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それぞれの幸せ

本日4回目の投稿となります。

あれから一年半が過ぎた。

今の私は、トーチウッド伯爵、通称ダーク様のお屋敷に住まわせてもらって、そこから王立大学に通っている。


ナサニエルがジェラルド商会に戻り、ミランダがフランカ王国に帰国した後、寂しくなるかと思ったが、急に色々な事が起きて私の環境も変わったのだ。


学校では、ヘイリーが人身売買で捕まり、ダレルの立場が弱くなった。

そのせいなのか、ダレルは、事あるごとにデートに誘ってくるようになった。

きっと、もう、デートしてくれる女の子がいないからだ。

誰もダレルの誘いにはならなくなったのだ。

もちろん、私も誘いにはならない。


それから、オーランドとジェリーの兄弟の『黒虎団』という窃盗団が捕まった話も街を騒がせたが、その泥棒があの二人の事だって気づく人はいなかった。

何故なら、年齢が30歳と28歳で報道されたからだ。

実年齢がそんなに上だったなんて信じられない!

それに、もともと影が薄かったので、いなくなった事が話題にはのぼらなかったが、オーランドに片思いをしていたハンナは、突然いなくなった事にショックを受けていた。


ミランダの事は、新聞報道で知った。

フランカ王国の皇太子が、その座を降り、その代わりミランダが皇太子になった。

もちろん、レオナルド殿下が婚約者としてサポートする事も同時に発表されて、フランカ王国と、ヤシムンド王国の友好関係が強固なものになった。


そして、ミランダの帰国を手伝った歌姫ドリーナだが、父さんと同じプロテクトプロに所属するシークレットサービスの一員だという事を後で知った。

なんでも、すごく腕のたつ方だったようだ。

何故、あの時、ドリーナが帰国を手伝ったのかというと、母さんの母国であるタヒマイ公国が併合されるきっかけを作った、ザットン帝国が、ミランダを狙っていたからなのだ。


今日の新聞にはフランカ王国でのミランダの即位式の日程が決まったと、一面に大きく出ていた。

とうとう女王様になるのね。

新聞には、レオナルド殿下と仲良く公務を行う様子が出ている。


一年半前、ミランダが残していった蚤の市で買った不気味な人形と、古びたカップを、このお屋敷に来る時に、試しに鑑定してもらったらびっくりするような値段だった。

希少なアンティークだったのだ。

そんなミランダが国を仕切るのだから大丈夫だろう。

レオナルド殿下だっているんだし。


「リーザ様、朝食をお持ちしますよ。今日は大学の後、伯爵様と、騎士団へ視察に行かれる予定ですよね?」

侍女に言われて新聞を横に置いた。

「そうなの。ハイヤリートのお土産を楽しみにしているのよ」


父さんは今、憲兵の顧問をしている。

私の故郷であるハイヤリートは他国からの玄関口で、そこで起きた奴隷商の犯罪を二度と起こさせないため、街の治安維持が強化された。

その治安維持のトップに任命されたのが、父さんだった。

国王陛下からの依頼は断れず、そのため、私達が住んでいた牧場は憲兵の訓練所になってしまった。



着替えて大学に行こうとした時だった。

「リーザ様、お客様ですよ」

侍女から呼ばれる。

「誰かしら?」

私の疑問に侍女は笑顔を見せた。

「多分、フランカ王国からですよ」

その言葉に私は嬉しくて、急いで立ち上がった。


きっとミランダの即位式の招待状だ!


サロンの扉を開くと。使者がちょうど紅茶を飲もうとしていた。

そして顔を上げて私を見て微笑む。


「……ナサニエル?」

男性はカップを置くと、私の方に歩いてきた。

「リーザ!びっくりしたよ。一年半で間違えるように綺麗になったね」

目を細めて笑うナサニエルも、以前よりも男らしくなって、体つきがしっかりしていた。

でも、美しい顔はそのままなので、色気が溢れている。


「髪を下ろして、流行のドレスを纏うようになったんだね。しかもブーツじゃなくてハイヒールを履いてる」

ナサニエルは嬉しそうにしている。


「あのままでは、何も変わらないから……私も努力したの」

「牧場に行ったら、たくさんの憲兵が住んでいて驚いたよ。だから、アーネストさんの雑貨店に行ったら、リーザがここに住んでるって聞いて……。会いにきたら別人のようになってた」


