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エチュード

まもなく開演となります。

東京郊外にある、音坂町。ここに住む人は皆音楽を愛し、四六時中…は言い過ぎか、ほとんどの時間を音と共に過ごしていた。とにかく、日常が音楽に溢れているということだけは確かだ。

自己紹介が遅れたけど、僕は卜音楽叉(うらおとらくさ)。この音楽の町で普通の私立高校に通っている。

実は僕の家系である卜音家は代々音坂に住み、非常に価値のある再生芸術を数多く残している、人から見れば由緒正しき一族。つまり僕はお坊ちゃんなのである。実際父は世界的に有名な作曲家でヴァイオリニストである卜音鍵造。母はこれまた世界的なオペラ歌手の卜音真由美。親戚までも逆に音楽関係じゃない方を数えた方が早いくらいな音楽一家なのだ。

そんな音楽に愛された、いや若干洗脳されている家に生まれ落ちてから三年後、僕は父からはピアノと作曲を、母からは歌唱法を叩き込まれ、部屋には自分のピアノと防音工事までしてある。いろんな意味で僕は彼らにとって箱入りらしい。

教室に入ると、男子達から「よう、ベートーヴェン!」と挨拶される。因みに何故ベートーヴェンなのかというと彼と誕生日が一緒なだけ。別に耳が聞こえないとかそういうことではない。こんな風に同学年の奴らからは割とちやほやされる、家柄もあるだろうけど。悪い気はしない、むしろカモンだ。

そう来たら今度は、授業はどうなのかという疑問に移るだろう。まあまあといったところだろうか、別に苦手もなくついていけている。

そんな中でも、(当然といってしまえはそうなんだけど)音楽の授業だけは対応が違う。指名されて歌えば、一瞬にして周りが静まり返って拍手に包まれる。教師によると、まず表現能力が化け物級らしく音域も充分すぎるらしい。自分も裏声が女体化してる自負もある。でもそれはコンプレックスだからあんまり言って欲しくない。授業がコンサート化するのも恥ずかしい……

こんな感じで悩みもあるけど、高校生活を楽しんでいる模範的な優等生、それが僕だ。……あくまでも、学校の中では。



「ただいま〜、さぁて、今日も推しを崇め倒しますか!第2部、開演!」

塾から帰るなり靴を脱ぎ捨て、自分の部屋に駆け込みまるで子供のようにテレビに釘付けになっている少年……これが家での『俺』だ。

因みにテレビに写っているのは男性が一般的に好きになるようなものではない。女性向けの日常系深夜アニメ。そう、俺、卜音楽叉は完全な腐男子なのだ。

「はぁ、今月も自重できそうにないな。しょうがないなぁ、だって尊すぎんだもん!」

ここだけの話だが、部屋には自分のハマったアニメのグッズが所狭しと並んで、パソコンにはTUNELOIDが入っている。典型的なオタク部屋がここにあった。ここに毎月のよう新入りが入ってくるので財布は大体カツカツである。でも大満足だ。

俺は思春期に入ってから家の伝統とやらに嫌気がさし、自分のやりたい事に精を出すようになっていった。推しに貢ぎ、自分の聞きたい曲を書き、それをTLに歌わせ、いつか歌い手になってセルフカバーすることが今の夢だ。というか少し最近まで声優になろうとまで思ってた。……こんな今まで伝統を掛け離れた息子を世界中を飛び回っている両親は知る由もないだろう。家の中には由緒あるお坊ちゃんのアイツとは他人のやりたいことを愚直にやってみせる本来の俺がいるのだ。

今なら大声で胸を張って叫べる。ずっと言いたかったあの言葉を。

『腐った神童で何が悪い!』


「お前はわかってくれるよな、ベアちん?」

ベットに座っている相棒のテディベアに同意を求めて眠る俺の顔は自分で言ったら駄目なんだろうけど、今までにないほど晴れ晴れしている筈だ。まるで音符が跳ねるように。

これから、自分という名の組曲を作曲している始終を皆さんにお見せしようと思う。

腐った神童の組曲、お耳に挟む程度で聞いてくださればこれ以上嬉しいことはない。



卜音楽叉(ウラオトラクサ)

一人称僕、俺(素、思考内)

年齢17歳

身長175cm

体重68kg

誕生日12/16

趣味歌うこと、作曲

嫌いな言葉親の七光り

有名音楽家夫妻の1人息子、所謂二世。ベートーヴェンと誕生日が一緒なことから神童の再来とも評されている。実力はその名に恥じぬ錚々たるもので、音域は元々地声が高いこともあってか、女声(カウンターテナー)も難なくこなし、劇などではカメレオン俳優として知られるなど申し分ない、正に芸術に愛されすぎた模範的すぎる優等生……というのは表の顔。プライベートの彼はクラシック?ナニソレオイシーノ?(弾けないわけではない)的なバリバリの現代っ子で休日はTUNELOIDとアニメに興じる典型的なオタク兼腐男子である。(これは級友どころか大抵家にいない両親も知らない)つまり、家に帰ってからの彼は専らこのモードになる。本人談では「卜音Jrの俺と素の俺は別物」らしい。隠れてコソコソやっている理由としては多分親が認めてくれないっぽい、俺が家督を継ぐと期待してたから、らしい。別に二世としてちやほやされることを嫌ってはいない模様、むしろカモン状態。

それでも彼は作曲の技術を生かしボカロPとなり、歌い手になってセルフカバーをすることを夢見ている。最近の悩みは推しに貢ごうとするとすぐに金欠になること。

夜の友達として、ベアちん(ぬいぐるみ)がいる。

台詞見本

「うん、僕は大丈夫。いってらっしゃい。」

「俺のステージはこれからだ!第2部、開演!」

「腐った神童で何が悪い!」


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