サトウ国
「ナナミ、ナナミ!口開けてどうしたの?」
「ふぁ……?」
サトウ国に向かう馬車の中、レノックスから声をかけられ自分が呆けていた事に気がついた。
「朝食の時からおかしかったけど何かあったのかな?」
私どれだけ声を掛けられていたんだろう。気付かなくて申し訳ないけど、作ったような微笑みがちょっと怖いよレノックス。
「あ……」
「ソウタと何かあったんだね?」
「うー……」
こくりと頷くと、レノックスはやっぱりと言わんばかりに頷いた。
「話聞くよ」
レノックスの張り付いた笑顔が怖いけど男性の意見を聞いてみたいかも。
「えと、男として心配ってどういう意味だと思う?」
「ソウタに言われたの?」
「うん」
「んー、ナナミをレディーとして見ているっ事だね。ズバリ、ソウタはナナミの事が好きって事」
私の勘違いじゃないの?男性目線でもそう思うの?!そうなら嬉しい!でも。
「でも、蒼大にはこの世界にくる前に好きな子がいたの……」
ああ、それを考えるとモヤモヤ。
短い期間で心変わりされると——また他の誰かに出会ったら心変わりされそうで怖い。
前に、そういう事があったから。
告白されたわけじゃないし、勘違いかもしれないけど。
て言うか頭の中が蒼大でいっぱい過ぎて他の事が考えられないよ。
「ナナミ、ナナミー!」
「あ、ごめん」
ずっとこんな感じが続いた。ごめんレノックス。
船に乗っても毎日蒼大の事しか考えられなくて旅路を楽しむ余裕がないと言うか、レノックスとちゃんとお話出来る余裕はできたけど、脳内に小さな蒼大が住み着いた。
何をするにも脳内蒼大と一緒なの。
なんて乙女モードになっていたけど、サトウ国に着いたら目が覚めたと言うか。乙女が吹っ飛んだ。凄すぎて!
船を降りた瞬間に漂ってきた懐かしい匂い。これは……お線香?
それに、国境の警備に当たっていたのは騎士ではなく着物を着たお侍さん。
髪の毛はちょんまげではなく、ロン毛で縛っているとか、普通のヘアだったりだけど。
カッコいい!渋過ぎる!
まずそこでテンションが上がり、いざ入国すると古き良き瓦屋根の日本家屋風建物が建ち並んでいた。
「凄い、凄い!ここ日本だよ!」
「アハハ!ナナミのその反応!やはりこの街はニホン風なんだね?」
「うん!」
目に飛び込んで来る温泉マークが描かれた暖簾。
木製の看板に「こんびにえんすすとあ」と書かれたお店に思わず笑いが漏れてしまう。
「あはは!凄いー!」
佐藤さんはかなり昔にこの世界に来たと聞いていたけど、コンビニのある時代から来たんだ。時間軸がぶれているのかもしれない。
街行く人は残念ながら全員着物じゃないけど、日本もそうだから違和感がない。
街並みを見て笑顔全開でいるとレノックスが目を細める。
「ここサトウ国は初代サトウ王が1から作り上げたんだ。文化も建物も衣服も食事も独特の進化を遂げていて、色んな国の王族がお忍びで遊びに来るくらい人気なんだよ」
日本風が人気と聞いて誇らしい気分。食事も独特と聞いてハッと浮かんだ。
「もしかしてお米ある?ご飯、白米!」
「ああ、サトウ国の主食はお米だよ」
思わずガッツポーズ。
頭の中で蒼大が笑顔でおにぎりを食べ始めた。うん、お土産はお米にしよう!