「中身は同じよ」

「そんな事ないよ。きっと中身も磨かれているよ!今は……トーチウッド伯爵と婚約しているの?」

あまりに事実とかけ離れたことを言うナサニエルに私は驚いて笑い出した。


「違うわよ!私は下宿させてもらう代わりに、伯爵様の婚約者の話し相手をしているの。来月結婚される次期伯爵夫人は……」

その時、サロンのドアが開いた。


「お客様が来ていると聞いて、来てみたらナサニエルくん?一年ぶりね。以前もかっこよかったけど、さらに素敵になったわね!」

そこに現れたのはドリーナ嬢だった。

「ドリーナさん!お久しぶりです。ドリーナさんもここに下宿しているんですか?」


「違うわ。私、来月、ここに嫁いで来るの」

そう言って笑うドリーナは幸せそうだ。


「びっくりしたー!ここにリーザが住んでいると聞いてきたから、リーザとトーチウッド伯爵が婚約したのかと思いました」

ナサニエルは胸を撫で下ろした。


「リーザの婚約ね」

ドリーナが、含みを持たせた言い方で応える。

「リーザにはね、この通り絶世の美女でしょ?沢山のお見合い話が来ているんだけど、まだ誰とも会ってないのよ。国内外から、本当に沢山届いているの」

ドリーナは、サロンの隣の部屋を開けて見せた。

そこには沢山の釣書が置かれている。


「あの事件で、リーザ自身に陞爵の話があったのだけど、辞退したのよ。まあ、国王陛下は辞退に納得されなくて『保留』になっているんだけど、リーザは男爵の位を持っているようなものよ」

ドリーナは胸を張ってナサニエルに言った。


「リーザすごいね。子爵を受け継いだだけの僕とは大違いだ」

その言葉に、ドリーナはクスクスと笑う。

「何を言っているの?ナサニエルも陞爵されて、子爵から伯爵になっているわ。と言っても、あなたがどこにいるのかわからなくて、書面上の手続きだけしか出来てないけどね」


「え?僕が伯爵?」

その驚いた顔を見て笑う。

「僕が戻るのが遅れたのは、ジェラルド商会会頭が次から次へと仕事を言いつけてきたからなんだ。『リーザのお母様が他界しているなら、何故、娘であるリーザを連れて帰らなかったんだ!』って会頭は怒り心頭で…」


「まあ、仕方ないよ。会頭は僕にとって育ての親みたいなものだからね。でも一年半も振り回されるとは思ってなかったよ」

困った顔で笑うナサニエルも魅力的だ。

一年半の間に、本当にかっこよくなって、そばにいるだけでドキドキする。


「そろそろ本題を」

そう言って、鞄から四角い箱を出した。

「これをリーザに」

「開けてもいいの?」

「もちろんだよ」


箱を開けると、エメラルドの指輪が入っていた。

「これはリーザのお母様ゆかりの宝石だそうだよ。なんとか会頭から買い取ったんだ。

リーザ、僕と結婚を前提にお付き合いしてください」


私はこの一年半、ずっとナサニエルを待っていた。

どこで何をしているかも全くわからない。

生死すら不明なナサニエルを待つのは辛かった。

でも、待っていてよかった。

自分の本心に正直でいてよかった。


「ええ!もちろんよ。私もナサニエルが好き」

ナサニエルは、私を抱き上げて、キスをしてくれた。

もう離れない。

そう約束したのは言うまでもない。


これは、羊に変装していたナサニエルと、恋に縁のなかったリーザのお話。


これでこのお話は終わりとなります。

体調不良が続いており、投稿が不定期で申し訳ありませんでした。

最後までお付き合い頂きありがとうございます。

いかがだったでしょうか?


もしよかったら評価お願いします。


また次のお話を楽しみに待っていただけると幸いです。

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