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02 異世界転生したのに無双というにはちょっと… ─アインの章─(1)

ゴーストたちのお話です。

俺の名前はアイン、アイン・ハルサメだ。

何がきっかけだったのかは分からないが、気が付いたら、この世界に来ていた。

赤ん坊の体で。


これが転生ってヤツか!と認識できたのは、一歳をすぎた頃だったか。

それまでは、自由にならない体と感覚のギャップで戸惑っていた。

前世の俺は日本人で、ごく普通の若者だったと思う。

だが、この世界は地球ですらなく、おそらく俺には英雄に届くであろう力の可能性があるっ。はずだっ。


とはいえ、色々試してみたものの、体の中にあるスキルか何かと思われる感覚の大半はまだ発動出来そうもない。

おかしな動作を繰り返していたら親や兄弟に奇妙な目で見られるようになったので、しばらく封印しておくことにした。

前世の記憶はおぼろげで断片的過ぎ、そもそも生活環境が違いすぎてほとんど役に立たない。

ちょっと出来の良い子として振る舞うのが精一杯であり、逆に言えばそれで十分だった。


しかし、スキルのようなものが何かあるとして。

それらを発動できるような存在が、敵に回れば。

あるいは、それらのスキルを産み出す必要があるくらいの危険が、この世界にあったのだとすれば。


たまにそんな危機感めいたものを思い出すこともありつつ、10歳になるまでのアインは、質素ながらも平和に暮らしていた。




~氏族の長の視点~


辺境の暮らしは厳しい。

それは、ひとえに自然の脅威によるものだ。

大小多種多様な魔獣や危険生物、予測が困難で過酷な気候、限られた天然資源。

平原で覇を争っているという封建領主達も、その合間を縫うように奪い尽くす盗賊の群れも、このような地には目も向けない。


太っているとは言えない家畜を連れ、食い尽くさぬようほんの少しずつの採集を重ね、大地にへばりつくように幕営を繰り返す暮らしは、それらの災厄の目こぼしの中で、辛うじて息づいているものだった。

アインが、その能力に気付くまでは。


最初に、部族の拠点に唯一生えていた細く捻れた広葉樹をアインが引き倒したと聞いたとき、長老は怒りと悲しみにうち震えながら、この幼い者に与えるべき仕打ちを考えあぐねていた。


アインが枝と木片を使って農耕の民が使うような道具のおもちゃを作り、それでもって土のようなものを粘土混じりの荒れ地の地面から捏ね繰り出したとき、皆は首を傾げた。

引き倒した木から枝葉を何本か取って地面に差すのを見て、哀れな目を向ける者もいた。

木の道具で石をやすやすと砕き、その石を使ってまた新たな道具を作り出した時には、何か大きなことが始まっているのに気づく者が出てきた。


長老達は、もうしばらくこの少年の様子を見守ることとした。


アインが断崖を見上げながら石のツルハシを振るい続けると、やがて狭い洞窟につながった。

岩肌から時折採掘される真っ黒な炭の石は、いったん火が着けば、何時間も光と熱を失うことがなかった。

明りを得てアインと共に途を進めた部族の者は、二日の旅路ののち、大いなる割れ目に至り、その地下の大渓谷には、清廉な水が滔々と流れていた。

いずれも、この地に長く暮らす者でも見たことも考えたこともないような出来事だった。


地上に戻ると、アインは、三日掛けて畑となるべき土地を広げたのち、長老に申し出た。

「長老、古くから我らと共にあった彼の木を打ち倒したことをお許しください。

彼の木は、私に道を与えてくれる一本の木でありました。

土と、石と、暗闇を歩むための光を授かる助けとなりました。

彼の枝葉は、新たなる苗木となり、いずれは我らに森の恵みをもたらすでしょう。

私はこれより、しばしの旅に出たいと思います。

必ずや、この地の皆の役に立つものを集めて持ち帰ります。

旅立つ私に、アインという名をお授けください」


長老は、この幼子に、一族の希望を感じた。

「よかろう、十二の成人の儀にはまだ早いが、そなたには十分にその資格があろう、アインよ。

しかし、この地に災いの種は満ち満ちている。

何よりも、まずは生きて戻るのだぞ」


「はい。というか、まずは近場の探索から始めますので、数日おきには戻るつもりです」


「そうか、では心配は少ないな」


「危険な旅です。心配はしてください」


そして、アインの探索と製作の日々が始まる。

ツルハシと剣、わずかな食糧を携えて。



~アイン視点~


「ついに!本当の異世界生活が始まる!俺は!新たなる自分の人生を作る!」

「そう、これは、アイン・クラフトだ!!」





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