第一話 ネコと和解せよ。
僕は24歳の工場勤務を仕事としているただの一般人だ。
ロックスターや、芸能人。インフルエンサーに野球選手。そんな才能とはかけ離れた人間。
こんな人間にも小さい悩みがある。
「人生つまらないな。」
僕は退屈していた。と言うより、生き詰まっていたと言おうか。
漠然と将来は成功してお金持ちになり、周りの人間と差をつけて同窓会などでデカい顔をする。
そんな人生を歩むと思っていた。
しかし現実はどうだ。
毎日同じ事の繰り返し。
自分の手元に流れてくるこの部品。
ネジを締めるだけの作業。
(一体、どこのなんて名前の部品なんだよ。)
名前だけはそこそこ大きい工場に就職したので、
家族も喜んでいたが肝心の本人がこの様だ。
終業のチャイムが鳴り皆が一斉に動きを止めた。
そのまま身支度し、ある者は同僚と、ある者は先輩や後輩とそれぞれ会話しながら
「ご飯どこ行く?」だの「昨日の○ouTubeみた?」だの、昨日と同じ会話をローテションしているかと思うほど聞いたセリフだ。
(話題までシフト制にしなくても良いじゃないか。)
僕は自転車で家まで帰る道中に、いつものルーティンをこなす。
コンビニに寄り、買い物を済ましたら家の近くの神社に行く。
この時間になると、神社には猫が集まるのだ。
最初は警戒されてなかなか近寄らなかったが、
少しずつ餌などで釣って今では撫でたり膝の上まで乗ってくれる様になった。
特別猫が好きなわけじゃないが、暇つぶしで始めた猫との交流を通して、僕は猫好きになった。
今日も神社の隅に猫達が集会をしていた。
僕が袋を持って近づくと猫達はニャーニャー鳴いてこちらに歩いてきた。
「あはは。ちょっと待っててね。」
そうして袋から猫用の缶詰を取り出して2つほど封を切り置いた。
今日もこの猫達を見て癒されるとしよう。
しばらく眺めていると、
僕の頭の上に重力とちっちゃな衝撃を感じた。
頭の上を触ってみると、一匹の猫が頭の上に座っていた。
「そこが落ち着くの?」
僕はそう聞いて、一度頭から下ろし抱っこをするがどうも嫌がる。
「ごめんごめん。」
この子は黒猫で、野良?にしては毛並みがいい。
黒猫は僕の頭の上にもう一度座った。
(落とさない様に気を付けなきゃ。)
そうして視線を猫達に向けようとすると、少し違和感を覚えた。
(ん?なんだ?こんな景色だったっけ?)
僕の視界の景色は、まるでスマホの画像を彩度MAXにした様な鮮やかさを映し出していた。
音や光がとても近くに感じる。
濃緑の葉に煌びやかな花。風にさえ色がついている様に思う。
「綺麗だなぁ〜」
そう言ってふと、目線を横にずらす
「ぎえ!?」
は叫んだ。一瞬飛び上がりそうになったが、頭上の猫を思い出して、ギリギリ留まる。
僕の横には化け物が座っていた。
少し小さめの身長で袈裟?の様なものを着ていて
大きな目が1つ。妖怪の(一つ目小僧)が、昔見た本の姿のまま隣に居たのだ。
僕はこの化け物が気づいていないうちに逃げようとしたが、目の前の猫達が目に入ってしまう。
(ど、ど、どうしよう!この子達は、てかなんだコイツ!?いつから居たんだ?)
とにかく頭の上にいる猫だけでも避難させようと
頭の上に手を伸ばすと、柔らかい肉球が僕の手を止めた。
まるで、「待て」と言われている様だった。
「あれ?お前、視えてる?」
1つ目の化け物は俺に聞いてきた。
そうして頭上に目をやる。
「ほー!こりゃ珍しい。猫神様に気に入られたのかい?」
(猫神様?この子の事か?)
「にゃー。」
頭の上の猫がそう鳴いた。
「な、な、な、何を言ってるんだ?」
そう言うと、1つ目の化け物は猫に向かって手を合わせて頭を下げた。
「ありがたやありがたや。」
僕はコイツに食われるんじゃないかと思っていたが、意外にも化け物は僕の様子を見て、
「あぁ〜。お前、初めてだな?」
そう笑って状況を説明してくれた。
そして、この出会いが僕の人生を豊かなものにしていくのだった。




