託した思い
「いよいよだな、3学年合同実戦演習」
そう言いながら廊下を歩いていた僕の隣に来たのは旁だった。いつも通り、紫色の服がキラキラと日光を反射し、目を背ける。
「たしか、初めて来たときの演習と大体同じなんだって?」
その問いかけに軽くうなずき、実践演習のあるグラウンドへの道を進む。
「そうだ、タッグ組もうぜ」
「チームって教師側で決められるんじゃなかった?」
当たり前のようにルールを確認していない旁に少しあきれながらも話す。
「今日のチームのことじゃなくて、要はこれから一緒に活動してこうよって話。お前といると楽しいんだよ」
正直びっくりした。強くなることだけを考えていて、未来なんて少しも考えていないと思ったから。
「僕、いろいろとやりたいことがあるんだ。それに付き合わせるけどいい?」
ふいに口が開いていた。旁と同じ感情なのが恥ずかしく思い胸の奥にしまう。
「もちろん」
彼はとびっきりの笑顔で言った後、足早にグラウンドへ行った。
「恥ずかしいな」
自分の手をゆっくりと握りそうつぶやく。
キーンという音が鳴る。
「今から3学年合同実戦演習を行う」
さっきまで話していた生徒の視線が自然とマイクを持った風見の方へ向き、静かになる。
「ルールは今から配るタスキを周りから見える位置につけ、各々別の位置からスタートし、制限時間30分の間にそれを多くとったチームの勝利となる」
「今さっき配られた紙に書いてある者とチームを組んでもらう」
その紙には僕を含めた4人の名前と集合場所が書いてあり、そこへ向かう。
旁と同じだ、良かった。いつも通りのパフォーマンスが期待できる。
「では今から15分、お前らにやる。使い方はそれぞれに任せる」
「3年の土椰 子守だ。よろしく」
一目見て体育会系だと分かるようながっしりとした体形に、似合わないようなさわやかで優しい声。
「私は2年の長野 春香です」
黒く顔を隠すほどの長い髪を垂らしていた彼女は、ちらちら見える光の反射から眼鏡をつけているのがかろうじて分かった。
「1年の旁と、連です」
そのように軽く自己紹介をして、本題に入る
「みんなの異能と戦い方を説明できる範囲でいいから教えてもらえるかな?俺は原始の守りって言って目の前に防壁を作ることができる。全員を守ると約束しよう」
彼の最後の一言はこちらの安心感を思考の奥から引き出すような気がした。
「私は蝋燭の灯火と言います。援護がメインです」
少し根暗ではあるものの、気合が入っているのが分かるほどの声量であった彼女は言った。
「オレは雨、衣を濡らさずと言って分かりやすく言うと相手の攻撃を避けれます。戦い方は刀を使ってヒット&アウェイです」
「僕は小さな盾と剣で戦って、異能力は目には目をと言って触れたものを分割できます」
自分の長所、得意なことについて隠さずに話す。
「じゃあ、そうだなメインの動きとして俺と旁君で近接、連君は状況を見て相手の妨害、春香さんは援護でいいかな」
それを聞いた僕達はそれぞれ頷く。
「じゃあみんなアップはしておいて」
そのように言われ、シャドーボクシングのように相手を想像してアップをしていると、
「お前の役割難しくね」
旁が言った内容に涼しい顔を作って言う。
「別に、完璧にこなせるよ」
ここで役に立てないとアイツを圧倒なんてできない。
時間が経ち、雲一つない空に笛の音だけが風に乗って移動し、実践演習は始まった。その音に合わせて僕らのチームもフィールドへ進む。遠距離相手では強気に出れないので身を隠しながら数分歩くと焦げた匂いが辺りを覆い、白い煙が立ち上っていた。
「わざわざ目立つような力を使うということは相当自信があるのだろう。行くのはやめておこう」
今の情報から相手が火または、熱などを使うのだろう。遠距離から来られれば分が悪すぎる。
「危ないです、さがって」
小さいながらも力強さを内包した旁の声が聞こえ、僕を含めた3人は足を止める。
その声が聞こえた後に僕たちの目の前を矢が過ぎ去る。どうやらそれは他のチーム同士の時に放たれたらしい。
