四十一話目
「それじゃあ、癒音ちゃん、零夜。私達は次だからそろそろ入場門に向かおっか」
私達は中等部二年生の二人三脚が終わりかけになるまで話していた。この次が私達高等部二年の短距離走だから私は二人に呼びかけた。二人は前のグラウンドを確認して私と同じように立ち上がる。
「それじゃあ、璃空。私達は次だからいくね?」
「うん!お姉ちゃん、頑張ってね!優月先輩と零夜先輩も!」
「ありがとう、璃空ちゃん!」
「おう。てか俺達はついでみたいに言うな。まぁ、仕方ないか」
零夜がつぶやくように言ったあとの言葉が璃空ちゃんに聞こえてたみたいで、璃空ちゃんは小さな唸り声をあげた。私と癒音ちゃんはその声が聞こえたから二人揃って零夜のことをジト目で見る。零夜にもどうやら聞こえてたようで気まずそうに目を逸らした。
「ま、まぁ、ともかく行こうぜ」
零夜がそう言って先に入場門の方に歩いて行く。私はその後を追おうとしたけど、その前に言いたいことがあったから璃空ちゃんの方を見る。癒音ちゃんは零夜のあとを追って先に入場門の方に向かって行ってる。
「零夜くんがごめんね?零夜くんも悪気があって言った訳じゃないから・・・・・・」
「い、いえ。それはさっきの零夜先輩の態度で分かりましたから・・・」
「そっか。でも一応ね。それじゃあお互い頑張ろうね、璃空ちゃん!」
「はい!!」
私は入場門の方に振り返って零夜と癒音ちゃんの方に向かって行く。入場門に向かってる途中に癒音ちゃんが私の方を向いて待っていた。私が彼女の横に行くと、彼女は聞いてくる。
「璃空に何か言ってたみたいだけど何言ってたの?」
「ん?零夜が言ってたことを謝ってたのと、弁明的なこと言ってきたの」
「あぁ、なるほどね。そう言わなくても璃空は分かってたみたいだけどね」
「それでも一応ね」
私達は二人揃って改めて入場門に向かう。私達は入場門の前で待機する。私達はプログラムを言われてからグラウンドに入って行く。グラウンドの外周に男女で分かれて並ぶ。その後は、自分達が走る順番のところに並ぶ。
私と同じときに走るのは癒音ちゃん。この周辺には癒音ちゃんの他にも亜未ちゃん、由理子ちゃん。それに千波弥。天文部の女子組がここに固まっている。
「癒音ちゃん、負けないからね」
「私もだよ。それに優月ちゃんとは一度どっちが早いか知りたかったしね」
「奇遇だね。私もだよ」
私達はお互いが睨みつけるようにして言い合う。お互い譲る気はなく、私達の間には見えない火花が散っている。そこに、諌めるようにして由理子ちゃんが口を挟んでくる。
「戦う前からその関係性は尊敬しますが、今じゃなくてもいいんじゃないですか?」
「由理子ちゃん・・・それでも譲る気はお互いにないからね。どうしても・・・・ね?」
「そうだね。優月ちゃんとはお互いに何かしら勝負つけたかったからね」
「へぇー・・・」
私達はまたお互いを睨む。せっかく由理子ちゃんが諌めてこの場を収めようとしてくれたけどこうなった。
この様子を千波弥は苦笑いで見てる。由理子ちゃんは呆れたのか口を出さずに、亜未ちゃんは少しオロオロしてる。
「ちなみに2人とも自信の程は?」
「「私が勝つ!」」
お互いに声を合わせて言ったからまたお互いを鋭く睨み合う。
「そんだけ勝つ自信があるのならさ、負けた方は勝った方の言うことを1つだけ聞くことにしない?」
「・・・・・・良いよ。それ乗るよ」
「それじゃあ決定で」
私達は罰ゲーム的なことを決めた。お互いに譲れないなら、勝つ自信があるならいいと思って。他の天文部の皆は苦笑い。私のことをよく知ってるからこその。
「あ、男子最後だ」
「ということは零夜が出るわね」
「うん。流石に零夜くんは勝てるでしょ」
「まぁ・・・うん。そうだろうね」
亜未ちゃんが零夜と走るメンバーを見て微妙な顔で頷く。
「私達もそろそろ準備しないとね〜」
「そうですわね。私達は早い方ですからね」
「そうだね。優月ちゃん、本気でね?」
「誰に言ってるの?そっちこそ手を抜かないでよ」
私達は前に詰める。私と癒音ちゃんは2番目に走る。
「千波弥ちゃんはどっちが勝つと思いますか?」
「私の予想は同着ね。人の目の判断によるからなんとも言えないけど。由理子と亜未は?」
「私は癒音かな。最初に巻いて逃げ切りそう」
「私は優月ちゃんですね。今まで見てきてますしね」
私達の勝敗がどうなるか私達以外のみんなが話している。亜未ちゃんは言い終えたあとに立ち上がって並んだ。亜未ちゃんは最初だから言いたいことだけ言ってきただけかな。
亜未ちゃんはピストルが鳴ってから走る。亜未ちゃんは最初に抜け出してからそのまま逃げ切った。1着だね。私と癒音ちゃんはそれを確認してから立ち上がって並ぶ。
「負けないから」
「こっちこそ」
私達は掛け声をされて、走る体勢に入る。ピストルが鳴った。私達は飛び出したが、癒音ちゃんの方が早くて少し離された。後ろには他の走者の3人が追いかけるように並んでいる。
私は走る。癒音ちゃんに近づくように、追い抜くために。私は曲がっている途中で癒音ちゃんの横に並ぶ。癒音ちゃんのことを横目でチラッと見てみると驚いていた。
「最後の勝負だよ、癒音ちゃん!」
「負けないからね!」
私達は並んでゴールテープに向かって突き進む。私と癒音ちゃんはどちらも1歩も譲らずにゴールテープに向かう。
私達はお互いに1歩も譲らずにゴールテープを切った。私達は超えたあとからゆっくりスピードを下ろしながら退場門から出ていく。お互いに息を整えている。
「どっち・・・・・・!?」
私達は判断する人達の方を見る。見ると何故か集まって話し合っている。着順を告げる放送は言われてない。なんなら放送の人も困惑している。
とうとう話し終えたのか放送の人に伝えに行った。放送の人の方を見ると、聞いたら驚いていて、ようやく放送を告げた。
『只今の結果をお知らせします。1着は同着で3着は1組です』
私達はそれを聞いて思考が止まった。周りも静寂である。それから一拍おいてからグラウンドは困惑の声で包まれた。
私達も顔を見合わせる。
「嘘でしょ・・・」




