13 燃えたお話の行方
「そうか。そんなことがあったのか」
ワイングラスを合わせながら、エルネストがロジェに言いました。”スピルト”でことが解決したパーティーのときのことです。
「悪かったな。力になれなくて」
「謝る顔が既に面白そうだけどな」
ロジェはジト目です。
「でも、あの『解放の港』って話って、結局どういう終わり方したんだろ」
ロジェが言うのは、カトリーヌ達と一緒に途中までお芝居をした、あの本のことです。
「その話の結末なら、オレが知ってる」
エルネストも、お芝居の話は、ロマンヌとレアから聞いていました。
「へ? なんでお前が」
「結局主人公は、想い人とは結ばれず、外国へ逃げるんだ。そこで出会った新たな人と恋に落ちる。そこで物語は終わる」
「へー」
ロジェは感心して聞いていました。
「なんか気になったんだ。あの本、途中から破られてて、結末がわからなかったからさ」
「そうだろうな」
エルネストは頷きました。全てわかっているという風です。
「あれは昔、焚書になった本だから」
「えっ、マジかよ」
ロジェはまず驚きましたが、
「でもなんでそんな目に遭ったんだ?民衆に読ませちゃ悪い内容には思えねーけど」
そう言うと、エルネストはふっと寂しそうに微笑みました。
「焚書というのは、えてしてそういうものだ」
「ふーん……」
ロジェはまだ納得がいかなそうな顔をしています。
「待てよエルネスト、お前なんで焚書のことなんか知ってるんだ」
「それは」
エルネストは得意の涼やかな笑みを浮かべました。
「いいじゃないか。謎がひとつぐらい残っても」
「フフフ。そりゃ知ってるわよね、あの本のこと、あなたは。だって、かつての……ううん、今もずっと想い続けてる女性の、最後の著作だもんね」
「ひとりでなに言ってるの?イデア」
「わっ。……びっくりするじゃない、も~」
イデアは慌てて心臓を押さえ込みました。ロマンヌはそんなイデアを見て、くすくすと笑いました。
「妖精さんも、驚かされたり、するんだ」
「……あんた、だんだん性格悪くなってきてない?」
まぁいいわ、とイデアは髪を跳ね除けました。
「それくらい、自信がついてきてるってことね。今回は女王も皇太子もダブルで傷をいやしたみたいだし。文句なしで合格ね。……悔しいけど」
「やった!」
ロマンヌは拍手をしました。頑張ったパパやママに、そして自分自身に。




