるのだ。

しかし、諸悪の根源であるダリュスとソナウは、全くお構いなしである。

「まあまあ。大丈夫だって。この『本当の昔話』が広まったとしても、絶対誰も信じてくれないから」

ソナウの能天気な言葉に、ダリュスも頷く。

「そうそう。まあ、どのみち苦労するのは主ら子孫だけじゃしの。わしは、裏から世界は操れるし、好き勝手に世の中を平和にするために『支配』しておるし、なによりソナウと一緒にいられるからの。わしは幸せじゃ。よって問題ない」

そのあまりにも無責任で、いい加減なダリュスの言葉に。コルンが、小さく肩を震わせた。

その様子を見て、慌ててウェブとソナウが耳を塞ぐ。その様子をダリュスは、笑って見ていた。

そして。

「いい加減に、しろおおおおおおおおお!!!!!」

抜けるような青空の元、コルンの絶叫が虚しく響き渡っていった。

これにて「風砂の王国」完結です。長い間お付き合いいただきありがとうございました。

随分おかしなところが残っている気がしますが、もう気にしないことにしておきます。

元々は、この終章の最初の部分の「おとぎ話」が最初に出来上がり、そこから肉付けしていったお話になります。

よくこんなすっとんきょうなお話から、こんな大長編まで発展したもんですよね……バカかな自分。


実はこれ、「ルナティスア」側からみたスピンオフも考えております。多分すごくしょうもないタイトルで、しかもひどい内容で。また機会があればお目にかかれればと思います。

ひとまずこれにて終幕。ありがとうございました。

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