030408 教室→外階段
さて、4月8日火曜日である。昨日は南海上を高気圧が過ぎ去り、今日は低気圧が日本海に入ってきて、本格的に天気が悪くなる。初めて家から登校した朝も、どんよりとした曇り空で地面は濡れていた。
火曜日、という事は燈川学園高等部では7時限目までの日であり、6教科それぞれの先生と初めて出会いその人の授業の説明を主に受けた。
突風も過ぎ去った放課後、目的の部活に向かう人が多い新入生の中で、岡山や美濃など遠距離から来ている人が多い魔法科はそのまま帰路につくか友達と燈島駅の東側の方で遊びに行く人が多いとは、江渡先輩の談だが、薫さんと河尻さんと私は先輩も含めて3人の人に会うために、他とは違い職員室へ向かう。
「創部の手続きに来ました」
「おう」
まずは1人目、創部届の顧問の欄に名前が書いていた岸田先生。
昨日の内に部長たる河尻さんが色々と書いていき、薫さんと私は名前の所を書いただけの創部届を岸田先生は確認していき、全てを満たしている事を確認すると、笑みを浮かべたまま判子を自分の名前の横に押した。
「困った事があったらすぐに言えよ?」
『はい』
次は、学園の生徒側の長たる江渡生徒会長。
職員室を出て、同じ階のコの縦線の右側の部屋の殆どを占める部屋の扉の前に立って、今度は河尻さんがノックをする。
「ようこそ、新たなる勇者達よ」
扉を開けて、そう言ったのは野畠長義副生徒会長。
野畠さんに案内されて、西から初等部・中等部・高等部の生徒会が詰め1つの組織体『連合生徒会』の本部を横断する。学園長なども交えた文字どおりの『全校会議』で、『論理の構築の実現が難しい』初等部と中等部の生徒会長を代弁する形として、慣例になったが高等部の生徒会長が、発言力をもつ連合生徒会長になっている江渡先輩は、高等部ではなく連合の方の生徒会のエリアにいた。
私達が入ってきたからか、江渡先輩と話していた中等部の生徒が、一瞬こっちに見とれた後に先輩に礼をして、自分が属する生徒会の方へ去っていく。
「羽柴家の血筋かな?」
「かもしれませんね」
江渡先輩も、岸田先生と同じような風にしてから自分の判子と連合生徒会の判子の2つを自分の名前の横に押す。初めて見た獅子のラムパントを少し見つめ、3人で先輩に礼をして、生徒会室を出る。
最後は、この学園の長たる雨降約色虎学園長である。この高等部の校舎には無いので、一先ず外に出て、私達は大学の方へと向かう。
連絡通路の下の西口、中等部の校舎の反対側の中央口、ホールの反対側の東口、滅多に使わないらしいがテロで使われた船舶用の南口の4つの出入り口の中で、私達は中央口の方へ向かう。
「本当に本と蠍が彫られてるね」
「ええ」
アッハル・ナビー教の四大天使の1柱・アズラーイールの持ち物と星座を彫った門の前にあるのは、漆黒の建物。漆塗りのそれは考古学と魔法学の があり、また大学用の体育館や講堂、それに倉庫があり『玄武館』と呼ばれている。
中央口から中庭まで玄武館を突っ切る形で両端に花壇がある通路を通り、3方向からの通路の合流点である黄色い建物の中に入る。
高等部の敷地の左端から中等部の校舎の右端まであるそれぞれの4つの建物に囲まれる形で中庭があり、そのまた中央にやたら高い黄色の建物がある。
「あれが…………大時計?」
「ですね」
麒麟棟。
黄色く塗られたその建物は、中国の伝承の1つである東西南北それぞれの四神に五行説を合わせて中央に置かれる黄竜が、同じく中国の伝説の方に出てくる麒麟が名前に冠せられ、背丈が高いそれに合わせるように12階もあり、燈島のシンボルの1つになった。
中庭に建てられているので、1階ごとに階段とその踊り場、そして1つの部屋しかないという形になっているが、江渡先輩が言うには学園長の部屋はアニメみたいに最上階の11階にあるとの事。
少し億劫になりながらも、私達は江渡先輩に教えられた通りの道で学園長室へ向かう。
「大丈夫ですか?」
「……はい」
麒麟棟南側、建物にへばりつくように付けられ、フェンスで外と遮られ、そして壁に所々に銃痕がある外階段を。
江渡先輩が予想した通りに、それぞれの部屋の前を通る内階段は、多くの部屋で会議その他諸々が行われているから、学園長室なら外階段を使いなさい、と門前の警備員に言われて昇っているが、まあ結構怖い。フェンスなので風は直接来るし、海やその先の泉北の街並みがよく見えるし、11階か大時計がある12階まで扉が無い。階段の幅は広く、踊り場ごとにフェンスに幾重もの針金で付けられた椅子があるので、まだましと言えるが高所恐怖症といった人々にとっては、下で待ってる方が良いかもしれない。
年前には燈川学園を狙ったテロリストとたまたまいた先生達によるバトルが行われた場所の1つであった事を誇示するように、フェンスの小さな破れや焼け焦げた壁も見れる。
そして、終いには薫さんも河尻さんも真剣そのものな表情で昇っていき、木の扉の前に辿り着いた。




