8話:人間をアイテムにしましょう ~ VS時食いのしもべ(後編) ~
サキはチンピラに躊躇なくトリガーを引いた。
時間を凍結させる光の弾丸が空間を疾駆する。しかし、チンピラの体表に弾が接触する瞬間、光り輝く膜のようなものが現れ、時間凍結弾をその場で食い止めた。
「きかねーなぁ!! ふんッ!!」
チンピラが満面の笑顔で大胸筋を誇張する。
すると、その場で停止していた時間凍結弾が弾かれ、明後日の方向に飛んでいった。
「ちッ! バリアかッ!」
『サキさん、クロノ・ガーディアンと同じように、時空犯罪者はバリアを展開しています!
相手のバリアゲージを削らないと、アイテム化できません!!』
「おおっとぉ、他の女とのお喋りは良くないぜぇ!! 俺と楽しもうぜぇ、姉ちゃんッ!!」
拘束欲が強そうな発言をしながら、チンピラが両手剣を時空ゲートから引っ張り出す。
「これは……剣ッ!!」
いわゆるツヴァイハンダーだ。
チンピラはツヴァイハンダーを軽々と振り回し、斬撃を繰り出した。
「セーフティデバイスじゃあ、剣には敵わねぇよなぁ! 何せそれは“鈍器”なんだからなぁッ!!」
「くッ!」
ツヴァイハンダーをセーフティデバイス01D・ガンモードの刀身で弾く。
だが、相手の一撃一撃が重い。身軽さが仇となり、サキは後退を余儀なくされた。
(このままじゃヤられるッ!!)
死は怖い。
そうだ、死は怖い。怖いものだったのだ!
異世界に来て初めて感じる焦りがサキの生存本能を呼び覚ました。
サキの瞳が赤く輝き、機獣オーバード・ネメアTYPE2の鼓動と同期する。
「――ネメアーッ!!」
「グォォォンッ!」
サキの呼び声に応え、機獣オーバード・ネメアTYPE2が跳躍する。
繰り出される巨爪の一撃が、大地を抉った。
「うがぁッ!?」
重量換算にして約10万トン。
偉大なる重量物に押し潰された結果、チンピラのバリアがパリンパリンパリンと音を立てて幾重にも割れた。
『トリプル貫通です!! 敵のバリアゲージ、残り20%になりました! チャンスです!』
「ドロー! マテリアルチェンジ!」
サキはカード【機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)】を手に取り、火のウィルをセーフティデバイス01Dに込めた。
噴火の力が吹き荒れ、赤いオーラがサキに集中する。
「「「デレー・デ・デ・デデン! ドラゴンアーマー!!」」」
腕に嵌めたブレスレットが叫び、【機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)】の力を秘めたアーマーを顕現させる。
――ゴォォォォォッ!!
赤きオーラが人間用のドラゴンアーマーとして実体化し、サキの身に装着される。
サキは背中のドラゴンウィングを広げ、赤く燃え盛るエネルギーを噴射した。
「はぁッ!」
「ぐげぇッ!?」
推進力に任せるまま、チンピラに体当たりの一撃を食らわせる。
パリン、と音を立ててチンピラのバリアが割れた。
「食らえッ!」
「うごッ!?」
サキは躊躇わず、セーフティデバイス01D・ガンモードの刀身でチンピラの横腹を殴り倒す。
パリンッ。最後のバリアが割れた感触が、サキの手に伝わった。
(この力……強いッ!!)
自由自在に飛翔して敵を翻弄し、攻撃を繰り出す。まるでメカ少女だ、とサキは感じた。
「これで最後よッ!」
サキは至近距離でトリガーを引いた。
バリアを失ったチンピラに時間凍結弾が命中し、その命をアイテムに変化させる。
「うぎゃあああ――ッ!? 俺のマイホーム願望が消えるゥ――ッ!!」
「勝利は我にあり! ハウジングアイテムになるのはあなただったようねッ!」
「グォォォォン!!」
チンピラがカード化してサキの手元に収まる。
機獣オーバード・ネメアTYPE2を背景に、サキは決め台詞を口にした。
てれれってれーん!
サキは 戦闘に 勝利した!
サキは アイテム【チンピラ(人間)】を 手に入れた!
時間が空き次第、次話を投稿しますm(_ _)m
●ステータス
名前:サキ
性別:女性
年齢:16歳
ガーディアンランク:E
アイテム:ヴァリアブルスーツ、セーフティデバイス01D
カード化済みのアイテム:機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)、チンピラ(人間)