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三十七話目






私達はグラウンドに入って開始するのを待つ。私達天文部の第一走者は癒音ちゃん。第一走者はスタートダッシュが肝心だから最初に走るようにした。その次に中等部の3人。アンカーが部長の私で、第五走者目に零夜を入れた。


オンユアマーク、セット・・・


パァンッ!


癒音ちゃんが勢いよく走り出した。癒音ちゃんは他の走者と比べて一歩二歩ほど早く飛び出していた。他の走者も追いつこうと走っているけど皆が似たような早さなせいか距離は詰められないけど離すことはできていない。そのまま他の走者との距離はあまり変わらず、第二走者の後輩に変わった。


癒音ちゃんはバトンを落とすことなく第二走者の子に受け渡す。第二走者の子もバトンを落とすことなく受け取った。受け取った後輩の子は前を向いて駆け出す。他の部活の子達も何事もなくバトンを受け渡して、受け取った子達が走る。


第二走者の子も走って逃げているけど他の子がはやいのかあっという間に追いつかれそうになっている。


見ているうちに追いつかれて並んでしまう。そこから少しの間並走してたんだけど、途中で2人の足が絡まった。


「ヤバっ・・・」


そう呟くと同時に前を走っていた2人がもつれて倒れこんだ。後輩はバトンを話してないけど、もう一人の子は転んだ弾みにバトンが手から抜けたようで少し離れたところに転がっている。


「大丈夫ー!?」


私は声を上げて呼びかける。後輩は何事も無かったかのように立ち上がって抜かれた分を取り戻すように走り出す。さっき倒れた間に後ろを入っていた3人に抜かれたから今は4位。


「あれだけ走れるなら大丈夫そうだね・・・」


私はホッと一安心。後輩は1周を回り終えて次の走者の子に受け渡す。次の子に渡るまでに距離は詰めていたからまだ全然1位になれる範囲にいる。3位の子との間はすぐだからこの子で抜ける。


私は走り終えた、さっきコケた子に声をかける。


「大丈夫?」

「大丈夫ですよ、部長。でも、少し皮が剥けたので救護テントで絆創膏を貰っておきます」

「うん。安全第一にね」

「分かってますよ」


後輩はポニーテールの髪を揺らしながらグラウンドの外に出て救護テントの方に向かっていった。私はそれを見届けて今の順位を確認する。


いつの間にかバトンは第四走者に渡っていて順位も2位に浮上していた。第五走者は零夜だから最悪抜けなくても距離を詰めていてくれたら問題はない。


第四走者の後輩も早いけど、コケた分で遅れたからどうしても距離が空いている。どうにかして詰めようとしているけど、中々距離は縮まらない。


そして、第五走者の零夜にバトンが渡った。その間に私もレーンに並ぶ。零夜は1位の子との差を一気に詰めて横に並ぶ。


私はバトンがもうすぐ渡るところで走り始める。私の隣にいた子も私と同時に走り出した。そうして、零夜が私にバトンを渡す。


「行け、部長」

「連覇するから」


私は零夜から受け取りながら声を返した。私と一緒に隣の子が走り出した。私も負けじと走り出し半周近くずっと並走して走っていた。


見ている学生はこの接戦に歓声を上げているが、私の耳にそれは入らない。私は隣の子を抜こうとさらに足を踏み込んで加速する。


「えっ・・・!?」


隣から驚いた声が聞こえるけど気にしない。私は少し体を低めて前に走る。残っている種目に私が出る種目はない。だから私は今残っている体力を全て出し切るように足を動かす。


コーナーを回ってゴールテープが見える。私はそこに向かって残りの体力を使って走る。そして、一番にゴールテープを切る。


私はゴールテープを切ったあと倒れかける。私の視界には地面が近づいてくる。


───ポスッ・・・


けど、私は地面に衝突しなかった。


「たくっ、無茶するな。うちの部長は」

「れい・・・やくん・・・?」

「いくらもう大丈夫だからって全部の力出すやつがいるか」

「・・・ここに」

「そんだけ喋れるなら大丈夫だな」


そう言いつつも私に肩を貸して、私の歩調に合わせるように歩いてくれる零夜。私は声には出さないけど心の中で零夜に感謝する。


(いつもありがとう・・・・・・零夜)








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