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私の日記  作者: コーレア
003 暗号編
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030420 鈴→大歩危

「後は4組(うち)の最後の暗号文だけ、か」


 御嶽さんが戻ってきた。


4つ目の最後の地の南東にある国は、鈴の縄の元でもあり人を惑わす元の1つでもある物の別称。南より変えられたその場所が最後であり始まりの場所でもある


 というのが、問題の暗号文だ。

 キーになる単語は……鈴の縄になるかもしれない。鈴、か。


「鈴と言えば何が思い浮かびますか?」

「うーん……猫か……楽器か……後、神社だな。んっ? 神社?」


 太地さんが何か思い当たる節に引っ掛かったらしく、更に眉の角度を深くした。私も、彼が引っ掛かった単語と故郷の近くのでかい神社と照らし合わせて考える。

 鈴……確か巫女さんが、神楽舞をする時に使ってたな。他は……特に無いよな。招き猫は……どうだろう?


「っ!」


 太地さんが、何かを思い付き、それで漏れでようとした大声を喉の辺りで止めたため、勢いよく咳き込む。流石にそれには、ゼレマノフさんの“お仕置き”は来なかったが、辺りを見回したり咳き込んだりと大変そうだった。

 やがて、落ち着いた彼は、苦笑いを浮かべながらこっちを見る。


「何かあったの?」

「ああ。首都圏で戦後に広がった物だけどな」


 首都圏で? 戦後に?

 首都圏で私が行ったのは京都のでかい神社達と、後は野田の春日神社ぐらいだが、戸隠と変わった事は……。


「っ!」


 咳き込まなかったが、静電気はやはり来るものがある。

 久しぶりの本気の静電気から回復した後に、鮎魚女さんと珍しあっていた代物の正体を言う。


鈴緒(すずのお)、か?」

「あ、ああ」


 野田の春日神社を含めた、しかし春日大社や下鴨神社などの総本社以外の首都圏の神社の多くには、拝殿に鈴緒と呼ばれる上に鈴が取り付けられた縄が垂れている事がある。

 お賽銭を入れ、それぞれの総本社が「神様はいつでも聞いていらっしゃるわざわざ鳴らす必要はない」と禁ずるまでに広がった鈴緒の下を引っ張って鈴を鳴らし、柏手を打つ。それが首都圏の神社の参拝の方法らしく、どこから広がったかわからないが総本社も「それぞれの神社の清めを受けているので」取り外させず今も残っている。ただし、新たな鈴緒を作ることは禁じられたので、半世紀経った今も残っている物は貴重で、野田の春日神社で参拝する時に近所の人にそれを教えられた。

 そして、その近所のおじさんから鈴緒の原料も教えられている。


「鈴緒の原料は麻、か」


 麻と言えばあの半島が関わっているはずなので、『要覧』の中にある各令制国の名前の由来が書かれたページを巡る。

 東海道の東の端、鹿に宿っていた神様(タケミカヅチ)さんが主神である鹿島神宮から見ると鬼怒川の対岸にある土地も含めて、現在の州の名前の1つにもなった半島なので、簡単にだが書いていた。


「房総の名前の由来は知っていますか?」

「…………房総ってどこ?」

「……………………」


 大宝律令より前、ヤマト王権から総国とされていた地域があった。『古語拾遺』によれば、初代天皇と言われている神武天皇の時、天富命が天日鷲(あめのひわし)命の孫達を従えて、初め阿波の麻植(おえ)郡で、穀物や麻を栽培していたが、後により豊かな土地を求めて団体を分け一方は黒潮に乗って東に向い、常陸(ひたち)の地に上陸した。彼らは新しい土地に穀物や麻を植えたが、特に麻の育ちが良かったために、麻の別称である「総」から、「総国」と命名したらしい。

 そして、麻は大麻たいままたは大麻草たいまそうとも呼ばれる。神宮の神札を大麻と呼ぶ由来となった植物であり、神社にある注連(しめ)縄や鈴縄の原料になっている。


「その房総で起きた事件で有名なのは知っていますか?」

「『里見騒動』?」

「正解です」


 後は『4つ目の最後の地の南東にある国』だが……。


「まさか……」


 今更になって思い当たる物が出てくるのは何故だろうか。

 そんな事を思いながら、自分でも驚くぐらいにお世話になっているスマホのあるサイトの新幹線のページを開く。


「山陽道、東山道、東海道、そして南海道か」


 様々な思惑が絡み合った七道それぞれの新幹線の建設。

 終戦した1945年12月25日に京都~広島間で開通した東山道新幹線。

 難民とベビーラッシュが重なって急増した東日本の人々の嘆願によって相次いで1950年代に開通した東山道と東海道新幹線。

 そして、東海道新幹線の疑獄事件を経て、明石・鳴門の大橋に次いで繋がった瀬戸大橋の下につけられたミニ新幹線の南海道新幹線。この南海道新幹線の建設の中で、吉野川が作った名勝である大歩危の景観を巡る騒動があり、そのために南海道新幹線の中では開通が一番遅くなった。


「そんな事あったんや……」

「知る人ぞ知る、ぐらいの話ですけどね」


 その大歩危があるのは阿波州であり、南東にはその阿波州か紀伊州しかない。そして、里見騒動の舞台は安房である。

 戦国時代やその辺りではなく近代の歴史の話で全ての謎解きが終わり、私は固まっていた肩を鳴らした。

 昼飯を(また)いで、安土時代初期の東国史などを学びながら解いていった東海道の暗号が示すチェックポイントは5つ。

 伊豆・下田城、相模・小田原城、武蔵・新宿城、忍城、そして安房・木更津城。忍城を除くと太平洋沿いにある城ばっかりだ。

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