っす!
夕食が終わり、私の部屋でホットミルクを飲みながらサトウ国行きを切り出すと蒼大の心配性がまた発動したみたい。
蒼大は顔を歪ませた。
「俺も行く」
「蒼大は騎士団の訓練があるでしょ?」
「休む」
「駄目だよ、入ったばかりなのに」
「じゃぁ辞める」
「は?何言ってんの?」
あんなに歓迎されてすぐ辞めるなんてあり得ない。
「1人じゃ危ないだろ?」
「1人じゃないよ?レノックスも一緒に行くって」
「尚更心配なんだけど」
「なんで?レノックスが一緒なら護衛もいるって事だよ?」
「そー言う問題じゃ……」
蒼大は思い切り溜息を吐いて首を振る。
これいつもの押し問答になるパターン。
「だってレノックス七海の事口説いてたよな。七海がこの世界に来たのは僕と出会う為だったとかクサいセリフ吐いてただろ?」
「いや、アレ多分この国の初対面の礼儀だと思う」
「んなわけねーだろ!」
「だって今日2人の時間もあったけど何も言われてないよ?」
「作戦だったらどうする!?」
本気で嫌そうな蒼大に違和感。私が誰かに口説かれたら嫌って事だよね?
「なんでそんなに必死なの?」
問いかけると蒼大の顔が一気に固くなった。
「それはあれだ……」
「なに?」
「俺は七海の事が……」
言いかけて言葉を濁し口を結んだ蒼大。
なんなの?こんなのまるで私の事が好きみたいじゃない!いや、まさかね。だって告白しようとした好きな子がいるんだから。勘違いしちゃダメ!
「心配だから……」
少しの間の後言葉が続いた。ほら、一瞬期待した自分がホント馬鹿。蒼大は心配性だって嫌と言う程分かってるのに。
「とにかく!蒼大が騎士になるって自分で決めたみたいに、私も自分の事は自分で決めたいの!心配するような事は絶対にないから」
「分かった。でもサトウ国でまた寂しくならねぇ?寝れねーって言ってレノックスと同じベッドで……」
「レノックスと一緒に寝るわけないじゃん!もう1人で寝れるし!今日も1人で寝てみせる!」
「え……」
蒼大は思い切り肩を落とし部屋に戻っていった。
心配かけて申し訳ない気もするけど、私もこの世界で生きる道を探したいから強気で行こう。
今日もベッドの上に用意されていたネグリジェに着替え寝転ぶと、しんとした空気に後悔の気持ち膨らんでくる。
勢いで言ったけど、今日は寝るまでいて貰えば良かったかな。明日から甘えたくても近くにいないのに。
暫く蒼大の「っす」が聞けないんだ……
後悔した気分のまま離れるのは嫌だ。
そう思い、起き上がってバルコニーに出た。でも初日と違ってバルコニーに蒼大の姿は無い。
「蒼大」
呼びかけるように声を出してみるけど聞こえる訳がないよね。
私も飛び越えて行けたら良いけど、そんな身体能力はない。かと言ってドアから堂々と訪ねるのもなんか違くて。
蒼大、出て来てくれないかな?
そう思った時、テレパシーが通じたのか蒼大の部屋の窓が開いた。
叱られた子犬みたいにしょぼんとした表情でバルコニーに出て来た蒼大だったけど、私の姿を見た瞬間口と目をまあるく開けた。
「七海!」
「さっきはごめ……」
「ちょっと待ってろ!」
蒼大は叫ぶと部屋の中に戻りすぐに出て来た。
「良いの無かった。とりあえずこれ」
差し出されたのは騎士服の肩マント。
「マントがどうにかしたの?」
蒼大は何も答えず自分の胸元をポンポンと叩いた。
あ。分かった。今日用意されていたネグリジェは昨日までと違い胸元が開いたタイプのネグリジェだ。
わざわざ持ってきてくれたのでマントを肩からショールのように羽織る。
「別に平気なのに」
「俺が平気じゃない」
「蒼大って凄く真面目だし心配性だよね」
「だって誰かに見られたらどーする?」
こんな夜中に、こんな細かいところまで気にしてくれる人が他にいるだろうか
「蒼大ってお父さんみたい」
「お……お父さん?俺が……おとうさん……」
「蒼大?」
お父さんと言われたのがショックだったのか絶句した蒼大。ちなみに絶句してもカッコいい。
「なんでお父さん……?」
「心配性だから」
蒼大は困ったように何回か頭を掻き短い溜息を吐いた。
「俺は……お父さんじゃなくて、男として七海の事が心配なんだけど」
言い終えてみるみる赤くなっていく蒼大の頬に私の心臓がドクンと大きく高鳴った。
「……それは、どー言う意味?」
「それは、言葉の通り……あー、だめだ。もう寝る!おやすみ」
「お、おやすみ」
蒼大は真っ赤な顔をして部屋に戻っていった。
男として心配って……まさか?
顔真っ赤だったし。
いやいや、また勘違いしたらダメダメ!でもじゃあ、男としてってどう言う意味なの!?




