【改良ダリアン暦1年119月15日】採光窓工事と今夜のラジオ
「明けない夜」が始まるのを待って、採光窓への光ファイバーの取付工事が始まった。
◇
採光ドームには、既に光ファイバー取付のためのフレームが設置されている。これに光ファイバーの束をひと束ずつ取り付けてゆくのだ。
この光ファイバーは特殊な形をしていて、単純な円断面のグラスファイバーではない。採光窓側の端は断面が六角形になっていて、隙間なく面的に敷き詰められるようになっているため、受光面積に無駄が生じないのである。そして、断面はだんだんと小さく、円形になってゆき、採光窓側の取り付け位置では、採光ドーム側の約1/3の面積になっている。これにより、光ファイバーケーブルの断面積を小さくし、各採光窓への光量の配分をやりやすくしているのだ。この特殊な光ファイバーケーブルは、日本にある1社のみで製造されており、他の企業では造ることができないものなのである。被覆も特殊なものだ。
今回は僕やラウラさんの出番はない。こういう特殊なケーブル類の扱いに慣れた内構担当の技術者が、手際よく取り付けを行ってゆく。外殻の天井から吊られたゴンドラに載って取り付け作業を行う様子は、何かサーカスでも見ているようで、僕は結構ワクワクしてしまう。だが作業手順や安全管理もその分複雑で、僕はオペレータ室から、内構担当のアルド君と一緒に、手順と進捗を確認しながら作業を見守る。
正直、僕もちょっとやってみたい気はするが、こればっかりは素人にはちょっと無理っぽい。
まあ、そもそも僕の専門は土木機械だからね。みんな忘れてるかも知れないけど。
◇
夕方、この日の光ファイバーケーブル設置は、見事に予定の数量をこなして終了した。
シャワーと夕食を終えたが、今日は皆ロビーには集まらない。今日の「越夜祭」は演目なしなのである。さすがに「明けない夜」が30日も続くと、全ての夜を誰かの演目で埋めるのは無理だったようだ。
じゃあ、どうするのか?
大アルバートが考えた解決法は、そういう日は「ラジオ・ヴァーミリオン」の拡大版で埋めること。普段は15分、1曲だけの番組枠を1時間に拡大して、20~21時に放送する。
でもそれじゃあアミさん大変じゃん?とか思ったのだが、大アルバートはこれに代役を立てることにした。
誰なのかって?
AIのエレノアだ。
もともと人間が大事にする「美しいもの」に強い興味を持っていた彼女は、これを二つ返事で引き受けてくれた。もちろん選曲も彼女がやる。リクエストだって今まで通り受け付ける。
そして、選んだ曲を掛けるだけでなく、その曲について、彼女なりに語るのである。内容は地球のネットやデータベースから得た情報が元ネタではあるが、これを上手く取り混ぜて、彼女なりの解釈も交えて語りを入れる。これがなかなか面白いのである。
だから今日はみんな、ロビーに行かずに自室で彼女のDJっぷりに耳を傾ける。
◇
「では、最初の曲です。管理室のラファエル・セロさんからのリクエストで、曲は…………」
今日も、明けない夜が更けてゆく。




