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私の日記  作者: コーレア
002 伊賀編
41/146

030417 誕生

「……本当に私と同じくらいだな」


 思わずそう呟いた。

 センターに着いた直後に、センターのジャージに着替え、そのままドラゴンの厩舎に連れてこられた私。『アツシ』さんと、『アツシ』さんの奥さんである『サクラ』さんの両方に顔を舐められて、そのまま2匹の近くで出産を見届けた。

 医者にならない限り人間の方でも見ないであろう出産の光景を見て、『サクラ』さんから産まれた赤ちゃんを2匹に促されて抱き締める。


「んん。これがパパの臭いかぁ~」


 私の耳元で、はっきりとした日本語が発せられ、私は本当に人間の姿で産まれた幼龍なんだなと今更ながら実感した。

 一糸纏わぬ姿で産まれた中学生か高校生ぐらいの少女。センターの人曰く、相応の知識がある彼女は、1度頭をふった後、目の前にいた私を抱き締め返してきてくれた。


「よろしくねえ、パパ」

「政宗で良いよ、鈴蘭」

「Convallaria majalisなのお?」


 ……ああ、鈴蘭の学名か。


「和名の『鈴蘭』だよ。花言葉のように純粋に生きてほしいから」


 因みに考案は輝兄経由でかおりんから。


「わかったあ。じゃあ羽柴鈴蘭だねえ」


 ……自己紹介してないよな?

 思わず、柵の外にいるセンター長に視線を向けるが、彼も首を横にふった。いつの間にか増殖した周りのセンターの職員たちも。


「パパとママが教えてくれたんだあ」


 なるほど。

 嬉しそうな表情でこちらを見ている『アツシ』さんと『サクラ』さんが、か。


「パパとママに挨拶しても良い?」

「良いよ」


 産まれたばかりなので少し震えてはいるが、自分の足で立ちながら、ベンチコートを腕を通さず羽織っている鈴蘭は振り向いて、自分の産みの親を見る。

 私も、邪念を取り払いながら、彼女の横に立っておく。


「産んでくれてありがとうございます。これより、私は政宗……さんの子になって生活していきます。時々会いに行こうと思っているので、その時はよろしくお願いします」


 鈴蘭がお辞儀をするのを見て、私も慌てて礼をする。

 対して、2匹だけではなく産まれる直前から静かだった厩舎の中にいた他のドラゴンも咆哮して、その波が広がっていくように厩舎の外の広場や、別の厩舎からも咆哮が聞こえてくる。センターの人も朴センター長を皮切りにして次々とまんべんなく拍手が広がっていき、私達は気恥ずかしくなり、互いの顔を見て笑いあった。

 鈴蘭の笑顔は名前のように純粋で天使のような笑みだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『鈴蘭が家族になったよ』


 そんなメールが送られてきたのは、5時限目の終わりを告げるチャイムが鳴り終わった直後。

 宛先が私と紫宮君しかないことに喜びを噛みしめ、姫音に転送しながら、私は声を上げる。


「産まれたよ」


 6時限目の魔法防衛の授業のために体操服を着替えようと、部屋を出ていこうとした男子も止まって歓声を上げる。

 そして、真っ先に松栄さんが、次いで鮎魚女さんが、その後はぞろぞろと女子が私の許に集まってきて、紫宮君の下には彼の隣を歩いていた木菟君を筆頭に男子が集まってくるのが見えた。

 制服姿の政宗、その隣の真っ黒なショートカットの少女、昨日私達にドラゴンについて話していた朴センター長に岸田先生が並んで立っている写真を周して見ながら着替えて、そして授業の後に、鶯先生の男子曰く「ぐだぐだだけどそれが良い!」ホームルームが始まる前に、私達はこの情報を魔法科1年生の中に隠し通す事を決める。


「シュヴァルツヴァルトを繰り返さないようにしないとね」


 今日のホームルームで、クラス委員長になった仙南さんが、鶯先生が入ってきた後にそう締め括って、魔法使いなら誰でも知っているあの惨劇について知る私達も頷いた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 結局の所、内務省の副内務大臣がいきなり会見場に現れた理由は、この羽柴鈴蘭の誕生を隠すためだった。

 流石にテロ事件とドラゴンを関連付ける人々はおらず、政府の目論み通りにドラゴン養育センターの目は少なくなり、この日のセンターの特異な動きが感知される事は無かった。

 しかし、それに気付かず、俺達マスコミは走り回っただけだが、結果的にこの会見が俺と彼ら魔法科100回生を結び付ける端緒になったのはなんという運命のイタズラか。

 とにもかくにも、この日、警察と魔法省の表立っての協力に世間がわき、その裏で超特急で戸籍が作られ、転入手続きが行われる。羽柴鈴蘭という国内3例目の養子ドラゴンの少女の。

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