ゆっくり進んでいると、目の前に漁夫の利をしようとするチームが居た。
「僕が物を倒してひきつけて、戻ってくるのでその間に取ってください」
手でカウントダウンをして、0と同時に近くの木を異能力を使って倒す。
「ひぃ、誰かいるんじゃないの?」
「かもな、でも崩れたところは遠くだからあまり警戒しなくていいだろ」
そのように言っている者のタスキを奪い旁たちが戻ってくる。その時
「今これが聞こえてるものに次ぐ、今すぐ森から離れ校舎に集合しろ」
フィールド全体に響く音が聞こえる。
「これはただ事じゃないな、指示に従おう」
土椰先輩の言葉に従い、急いで今まで来た道を戻る。
「!?、原始の守り」
先輩の異能力で僕らを囲むように土壁ができる。さっきよりも熱を身近に感じ、危機が迫っていたことがようやく分かった。すぐに自分たちの進む道の壁が開く。その先にはゆらゆらとぼやけたナニカがいた。
「あいつはなんだ?」
先輩がそれを言った次の瞬間、あの日感じたような、純粋な殺意を感じて身をすくめた。その状態でただ恐怖を感じることしかできなかった。
「君等は俺が守る早くいくんだ」
それはまるで命の吹き込まれた炎その者であった。生き物は意味もなく火を怖がる。人はその怖さを忘れていたに違いない。でなければあれを見てここまでの恐怖を感じることなどないはずだからだ。
先輩の言葉を聞き、先輩にここを任せ動こうとするもすくんで動けない。
ソレが触れたものはゆっくりと燃え、周りの木々が地面へ寝そべる。鈍い痛みと、傷口を常に襲う熱さの2つが僕の足にダイブしてきた。叫ぶ口を手で覆いふさぐ。
「連、お前!!」
「はぁ、大丈夫だ、行こう」
倒れた木に触れ、それを4等分にして歩みを続ける。
僕を担ごうとする旁を必死になって止める。
「だめだ、何かあったとき君が逃げ切れない」
地を這いながら少しずつ進む。まだ燃えていない気に寄りかかる、休みながらいつの間にか、つぶやいていた。
「はぁ、はぁこんな非常事態にこんなになるなんてついてないや。」
どこかで生きるのを諦めた自分が居る。自分の汚ったない復讐を託していいような気がして、自然と口が動く。
目にたまったこの涙が蒸発する前に言わなければならない。
「旁..僕はさ。家族を殺した...アイツを殺すためにここに来たんだ。アイツはさ、目に大きな傷がついていた。直接だよ。」
醜いな。自分の復讐を、手を汚す行為を友達に押し付けるなんて
「だめだ、一緒に行こ」
その言葉を制止して話す
「その道中で君がケガをしたら?僕をかばって支障をきたしちゃいけない。」
「間違うな、この学園に入った時から、死神が身近にいた。ただ死に際を求めてだ。手負い二人よりも無傷一人の方が有用性がある。」
君を生かすためには、こんな風に言わないと聞かないだろう。
「託してもいい?僕の復讐相手」
返事は聞かずにそっと彼の背中を押す。さすがに僕の思いが変わらないことに気づいたのだろう。かなしそうな顔を前に向けて走っていく。
「さーて、君の時間稼ぎをしないとね」
寄りかかっていた木を利用して何とか立ち上がる。自分でもわかるほどぼろぼろな足は今にも折れそうで怖かったがそんな怖さは友達を守ろうとする心でどうにかバランスをとっていた。
寄りかかった木に触れ、異能力を使い木を倒す。音に反応したナニカは振れたものを燃やしながらこちらに来る。
けんけんの要領で地面蹴り、木に触れ倒す。何度か繰り返している途中で足に力が入らず地面に倒れる。
「なんだ、燃やすだけで芸が無いな」
相手に伝わっているかもわからないが動けない自分にとっての最後の抵抗だった。それは何も言わずに近づいてきた。
「僕は神が居てほしいと思うんだ、だってこんな人生のすべてをそいつのせいに出来るから。神が居ないと全部自分のせいだって認めないといけないから。まぁ、こんなこと言っても聞こえないんだろうけど」
旁、今日話してたタッグの相手は僕じゃないみたいだ。短い間だったけどありがとう。君には自分の人生をよいものだって認めてほしいなぁ。




